やさしく解説【緩和照射】

116A-53 緩和照射とは何か?

緩和照射って聞いたことありますか?
がんの治療というと、手術や抗がん剤治療を思い浮かべる人が多いでしょう。でも、進行したがんや転移したがんで苦しんでいる患者さんにとって、緩和照射はとても大切な治療法なんです。

じゃあ、緩和照射ってどんな治療なのか、詳しく見ていきましょう。

緩和照射の特徴は?
まず、緩和照射の目的は「がんを完全に消すこと」ではありません。そう聞くと驚く人もいるかもしれませんね。でも、これが緩和照射の大切なポイントなんです。

緩和照射の目的は、がんによる痛みや苦しい症状を和らげること。つまり、患者さんの生活の質(QOL)を良くすることが一番の狙いなんです。

だから、普通のがん治療の放射線よりも少ない量の放射線を使います。これって、患者さんにとってはうれしいことですよね。放射線量が少ないってことは、副作用も少なくて済むってことですから。

もうひとつの特徴は、治療期間が短いこと。普通の放射線治療だと何週間も通院しなきゃいけないけど、緩和照射なら1回で済むこともあるんです。これって、体力的にもメンタル的にも、患者さんの負担が少なくて済みますよね。

緩和照射の効果は?
緩和照射は、がんによるさまざまな症状を和らげてくれます。例えば:

1. 痛みを和らげる
2. 出血を止める
3. 呼吸を楽にする
4. 神経の症状を改善する

具体的にどんな場合に使うの?
骨に転移したがんで痛みがある場合、緩和照射はとても効果的です。骨の痛みって、動くのもつらいですよね。でも、緩和照射を受けると、60~80%の患者さんで痛みが和らぐと言われています。

肺がんで息苦しい場合も、緩和照射が役立ちます。がんで気管が押されて息ができないような状態でも、照射で腫瘍を小さくすれば呼吸が楽になります。

脳に転移したがんで頭痛やめまいがある場合も、緩和照射の対象になります。

がんが血管を侵食することで起こる出血もポイントになります。腫瘍の成長や転移、さらに血小板の機能障害などが原因となり、腫瘍周囲の組織や器官が影響を受けて出血が生じることがあります。これを緩和照射で和らげることができます。

照射のスケジュールは?
緩和照射のスケジュールは、患者さんの状態や症状によって変わります。例えば:

- 8 Gyを1回だけ照射
- 3 Gyを10回に分けて照射
- 4 Gyを5回に分けて照射

といった具合です。1回の照射にかかる時間は数分程度。痛みの緩和なら、照射後1~2週間で効果が出てきます。

再照射はできるの?
「一度緩和照射を受けたら、もう二度と受けられない」と思っている人もいるかもしれません。でも、そんなことはありません。

最近では、一度緩和照射を受けた場所でも、再び照射することが積極的に検討されています。もちろん、患者さんの状態をよく見て、慎重に判断する必要はありますけどね。

では緩和照射に関連する過去問をみていきます。

116A-53 悪性腫瘍に対する緩和照射について正しいのはどれか。2つ選べ。
a. 痛みを軽減する
b. 治療を目的とする
c. 易出血性を改善する
d. 化学療法を併用する
e. 標準治療と同じ総線量を要する

出典:厚生労働省

さて、どれが正解だと思いますか?
正解は「a 痛みを軽減する」「c 易出血性を改善する」です。

では、他の選択肢はどうでしょうか?
「b」は間違いです。がんを完全に治すのは「根治照射」の役割。緩和照射とは目的が違います。

ここで新たに根治照射という言葉が出てきたので少し補足をします。
放射線治療には以下の3つの種類があります。
根治照射:がんを完全に治すことを目指す治療
緩和照射:症状を和らげたり、少しでも長く生きられるようにする治療
予防照射:がんが再発したり、転移したりするのを防ぐ治療


「d」化学療法を併用する は、ちょっとトリッキーな選択肢です。抗がん剤治療を一緒に使うかどうかは、緩和照射かどうかで決まるわけではありません。治療の目的や患者さんの状態によって、使う場合も使わない場合もあるんです。
緩和照射の人がかならずしも化学療法を併用しているわけではありませんから。


「e」標準治療と同じ総線量を要する も間違いです。緩和照射は、通常の放射線治療(根治照射)の半分くらいの量で行うことが多かったですよね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?