三人目の名探偵

 ――動物は皆、雄の方が立派で美しいものと決まっている。象、ライオン、鹿、孔雀、雉、鴨、鴛鴦、蝶々。
 そして魚。
 グッピーは勿論のこと、鮭や鱒は繁殖期になると赤く色鮮やかな婚姻色に変わる。金魚は頭に追い星という白点が出る。雌を魅きつけるために、雄は涙ぐましいまでに着飾ってみせる。
 これは人間にも言える。
 男色大鑑によれば「世界一切の男美人なり。女に美人稀なり」と。キリスト教の宗教画でも、多くの天使は翼を持つ美少年の姿をしている。
 美しさは力なり。
 生命を守るために牙を磨くのだとすれば、生命を次代へとつなぐためにたてがみを伸ばし、羽根を伸ばす。
 それは生きるための力なのだ。

「……どうしてお前がここに?」
「それはこっちの台詞だ変態紳士」
 その日湊俊介と立花真樹が出会ったのは、警視庁でもなければ東京都内でもなく。ゲレンデの片隅のレンタルスノーボードの返却口だった。二人とも、レンタルの白いスキーウェアにゴーグル、帽子までそっくり同じものだった。

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