イサム・ノグチを訪ねて
尊敬する芸術家は?と聞かれたらおそらく真っ先にこの人の名を上げるだろう。
彫刻家であり造園、作庭、舞台芸術まで手掛ける天才肌の人だが、なにより彼の生涯になにか心惹かれるものがあった。(日本人の父とアメリカ人の母との間に生まれる)
少し前に図書館でイサム・ノグチ関連の本を借りて読んだら無性に彼の作品に触れたくなって、先週たまたま四国に行く用事があったので高松市の牟礼町にあるイサム・ノグチ庭園美術館を訪ねた。13年ぶりの来訪。
ホテルから車で向かう途中、そこそこに石材所の店を見かける。ここは近くの五剣山から花崗岩の庵治石が掘れるので古くから石材の加工所として有名な町だ。細道を進み目的地へと辿り着く。のどかな所。
以前と同じ案内の方に導かれ、庭園へと足を踏み入れる。
周囲をぐるっと庵治石の石組みで囲まれた中に、彼の作品群が点在していた。
無造作に置かれているように見えるが、すべてノグチが指定して配置したらしい。
生前、彼はその出自を理由に日本とアメリカとの間で引き裂かれる運命にあった(広島平和記念公園の慰霊碑に彼のデザインが選ばれたがアメリカ人であるとの理由で外されたなど)
そんな憤りや葛藤を創作の原動力として数々の傑作を残してきたが、ここには静謐な時間が流れている。
ある一つの彫刻と向き合う。大地から屹立して見上げる程の高さだか、じっと観察すると人工でシャープに研ぎ澄まされた部分とあえてざらざらした素材のままを残した部分との絶妙さ加減がなんとも素晴らしい。そこになにか調和を感じる(そしてそれは庭全体にも言える)
そして晩年の代表作「エナジーヴォイド」を見にいく。
野晒しを防ぐ為、酒蔵を移築してその中に安置されている。薄暗い屋内に佇むそれは圧倒的な存在感を放っていた。けれどこちらを圧するのでもなく、不思議と包みこまれるような古代の神秘的な雰囲気をたたえている。これが見たかった。
後半は係の人に従ってノグチが住まいとした住居とすぐ横手にある小高い丘へと登る。丘からは屋島と瀬戸内海が見渡せて気持ちのいい風が吹いていた。
この地でノグチはなにを思い、なにを感じたのか。
しばらく思いを馳せていた。
※庭園の中は撮影不可なので一部ネットから借用
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