日商簿記検定2級攻略①~序論~
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1 はじめに
本記事を読むにあたって「日商簿記検定3級攻略シリーズ」を読んでいただいてから本記事を読んでいただくととても理解しやすいです。
本記事は日商簿記検定3級の出題範囲をさらに深堀りした内容であり、新しい分野の帳簿処理も学習します。したがって、基礎となる3級の知識がないとより深く理解できません。しかしながら、読む時間がない方や、3級の復習をしたい方にもおさらいとしてこの序論を読んでいただければと思います。
2 複式簿記の概要
複式簿記は、財貨・サービスの生産者である経済主体が、他者から資金を募り、自らの経済活動を貨幣額を用いて記録・計算・整理し資金の適用結果や事業から得られた利益を資金提供者に報告するのに適した帳簿記録法です。
複式簿記では、経済主体の活動のうち貨幣額を用いて測定し得る簿記上の取引を記録の対象としています。
そして、その取引は、会計的な性質に従って資産・負債・純資産(資本)・収益・費用という要素別に分類・細分化した勘定科目に金額を付して、全て原因と結果という二つの側面から記録・計算・整理されます。
例えば㈱Aが銀行から100万円を借りる取引は、①銀行から資金を調達して負債が100万円増える原因と、②㈱Aがに現金などの資産が100万円増えるという結果の両面が同時に記録されます。
このように複式簿記は、資金の運用状況と事業の経営成績を勘定体系の中で表すことができることから、記録に基づいた財務諸表を利害関係者等に提供できる点に意義があります。
財務諸表・・・貸借対照表・損益計算書等
2ー1 複式簿記の流れ
⑴ 仕訳帳の作成
仕訳とは、一つの取引について、その「原因」と「結
果」を区分して、それぞれに取引要素別に細分化された
具体的な名称である勘定科目を付して「借方」・「貸方
」に記録することを言います。
この場合、借方と貸方の金額は必ず一致することを前
提とします。
⑵ 元帳の作成
財務諸表は勘定科目別に集計した金額により作成され
ることから、仕訳を記録した後、それぞれの勘定科目別
にまとめておく必要があります。
また、現金や債権・債務などんを管理するためにも勘
定科目別に金額の集計が必要です。このため、勘定口座
を作成し、仕訳した結果をそこに書き写す作業が必要です。
この作業を「転記」と言います。
資産・負債・純資産(資本)・収益・費用の取引王祖別に
細分化された勘定口座を記録する帳簿を「総勘定元帳」と言
います。
なお、仕訳帳と総勘定帳元帳は、会計帳簿の主要なもので
あることから「主要簿」と呼ばれています。
2-2 一巡の手続
⑴ 大陸式決算法と英米式決算法
イ 大陸式決算法
大陸式決算法は、仕訳帳から総勘定元帳への転記の検
証性を維持するために、全ての取引を必ず仕訳帳に仕訳
し、総勘定元帳に転記する複式簿記の原理・原則的な記
帳方法です。大陸式決算法の特徴は、以下のとおりで
す。
① 開始記入に当たって前期末の資産・負債・純資産を
登記に引き継ぐための開始仕訳を行うこと
② 残高振替記入に当たって閉鎖残高勘定を設けて残高
振替等仕訳を行うこと
ロ 英米式決算法
英米式決算法は、記帳の簡便性を重視し、総勘定元帳
の繰越記入に当たって必ずしも仕訳帳への仕訳を前提と
しない記帳方法です。
したがって、一会計期間の仕訳帳における仕訳の貸借
合計と総勘定帳元帳における間所の貸借合計とは一致せ
ず、決算手続の正確性を検証するための繰越試算表の作
成が必要となります。
⑵ 一巡手続の概要
イ 開始手続
A 大陸式の場合
前期末の試算・負債・純資産(資本)を登記に引き
継ぐために「開始仕訳」を行います。開始仕訳には、
資産の相手勘定及 び負債・純資産(資本)の相手勘定
として、「開始残高」勘定を用いて開始仕訳を行う「
純純大陸方式」と、資産及び負債・純資産(資本)を
それぞれの相手勘定として開始仕訳を行う「準大陸
式」の2つの方法があります。
例 純粋大陸式の開始仕訳
(借)諸資産 100,000(貸)開始残高 100,000
(借)開始残高 100,000(貸)諸負債 100,000
例 準大陸式の開始仕訳
(借)諸資産 100,000(貸)諸負債 80,000
諸純資産 20,000
B 英米式の場合
前期末の決算手続において、前期繰越記入を行うた
めに当期首において開始記入は行いません。
ロ 再振替記入
前期末の決算整理記入で収益・費用の見越し・繰延に
よって経過勘定に振り替えたものを、再び収益・費用に
振り戻す手続です。
⑶ 営業手続
期中に発生した取引を仕訳帳に仕訳し、元帳に転記する
手続です。
⑷ 決算手続
期末に一会計期間中に記録された仕訳帳や総勘定元帳な
どの全ての帳簿を締切、外部へ報告する財務諸表の作成ま
での手続を言います。
イ 試算表の作成~決算準備~
仕訳帳から総勘定元帳への転記が正しく行われたかを
検証し、決算期末の営業状態を概観するために、勘定科
目ごとに金額を集約した一覧表を作成したものです。以
下の等式が成り立ちます。
資産+費用=負債+純資産+収益
ロ 精算表の作成~決算本手続~
精算表は以下の作業手順によって財務諸表を外部へ報
告する前準備となります。具体的な作業手順は以下のと
おりです。
① 総勘定元帳の各勘定の期末残高を「残高試算表」欄
に記入する。
②「整理記入」欄には、決算整理・修正仕訳に基づいて
記入する。
③ 整理記入後の残高試算表の金額を損益計算書に属す
るものと貸
