赤いおまもり
「えっ……!?」
ピエロさんの言葉に私はピエロさんの顔を見た。いつも通りの仏頂面だったけれど、嘘を言って騙そうとしていないことは目を見てわかった。
「私はここに来るまで色々な所を転々としていました。この顔で、空間を移動できる力がありますからどこに行っても気持ち悪がられました。石などを投げられたり、街に入れてもらえないこともありました。ここに居るみんなはそれぞれの特異性が故に辛い目にあってきているんですよ」
私はピエロさんやみんなに辛い過去があったなんて考えたこともなかったわ。だってみんな本当に素敵な笑顔でそれぞれの部屋にいるんですもん。
「ここに居るみんなが笑顔でいるのは団長のおかげです。その特異性を活かせる場所を与えてくれたんですから」
私は俯いた。ピエロさんの言ってる特異性っていうのは多分みんなが持ってる不思議さだと思う。それがない私は……
「ですからね」
ピエロさんが私の顔を覗き込む。
「貴方のそのピアノを弾く特技が活かせる場所があると思うんです。それがここではないというだけで」
ピエロさんが言ってることは最もだと思ったわ。でも、私、ここから出たことがないから……
「ここから出るのは怖いですか?」
心を読んだようにそういうピエロさんに私はこくりと頷いたの。
「では、このまま辛い思いをして生きていきますか?」
首を横に振った。みんなに白い目で見られる中で生きて行くのはもう嫌だったから。
「じゃあ、お守りをあげましょう」
「お……まもり?」
「そう、お願い事が叶ったり、何かあった時に守ってくれるもののことですよ」
そう言ってピエロさんは尻尾の付け根に赤いリボンをつけてくれた。
「これが、お守り?」
「ええ。貴方の本当の居場所が早く見つかるようにです」
「ありがとう!」
私は涙でグシャグシャの顔で笑った。