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日商簿記検定3級攻略⑤~手形・電子記録債権等~

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1 はじめに

 今回は、手形・電子記録債権について説明していきます。なかなかしっくりこないと思いますので、まずは、手形・電子記録債権とはどのような取引か説明していきます。理解したところで、その取引が簿記上どのような帳簿処理をするのか説明していきます。

2-1 手形とは

 手形とは、一定の期間後に支払うことを約束して発行するもので、取引をする時点で必要資金がなくても支払ができる便利なツールです。その反面、6カ月以内に手形が不渡り(引落し先の口座残高が不足する事態)となれば金融機関との取引が停止され、取引先からの信用を失います。すなわち、事実上の倒産となります。手形には「約束手形」と「支払手形」がありますが、日商簿記検定3級の試験範囲では「約束手形」のみが試験範囲となります。

2-2 約束手形

 専用の用紙に自身の氏名(名称)と金額等を記載して取引の相手方に渡します。これを「振り出す」と言い、振り出す方を「振出人」、受け取る人を「受取人・名宛人」と言います。振り出した約束手形は支払期日が到来すると、振出人が指定した金融機関の口座から決済代金が引き落としとなります。

2-3 約束手形の会計処理​

・振出人​
 手形債務者となり、手形の支払期日に手形金額を支払うこ​とから、約束手形の振出し時に「支払手形」勘定の貸方にその​手形金額で記入し、支払時には、借方にその支払金額を記入​します。​
・受取人​
 手形債権者となり、手形の受入れ時に「受取手形」勘定の借​方に手形金額を記入し、満期日にその回収額を貸方に記入します。

2-4 留意事項​

 「支払手形」は、「主たる営業取引から生じた手形債務」を表す​勘定科目。​「営業外支払手形」は、「主たる営業取引以外から生じた手形​債務」を表す勘定科目。それでは早速例題を解いてみましょう。​

例題1 

㈱A側と㈱B側双方の仕訳をすること

問1-1 ㈱Aは㈱Bから商品100,000円を仕入れ、代金は約束
    手形を振り出して支払った。

問1-2 ㈱Aが㈱Bに振り出した約束手形100,000円の支払期
    日が到来し​当座預金口座から引き落とされ、㈱Bは当
    座預金口座で取り立て​た。​なお、㈱Bは当座借越契約
   (限度額:50,000円)を締結して おり、​現時点で当座
    借越残高が20,000円となっている。​

3-1 電子記録債権・債務

 電子記録債権・債務とは、発生・譲渡について電子記録を要件​とする金銭債権・債務をいい、電子債権記録機関に発生の登録​を行うことで発生します。売掛債権や手形債権と比較すると、作成・​交付・保管コストの削減(収入印紙の貼付の省略)や、紛失・盗難​リスクを回避することができる等の特徴があります。​換言すると、売掛金を帳簿等の紙保存ではなく、電子記録として、客観性を取るようにすることで後の紛争予防となります。会計処理は売掛金・買掛金と同じ考えですので、早速例題を解いてみましょう。

例題2

㈱A側と㈱B側双方の仕訳をすること

問2-1 ㈱Aは㈱Bに対する売掛金100,000について電子記録
    債権の発​生記録を行った。​
問2-2 ㈱A、㈱Bは問1の電子記録取引を当座預金を通じ
    て精算した。

4-1 その他の債権債務~貸付金と借入金~

​ 金銭の消費貸借によって債権債務に用いられる勘定​貸借対照表に表示する際は、決算日の翌日から起算して1年​以内に返済期日が到来するものは「短期貸付(借入)金」、返済​期日が1年を超えるものは「長期貸付(借入)金」に区分し、前者​は流動資産(負債)に、後者は固定資産(負債)に区分します。

4-2 その他の債権債務~未収金と未払金~​

 商品売買などの主たる営業取引以外の取引に基づく債権債務​の発生又は消滅に用いる勘定科目​です。

4-3 立替金​

 取引先、関係企業、従業員などに対して一時的に金銭を立て​替えた場合に用いられる勘定科目​です。

4-4 預り金​

  次のような場合に用いられる勘定科目​ 
(1) 従業員の源泉所得税、住民税、社会保険料等の預り金​
(2) 従業員の社内預金や身元保証金等の預り金
​(3) 取引先の営業保証金、入札保証金等の預り金​

4-5 仮払金と借受金​

 現金の受取り又は支払いはあったものの、その内容が不明で​あるときや取引価値等が未確定であるときに一時的に処理してお​く勘定科目であり、内容や金額が確定した時に本来の勘定科目​に振り替えます。​最後の例題で今回は終わりといたします。

例題3

問3-1 ㈱Aは従業員に給料1,000,000円(内、源泉所得税
    50,000円、住​民税100,000円、従業員負担分社会保
    険料50,000円)を当座預金​から支払った。
問3-2 ㈱AはB銀行から100,000を借り入れ、当座預金に振
    り込まれた。
     なお、返済期日は6カ月後である。
問3-3 Aは建物1,000,000円を購入し、支払は翌月末とし
    た。​​
​​​​

例題解答 

答1-1 
㈱A側​ (借)仕入 100,000 (貸)支払手形 100,000​
㈱B側 (借)受取手形 100,000 (貸)売上 100,000

答1-2 
㈱A側 (借)支払手形 100,000 (貸)当座預金 100,000​​
㈱B側 (借)当座借越 20,000 (貸)受取手形 100,000​
        当座預金 80,000
答2-1
㈱A側(借)電子記録債権 100,000 (貸)売掛金 100,000
㈱B側(借)買掛金 100,000 (貸)電子記録債務 100,000

答2-2
㈱A側(借)当座預金 100,000 (貸)電子記録債権 100,000
㈱B側(借)電子記録債務 100,000 (貸)当座預金 100,000

答3-1
(借)給料 1,000,000 (貸)預り金 200,000​
              当座預金 800,000

答3-2
(借)当座預金 100,000 (貸)短期借入金 100,000

答3-3
(借)建物 1,000,000 (貸)未払金 1,000,000

5 おわりに

 普段の生活では、手形や電子記録債権はあまり耳にしない方が多かったと思いますので、今回の記事は新鮮だったと思います。簿記は練習問題を解けば解くほど身に付き、定着しますので繰り返し問題を解いてください。次回は有形固定資産について説明していきます。中でも、減価償却は会計特有の考えとなります。試験で必ず出題されますので、確実に覚えてください。

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