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九龍城 医者:リー・ウォズベルドの苦悩

錆の病

九龍城 南東 第九首区 医者;リー・ウォズベルド


近年、九龍城ではある病気が流行り始めた。

通称、赤錆病。

主に機械人形たちに感染する病だったが、最近ではあらゆる金属に感染することが判明した。感染すると金属が錆はじめ、やがては腐食し崩れ落ちる。


↑感染者 A

初めて感染したのは第一首区の住人が所有していた機械人形で、人形は九龍城での社会奉仕活動(清掃を主としていた)をしていた。九龍城から外部に出ることはまず考えられない。ある日人形を観察しに来た技師が右腕に赤い斑点を発見、当初は汚れ程度にしか考えられなかったが、3日後付近の住人が道端に倒れている人形を発見、その時にはすでに全身に斑点がまわっていた、病に侵されながらも奉仕活動を行おうとする人形は聞くに堪えないような金属音をたて続けていた、2時間後その金属音に嫌気がさした男(前歴あり)に破壊された。


↑ 感染者 B

しかし、この病は感染するものだということが判明、それは破壊した男に今度は症状が現れたからだ。

この男は体の一部を機械化していたのだ。右足は男が血気盛んな頃、つまり反社会的な組織に所属していた頃に組織同士の争いで失ったものであった。

 人形を破壊した罪で城内警備隊に捕まったが投獄にまではいたらなかった、反省文を書かされ、アルコールは控えるようにと注意されただけであった。部屋に戻る途中、男は右足に赤い斑点を発見、翌日朝には斑点が機械された右足全体に広がり、その数時間後崩れ落ちた。次に症状が出たのは、男の恋人であった。(恋人といっても金で繋がった関係であったが)。恋人は男が人形を破壊したときに部屋にいた、男が右足を再び失った朝、身に着け身につけていた装飾品が錆、崩れ落ちた。恋人は機械化していなかった為に装飾品だけであったが、その装飾品を捨てたブリキの廃棄箱から今度は感染した、さらに廃棄箱の中、箱を片付けようとした清掃員、片付けた先の廃棄品置き場の廃品全て、清掃員の家族・・・一気に感染が広がっていった。厄介だったのが水道管にまで感染してしまったことだ、九龍の水道設備は街にある設備のように立派な物ではない、井戸とそれを運ぶためのパイプが血管のように九龍の壁や地下に存在している。錆びた水道管から出る水は決して健康な物ではない、清潔な水を求めて争いまで起きるようになった、私は水を飲んでしまった者や、争いで出た怪我人を治療する仕事が増えた。


 蔓延るこの病は九龍から急速に人口を減らしていった。今九龍に残っているのは引っ越しすらできない者、九龍に長く住み思い入れのある老人たち、風水を信じる物、ギャングのような反社会的組織・・・そして私だ。

 

だが、私もそろそろ限界にきている。そろそろ越そうかと考えている。