【補綴】 部分床義歯の構造要素(ビーディング、ティッシュストップ、メタルタッチ、フィニッシュライン)の特徴と役割

この解説では、歯科医師国家試験で頻出するビーディング、ティッシュストップ、メタルタッチ、フィニッシュラインの概念を詳細に解説しています。
これらの要素が部分床義歯の設計にどのように影響するかを理解することで、関連する試験問題を正確に解答する力が身につきます。

特に、各要素の目的特徴の比較作業用模型での適切な材料選択外側・内側フィニッシュラインの構造の違いなど、出題頻度の高いポイントを押さえています。



フィニッシュライン
まず、フィニッシュラインについてです。これは、部分床義歯において非常に重要な要素です。

フィニッシュラインとは、フレームワークとレジンの境界線のことです。模型の頬側面から見たものが外側フィニッシュライン、舌側面から見たものが内側フィニッシュラインです。

フィニッシュラインが階段状(ステップ状)になっている理由
フィニッシュラインが階段状(ステップ状)になっている理由は、レジンの厚みを確保するためです。他にも以下のような理由があります。

スカーフジョイントとバットジョイント

外側フィニッシュラインは、スカーフジョイントと呼ばれる構造になっています。これにより、より滑らかな移行部を作ることができます。

内側フィニッシュラインにスカーフジョイントを用いない理由ですが、もし内側フィニッシュラインにスカーフジョイントを付与したら、レジン填入時に気泡ができやすくなるためです。そのため、内側フィニッシュラインはバットジョイントと呼ばれる構造になっています。

ビーディング
ビーディングは作業用模型に溝を形成する
ことで付与されます。これにより、義歯床の粘膜面が凸状になります。

ビーディングの目的は、主に以下の4つです。
1. 舌感の向上
2. 辺縁封鎖性の向上
3. 鋳造収縮の補償
4. 義歯床の強度の向上

ビーディングと似たような処置にポストダムがありますが、これは上顎義歯の後縁部に形成するもので、ビーディングとは形成する場所が異なります。ポストダムは主に全部床義歯での話になります。

ティッシュストップ
ティッシュストップ
は、フレームワークの後方に設置された小さな突起です。粘膜部分と接触しますが、これはレジンの填入時にフレームワークや鉤脚が動かないようにするためです。

メタルタッチ
メタルタッチ
は、隣接面板直下にある辺縁歯肉と触れるメタル部分生物学的要件 ( 義歯を清潔に保つ ) を満たすために 付与する。

メタルタッチの部分がレジンで覆われていると、プラークが付着しやすくなります。一方、金属であれば、研磨することでプラークが付着しにくくなり、清潔に保つことができます。

では、過去問を見ていきましょう。

105B-12  65歳の女性。上顎部分義歯の新製を希望して来院した。加熱重合によるレジン床義歯製作用の作業用模型の写真を別に示す。矢印で示す部位とその部位の調整に用いる材料との組合せで正しいのはどれか。1つ選べ。
a. ア-ワックス
b. イ-ユーティリティワックス
c. ウ-石膏
d. エ-レディーキャスティングワックス
e. オ-ユーティリティワックス

解説:正解はcです。

この問題は作業用模型に対して、何をするのか?という問題ですね。
で、基本のおさらいになりますけど、作業用模型でリリーフやブロックアウトを行う際、ワックスの使用は不適切ですね。これは、レジンの加熱重合時に作業用模型のワックスが流れるため、リリーフやブロックアウトの効果が無意味になるためです。
ですけど研究用模型ではリリーフ・ブロックアウトにワックスを用いても大丈夫でしたね。別に、個人トレーを作るだけですから。

アは上顎前歯部歯槽部分。これはアンダーカートになる場所なのでブロックアウトすべき場所ですね。ですが、ワックスでは行いません。よってこれは間違いですね。
イもブロックアウトするべき場所ですよね、ですけど、ここもユーティリティバックになっていますので間違いになります。

ウはブロックアウトする部位であり、これには石膏を使用するのが適切。これは正しいですね。

エの場所はどうでしょう?ここは口蓋隆起ですね。この場所に対しては、鉛はくを用いてリリーフすることになっていますので、間違いになります。

オはボストダムの部位であり、ここは模型を削って対応する。もしくは機能印象時に加圧するんでしたね。

105A-125 矢印で示す部分の目的はどれか。2つ選べ。
a. 鋳造収縮の補償
b. 辺縁封鎖性の向上
c. 粘膜面にかかる圧力の緩衝
d. 金属とレジンの接合部の明示
e. レジン床義歯フレームワークの変形防止

解説:

正解はaとbです。

ビーディングは、粘膜との適合性を向上させるために金属床や連結装置の辺縁をわずかに粘膜側に凸状にすることで辺縁の適合性を向上させるんでしたね。
ビーディングの目的は、主に以下の4つでした。
1. 舌感の向上
2. 辺縁封鎖性の向上
3. 鋳造収縮の補償
4. 義歯床の強度の向上

114C-48 68 歳の女性。上顎義歯の破折による咀嚼困難を主訴として来院した。 使用中の義歯は 5 年前に製作したが、何度も破折し修理を繰り返しているという。 診察の結果、金属床による部分義歯を新製することとした。 義歯製作中のある過程の写真を別に示す。矢印で示す構造の目的はどれか。1 つ選べ。
a. フレームワークの補強
b. 床用レジンの機械的保持
c. 粘膜面との適合性の向上
d. レジン填入時の変位防止
e. 床用レジンとの円滑な移行

解説 正解 e
矢印で示されている構造は外側フィニッシュラインであり、これは義歯床研磨面部の床用レジンとフレームワークとの接合境界線です。外側フィニッシュラインの目的は、床用レジンとの円滑な移行を促すことです。

外側フィニッシュラインスカーフジョイントの形態(鋭角)にされており、これにより床用レジンとフレームワークとの間で滑らかな移行が可能になります。これはレジンの縁端が薄くなりすぎるのを防ぎ、金属部との適切な接合を保証します。

aフレームワークの補強  これは緑色のワックスこのことを指していますね,これはフレームワークの補強に役立っていると考えられます。

b. 床用レジンの機械的保持 これは赤色のワックスのことを指していますね。

c. 粘膜面との適合性の向上 これはビーディングの目的ですね。で、これは間違いです。
d. レジン填入時の変位防止 これはティッシュストップですね。


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