借対照表に属するものとに分類し、「損益計算書」欄
「貸借対照表」欄に移記します。
④「損益計算書」の貸借差額は、合計金額の少ない方の
当期純利益欄に表示して貸借を平均させます。
⑤ ④の差額である当期純損益を「貸借対照表」欄に移
記する。
※ 残高試算表、整理記入、損益計算書及び貸借対照表
いずれの欄においても合計金額が貸借一致しなければ
その計算は誤りとなります。
3 財務会計
企業外部の利害関係差に会計情報を提供する会計を財務会計と言い企業が任意で行う財務会計ではなく、法律等による規則に基づいた財務会計が求められます。この会計を制度会計と言い、日商簿記検定2級の試験範囲となります。この制度会計には会社法の下に行う会計、金融商品取引法の下に行う会計、法人税法の下で行う会計に大別されます。
4 貸借対照法・損益計算書の予備知識
取引の記帳に使用する勘定科目は、事業規模、事業形態及び管理の準用正当によって適切な名称を付して設定すればよいが、制度会計による財務諸表の表示科目は、会社法に基づく場合には会社計算規則、金融商品取引法に基づく場合には財務諸表等規則にしめされた表示科目が使用されます。このため、財務諸表上の表示科目である「現金及び預金」に対して、現金・預金管理の観点から記帳条は詳細な勘定科目を設定すること多いです。
例 財務諸表上の表示科目⇒現金・預金
記帳上の勘定科目⇒現金、小口現金、当座預金、普通
預金等
5 貸借対照表
⑴ 貸借対照表とは
資産・負債・純資産の金額から作成される表のことを言
い、決算日現在の財政状態を示すものとして作成されます
資産の部は、流動資産、固定資産、繰延資産の三つに区
分され、負債の部は、流動負債と固定負債の2つに区分さ
れます。また、純資産の部は、株主資本、評価・換算差額
等、新株予約権の三つに区分されます。
⑵ 貸借対照表の表示について
イ 総額主義
資産・負債・純資産は総額によって記載することを原
則とし、資産の項目と負債又は純資産の項目とを相殺す
ることによって、その全部又は、一部を貸借対照表から
除去してはなりません。これを「総額主義」と言います
その理由として、同一の取引に対して相殺表示してしま
うと、債務の総額を知ることができず、また、資金調達
源泉としての他人資本と自己資本の構成割合や、資金運
用形態とその資金調達源泉の関係がゆがめられ、企業の
財政状態が適切に表示されないからです。
ロ 流動項目と固定項目の区分
流動項目と固定國目に区分表示を行うための分類は、
原則として、「正常営業循環基準」と「1年基準(ワ
ン・イヤー・ルール)」を使用して行います。
A 正常営業循環基準
財労を仕入れて製品を精算し、それを販売して代
金を決済すると言う企業の主たる営業活動の反復的
な循環を言い、正常な営業循環の過程内にある項目
をすべて流動資産又は流動負債にする基準です。
例 現金 前受金 買掛金 受取手形 仕掛品
商品
B 1年基準「ワン・イヤー・ルール」
決算月の翌月から起算して1年以内に履行期の到
来する債権・債務及び1年以内に費用・収益となる
資産・負債を流動項目とし、1年超を超える者を肯
定項目とする基準です。
ハ 流動性配列法
貸借対照表の項目を流動性の高い順に配列する方法
です。資産については、換金性の高い順に、負債につ
いては返済期間の早い順に配列されます。
6 損益計算書
⑴ 損益計算書とは
企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間の収
益・費用の金額により作成される表のことを言います。
損益計算書は①売上高、売上原価、販売費及び一般管理
費から営業利益を算定する営業損益計算、②営業外損益
を加減し、経常利益を算定する計上損益計算及び③特別
損益を加減し税引き前当期純利益を算定する純損益計算
の三つに区分されます。こうして算定された税引き前当
期純利益から法人税、住民税及び事業税を控除して当期
純利益を算定します。
⑵ 損益計算書の効果
損益計算書は利益がどのように生じたかを明らかにす
るために、それぞれの収益と費用を経済活動に関連付け
、発生源泉別に記載することにより、発生源泉別の利益
を把握することができます。
7 株主等変動計算書
⑴ 表示方法
株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部の
表示区分に従い、株主資本の各項目と株主資本以外の項
目の金額を表示します。
イ 株主資本の各項目の区分及び表示
株主資本の各項目(資本金、資本剰余金、利益剰余
金及び自己株式)は、当期首残高、当期変動額及び当
期末残高に区分し、当期変動額は変動自由ごとにその
金額を表示します。
ロ 株主資本以外の各項目の区分及び表示
株主資本以外の各項目(評価・換算差額等及び新株
予約権)は当期首残高、当期変動額及び当期末残高に
区分し、当期変動額は純額で表示するが、主な変動自
由ごとにその金額を表示することができます。
⑵ 株主資本等変動計算書の作成方法
イ 表示区分は貸借対照表の純資産の部と同じであり、
当期首残高は前期の貸借対照表の純資産の部の各項目
から転記します。
ロ 当期変動額は、当期中の純資産に係る変動自由ごと
にその金額を記入します。
ハ 当期変動額合計は、当期変動額の合計を記入します。
ニ 当期末残高は「当期首残高」及び「当期変動額合計」
を加減した金額を記入します。
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