第4話:朕茲ニ戦ヲ宣スな人
昭和の前半は、天皇陛下の一人称は「朕(ちん)」だった。
当時の日本語の公式文書は漢文の要素が残っているとわかるくらい、話し言葉とかけ離れ、堅い。
玉音放送が「堪え難きを耐え、忍び難きを忍び」が非常に平易で記憶に残るのは、そこだけ国民にどうしても伝えたいという意志の表れだと思う。
すごくデリケートな話題なので、いつもの全文と意訳は載せない。
↓興味のある方は、ここを見ていただけるとありがたい。
https://www.huffingtonpost.jp/2017/08/14/emperor-broadcasting-decleartion_n_17752858.html
それくらい、日本では政治と宗教は仲良くてもタブーな話題である。
初対面の方との話題選びについて
初対面の方との話題は「木戸に立てかけし衣食住」を選べと言われる。
き:季節
ど:道楽
に:ニュース
た:旅
て:天気
か:家族
け:健康
し:仕事
+衣食住
だそうだ。
最近では「たちつてとなかにはいれ」と言われている。
た:食べ物、旅の話
ち:地域、地元の話
つ:通勤、通学に関係ある話
て:天気の話
と:富、景気、経済の話
な:名前、地名に関しての話
か:体、健康の話
に:ニュースの話
は:流行り、トレンド、ブームの話
い:異性の話
れ:レジャー、休日の話
その人となりがわかって、私はこちらの方が好きだ。
吹雪の日に、強烈な朕と出会う。
先日、婚活マッチングアプリで、結構素敵な人と会った。
パッと見は川口能活似でイケメンサッカー選手のようだ。メールのやり取りも、まじめだ。
その日は、結構な吹雪の中、お会いすることとなった。「電車が止まるかもしれないけど大丈夫ですか?」と聞いたのだが、
絶対に会うという。
え?マジ?と脳裏をよぎるこのものぐさな性格も災いして私は結婚してないんだろう…と気を取り直し、頑張って会いに行った。
最初、当たり障りのないの無い会話を続けた後、突然相手が仕事とお金のことを切り出してきた。
「マルチ?おらわっくわくしてきたぞ!」
と思ったら、ビットコインで資産溶かした話だった。意外と普通だった。疑って悪かった。
何で投資に興味があるのか聞いてみた。
「だって、日本はもうお先真っ暗じゃないか!世界の景気は今年絶対に低迷する!」
「資産運用しない人はダメだ!英語の勉強と資格を持ってないとダメ!」
という意見が返ってきた。政治学専攻の人間的には非常に興味が湧いたので、ここから聞き役に回ってみた。
すると、突然、中国と韓国についてのヘイトスピーチを繰り出し、あの二カ国は国じゃない!と始まった。
さらに、今度はミソジニーが登場した。
「女の人は適当にしか仕事しないから男女の賃金格差は男にとって慰謝料!」と。
何故、この空間の1割はアジア系外国人の状況下で…何故、出会いの場で女性に…
あなたは
「朕茲ニ戦ヲ宣ス」
のか!?
外は吹雪だ。木戸に立てかけ…でもたちつて…でも「天気」はあるし、あろうことかめちゃくちゃレアな気象条件だ。
その吹雪の話題は無いのか!?
と色々突っ込みたくなったけど、いかんいかんここは婚活の場。冷静に、対処しよう。
周りに中国や韓国から来て働いている方はいないの?→NO。外資なので他の支社にはいる。
同じ正社員でも重いお仕事の方を担当して大変なんですね。→そうだよ。でも俺は筋トレのために早く帰ってる。
くっ…ギブアップだ…価値観が違いすぎるだけじゃなく、埋められる余地もない。
完全に情報から断然されてる訳じゃないのに、この価値観に固まるのは、好きでそうしてるとしか言えない。
価値観の違いを超える柔軟さは大事
うちの両親だって、ダイバーシティの価値観はめちゃくちゃ違う環境に育った。
父:両親も親戚も国内。
母:親戚全員都内&海外出身・駐在も多く配偶者や家族同然で外国籍の方がいる。
二人とも違う文化の人に接する頻度や濃度が違うが、割とキャッチボールが豊かなので差が埋まりやすい。
色眼鏡は誰にでもあるし、メディアもとかく煽りがちだけど、身近な人同士の体験を交換していたら、多分そこまで偏らないのだ。
先の色んな相手に「朕茲ニ戦ヲ宣ス」になる人が一番欠けているのは、常識でもダイバーシティが進んだ価値観でもなくて、「身近な人とのキャッチボール」である。
価値観の違いは仕方なくとも、それを超える柔軟性を大切にしようと再認識し、お礼のメールを送りつつ、脳内でレミオロメンが「こなぁぁぁゆきぃぃ〜」と熱唱するほどの吹雪の中、帰った。
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