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さくらの雨とあかねの虹

6年前のあの日も、ものすごい雨だった。
辛かった不妊治療でやっと赤ちゃんを授かり、初めての妊婦健診の日。

稽留流産。

悪夢のような診察を終え、帰りの車の中で嗚咽するわたしの声をかき消すような大雨だった。

お腹も痛くないし、出血もしていないし、心臓が止まっているなんて信じられなくて、翌日も夜までずっと泣いていた。

妊娠したことは内緒にしていたけど、5〜6人の友人には話していて、状況を知らせると、翌日の夕方、次々と夕焼けや虹の写真が送られてきて、わたしは夫と外に出た。

いつのまにか雨は止んで、空はあかね色に染まり、虹が出ていた。

わたし達の唯一の救いは、赤ちゃんがお空にいっても、お姉ちゃんの明音が居てくれること、そして明音にとってもわたし達がそちらにいくまで妹と一緒に居られるようになったことだった。


そしてわたし達は、名前をつけて見送ろうと、名前を考えた。

桜の咲く季節だけお腹に宿ってくれた赤ちゃんに、わたし達は『さくら』と名付けた。
妊娠がわかった日の帰りに夫婦で見上げた桜も忘れられない。


同じ桜を見上げても
同じ虹を見上げても
うれしい人がいれば、悲しい人もいて、
笑う人がいれば、泣く人もいる。
日によっても変わるだろう。

人の人生は人の数だけあって、
目の前の人が歩んできた道は
誰にもわからない。

目の前の姿や笑顔だけが全てじゃなく、そこに至るまでの人生を思えば、人は人を責められないし、羨むことも減るだろう。


今日の夕方、雨の中、夫の運転する車に乗りながら、あの週末を思い出していた。
さくらの雨と、あかねの虹。
どこまでも仲良く天晴れな姉妹。

来週はさくらの誕生日命日だね。
なんか美味しいものでお祝いしよう。

さくらの雨は、優しい雨。
そしてあかねの、希望の虹がかかる。
愛する娘達。ありがとうね。

2020.05.09
こんとも

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