【微生物】プラーク形成の仕組み—ムタンとグルコシルトランスフェラーゼ

116C-6  プラーク形成の仕組み—ムタンとグルコシルトランスフェラーゼ

プラークの基質成分、しっかり理解できていますか?

今回は、プラークの基質成分について深く掘り下げていきます。特に、α-1,3グルコシド結合を主鎖とする不溶性グルカン(ムタン)に焦点を当てます。ここは国家試験でも頻出のテーマなので、ぜひ押さえておきましょう。

まず問題を確認しましょう。

正解は、aの「ムタン」です。

ムタンとは何か?

ムタンは、α-1,3グルコシド結合を主鎖とする不溶性グルカンです。これは、ミュータンスレンサ球菌群(Streptococcus mutansやStreptococcus sobrinus)が産生するもので、プラークの形成に大きく関与します。
(α-1,3グルコシド結合とは:グルコース分子がα位の1番炭素と3番炭素で結合したもの。ムタンの主鎖を構成します。)

ミュータンスレンサ球菌群は、グルコシルトランスフェラーゼという酵素を使って、スクロース(ショ糖)からムタンを合成します。この過程で、スクロースはグルコースフルクトースに分解されます。

そして、

  • グルコース:ムタンの材料として使われます。

  • フルクトース:細菌の代謝に利用され、を産生します。

このが歯質を脱灰し、齲蝕の発生・進行に繋がるのです。

他の選択肢とその特徴

b. レバン

  • 構成成分:フルクトース

  • 結合様式:β-2,6結合

  • 性質:フルクタンの一種で、水溶性

  • 産生菌:レンサ球菌やアクチノマイセス属の一部

c. イヌリン

  • 構成成分:フルクトース

  • 結合様式:β-2,1結合

  • 性質:植物に多く含まれるフルクタン、食物繊維として知られる

  • 備考:人間の消化酵素では分解されにくい

d. デキストラン

  • 構成成分:グルコース

  • 結合様式:α-1,6結合

  • 性質:水溶性グルカン

  • 産生菌:レンサ球菌の一部

  • 用途:医療での血漿代用品など

e. アミロペクチン

  • 構成成分:グルコース

  • 結合様式:α-1,4結合(主鎖)とα-1,6結合(枝分かれ部分)

  • 性質:デンプンの主成分の一つ

  • 備考:植物のエネルギー貯蔵物質

これらの物質は、ムタンとは結合様式や構成成分、性質が異なります。

ムタン形成のメカニズム

  1. スクロースの分解:ミュータンスレンサ球菌群のグルコシルトランスフェラーゼが、スクロースをグルコースとフルクトースに分解します。

  2. グルコースからムタンへ:分解されたグルコース同士をα-1,3グルコシド結合でつなぎ合わせ、ムタンを合成します。

  3. フルクトースの酸産生:フルクトースは細菌の代謝により、を産生します。

  4. プラーク形成と齲蝕発生:不溶性のムタンが歯の表面に付着し、プラークを形成します。産生された酸が歯質を脱灰し、齲蝕を引き起こします。

重要ポイント

  • ムタンは、不溶性グルカンであり、プラークの粘着性を高めます。

  • ミュータンスレンサ球菌群が産生するグルコシルトランスフェラーゼにより、スクロースから合成されます。

  • ムタンの存在は、歯の表面に細菌や酸を滞留させ、齲蝕の発生・進行に深く関与します。

  • 他の物質(レバン、イヌリン、デキストラン、アミロペクチン)は、構成成分や結合様式が異なり、ムタンとは異なる性質を持ちます。


このように、プラークの基質成分ムタンの役割を理解することで、齲蝕の発生メカニズムを深く理解できます。国家試験では、これらのキーワード概念メカニズムが問われることが多いので、しっかりと押さえておきましょう。

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