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コロナ禍でのイベント立上げ、その思いとは | 坪和 あき子さん | 雑貨村at 代表(村長)

〔表紙写真/「雑貨村at」を運営する3人。中央:坪和あき子さん、左:栗原和士さん、右:柳生友美さん〕


みなさんは「雑貨村at(あっと)」というハンドメイド雑貨マルシェをご存知だろうか。次回2021年10月で6回目の開催を迎えるイベントだ。ユニークなのは、第1回目の開催が2020年10月であるという点。

つまり、このコロナ禍に産声を上げ、約2〜3ヶ月に1回のハイペースで開催をしている、という事だ。

今回は、ハンドメイド作家さんからも注目され、出店希望者も多いこのイベント、雑貨村atの発起人であり代表(村長)の坪和あき子さんに話をうかがった。

※記事の途中で第5回雑貨村at(茨城県植物園にて開催)の様子を紹介しています。


自分にできることはなにか

坪和さん
「雑貨村at」代表の坪和あき子さん、ハンドメイド雑貨の作家でもある

新型コロナウィルスにより世の中の活動がストップした2020年春。坪和さんがハンドメイド作家として、そして運営にも関わっていた「第5回 たかはぎ花まるしぇ」も休止となる。出店を予定していた他のイベントも軒並み中止となった。

しょうがないとは言え、作品を世に出せないのはつらい。作家仲間からも同じ声を聞いた。まれにイベントがあったとしてもコロナ対策に不安があることも多かった。

小さな子どもがいる知り合いから「どこにも行けないのがつらい、子どもの思い出を作ってあげられないのがつらい」坪和さんはそんな嘆きをたくさん聞くことになる。


そんな中世間では、アーティストがオンラインイベントを開催するなど、少しずつコロナ禍での活動を模索する動きが出てくる。

「好きなアーティストが『自分たちは歌うことしかできない』といって活動を再開しました。それを見たとき『じっとしていてもしょうがない。何か自分にできることはないか。行動しなければ』と思ったんです」坪和さんは振り返る。

ブサイク工房
第5回雑貨村atの様子① 不細工工房くらやさんの木工品、色合いが優しい

そんな時、作家仲間でもある柳生友美さん(雑貨村at共同代表/村長補佐/ごまにゃん工房)から「たかはぎ花まるしぇの経験もあるんだから、あきちゃんがイベントをやっちゃえば?」と振られる。「誰もイベント開催がダメとは言っていないよ?きちんとルールを守れば問題ないでしょ」と柳生さんに丸め込まれたと坪和さんは笑った。

思い立ったらすぐに行動に移す性格。「なんとかなるでしょ!」と持ち前のポジティブさも手伝い、イベント立ち上げを決意するまで時間はかからなかった。

夫である栗原和士さん(雑貨村at共同代表/村長相談役)に相談すると「あきちゃんがやりたいことなんだからサポートするよ。それに、楽しそうだし!」と心強い。作家仲間に構想を伝えると「出る!出たい!」と嬉しい反応。たかはぎ花まるしぇで繋がりのある宿泊施設マウントあかねに相談するとイベント会場として利用することを二つ返事で快諾してくれた。

坪和さんはみんなの想いが一緒であることを強く感じる。

こうして第1回目の雑貨村atが開催され、そこからこのイベントは、実に約2〜3ヶ月に1回のハイペースで続いていくことになる。


イベント名「at」の意味
ところで雑貨村atの「at」、この意味をみなさんはご存知だろうか。

2つの意味があり、1つ目は「あるよ」が訛って「あっと」(茨城弁)。2つ目は発起人たちの名前。坪和あき子さんのあきこの「a」、そして柳生友美さんのともみの「t」だ。

栗原和士さんの名前が登場してこないが、それは栗原さんが表舞台には立たず縁の下の力持ちとしてイベントを支えているからだ。実は、坪和さんと栗原さんはご夫婦でもある。「坪和」の方が昔の知り合いに見つけてもらいやすい、などの理由で活動時は旧姓を名乗っている。

ごまにゃん
第5回雑貨村atの様子② ごまにゃん工房さんのドライフラワー雑貨、ブースではワークショップなども開催されていた


「ポジティブさ」を母から、「みんなで作る楽しさ」を妹弟から

「イベントを主催していて大変なことは何ですか?」

という編集部からの質問に対し「…う〜ん、思いつかないですね。楽しいことばかりで大変なことはないです」と坪和さんは答えた。苦労話の一つや二つ聞けるかなと思っての質問だったが、強がりではなく本気でそう思っているようだった。

そんな前向きな坪和さんに影響を与えたのは誰なのか。質問すると「母です」との回答。

坪和家の4人姉弟の長女として坪和さんは生を受ける。お母さんは常に「なるようになるでしょ」と明るくポジティブな人で、つらそうなところは見たことがないという。また「母は人が大好きなんです」とも語ってくれた。そんなお母さんを見ながら坪和さんは育った。

