写楽

歌撰恋之部 (その6)

 石町と浅草、上野の三方向から、暮れ六ツの鐘を聞いた。仕事を終えた者が風呂に出かけ、遊びに行くらしい男たちが、両国や柳橋の方へと向かっていく。

 おとみは、弥一の家がある橘町の辺りを歩いていた。

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