音楽
第5回雑貨村atの様子③ ハンドメイド雑貨だけでなく音楽も楽しめる、みんな木陰でくつろいでいた

お母さんも雑貨村atを応援してくれている。

毎回会場へ足を運び、大量の差し入れをスタッフや出店者に持ってきてくれる。「飲食さんの売り上げにならないからやめて、って言ってるんですけどね。でもみんなでありがたくいただいてます」と坪和さん。

ある時、実家で物を探していると一冊のスクラップブックが出てきた。中を見てみると雑貨村atのポスターや記事が保存されていた。お母さんが人知れず保管していたものだ。


そして、4人兄弟(本人、妹2人、弟1人)で過ごした日々が「みんなで何かを作り上げる楽しさ」を教えてくれた。「実家が農家ということもあり、田植えとかみんなでワイワイやるのが当たり前という環境で育ちました」と坪和さん。

雑貨村atは「主催者」と「出店者」という一般的な分け方ではなく、全員「村人」という方式で運営されている。そんなシステムも坪和さんの「みんなで作り上げる」という考えが反映されているのだろう。

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第5回雑貨村atの様子⑤ pig hipさんの味噌豚カルビ丼、雑貨村atでは男子向けのガッツリ飯も充実している
ドリンク
第5回雑貨村atの様子⑥ herb&healing HANAさんの梅シトラスドリンク、普段は高萩で古民家カフェを営んでいるそうだ


誰もが過ごしやすいイベントにしたい

そんな雑貨村atだが「誰もが過ごしやすいイベントにしたい」という考えのもと、さまざまな工夫がなされている。その一部を紹介したい。

イベントのノート
イベントの企画などが詰まったノート。びっしりといろいろなことが書かれていた

男性も楽しめるイベント設計
ハンドメイド雑貨というとメインのターゲットは女性になる。そう考えると可愛らしいおしゃれなイベント名を付けたくなるが、あえてそうせず「雑貨村」というほっこりしたイベント名を選んだ。「ファミリー向けのイベントなので男性に敬遠されたくないんです。あまりハイソ過ぎないイベント名にしました」と坪和さんは教えてくれた。

ハンドメイド作家としての坪和さんも「魔法の杖」など男子ウケが良いものをあえて販売している。「雑貨という商品自体が女性ウケは良いので、どうやって男性に楽しんでもらえるかは常に意識しています」と坪和さん。確かに、イベントには男性ウケの良さそうなキッチンカーも多数出店していた(雑貨村atの様子⑤参照)。

キッズ隊員
「誰もが過ごしやすいイベント」の「誰もが」とは出店者も含まれる。「キッズ隊員」とは、出店者のお子さんにあだ名を書いた名札を付けてもらい、みんなでイベントの簡単なお手伝いをしてもらうというもの。

「作家さんは子連れでイベントに参加することが多いんです。接客をしているときに、どうしても子供の面倒を見なきゃいけなくなる場合もあるんですよね。子供同士が仲良くなってくれれば、親の負担も減るし、子供が『またあのイベントに行きたい』と言ってくれれば多少遠い開催場所でもリピートしてくれるかなと思ったんです」

キッズ
第5回雑貨村atの様子⑦ 自慢の雑貨を披露してくれた子供たち。会場内を仲良く走り回っていた

託児スペース
キッズ隊員とは反対に、来場者の子供を預かり買い物を楽しんでもらおうというのが託児スペースだ。ところが、予想に反し利用者は少なかった。「せっかくの週末は家族で過ごしたい、という考えもあるし、『託児』という名前に罪悪感を感じてしまうママさんもいるみたいなんです。もう少し検討が必要だと感じています」とさらなる過ごしやすさに向けて改善中だ。

この他にも様々な工夫がされているが紹介しきれないので、気になった方は実際に雑貨村atを訪れてほしい。


少しずつクオリティーを高めていきたい

村人
第5回雑貨村atの様子⑧ 雑貨村atの村人たち、みんなお揃いのブローチをつけている

今は注目され人気もある雑貨村atだが、それはコロナ禍の真っ只中で「競合するイベントが少ないから」ともいえる。坪和さんはコロナが落ち着いたあと、どうやって他のイベントとの差別化をしていくかを考えている。

「でも近道はないというか、少しずつクオリティーを上げていくしかないんですよね。おかげさまで出店したいといってもらえるイベントになりました。作る、売れる、嬉しいからもっと作る、クオリティーが上がる。今は良いスパイラルが生まれていると思います」規模ではなく質を追求していきたいと坪和さんは語ってくれた。

雑貨村atは特定の場所で開催されるわけではなく、県内を転々としている。興味がある方はぜひイベント情報を調べて、足を運んでいただきたい。


イベント情報

次回の雑貨村at(第6回/1周年)※現在は終了しています。
日にち|2021年10月2日(土)・3(日)
場所|高萩ユーフィールド(茨城県高萩市)
詳細|公式インスタグラム(@zakkamura_at)をご確認ください。
※社会的状況等によりイベントの内容が変更になる可能性がございます。


(©文・写真/是好時報 編集部)

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