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ゲームシナリオ『閲覧・禁視』

※このシナリオは終生列車に収録されたシナリオです。

■おおまかなストーリー


ホラーや心霊特集が苦手だが、怖い物は大好きな主人公。
ホラーゲームを見たことで、興味心に火が付いた所にチャイムがなる。夜遅くということもあり、不思議がりながらも玄関に向かう。
そして扉を開けると、そこには封筒が落ちており、中には「門」と書かれただけの紙が入っていた。悪戯と考え落胆する主人公だったが……

■登場キャラ

・主人公
怖がりだが、怖いもの好き。大学生時代はよく心霊スポット巡りしていた。

・スクニちゃん
新人Vユーバー。ホラー作品をよくプレイする。



〈▼本文〉

/タイトル表示〈閲覧・禁視〉

・白背景
・BGM1
・スマホ表示/スクニちゃん差分
・テキストウィンドウ表示

【スクニ】
「はい! 本日のゲームは一旦ここで終わります!」

【スクニ】
「じゃあ次は雑談タイム、いっくよ~!」

【】
「今日もスクニちゃんの実況は面白かったなぁ」
  
午後10時30分。

私は最近推しているVユーバ―
〈ネノカタ・スクニ〉ちゃんの動画を見ていた。

まだ始めたばかりで登録者数はあまりないけど、
いつも元気な実況は聞いてて癒される。

こうして仕事終わりに見ると癒し効果も倍増だ。

疲れた体に楽しそうな笑い声が染み渡る。

……どうせボイチェンでしょ、
なんて野暮なことは言わないのがお約束だ。

【スクニ】
「いやぁ、流石は今大人気の【閲覧・禁視】!」

【スクニ】
「最後までずっとドキドキしっぱなしでしたよ~」

【スクニ】
「皆も呪いの言葉には気を付けてね~!」

・ゲームパッケージ表示
・スマホとスクニちゃん消去
・背景1表示

今日、スクニちゃんが遊んでいたのは、
都市伝説を題材にした【閲覧・禁視】というホラーゲーム。

呪われた言葉を主人公が見たことで、
言葉に命を狙われるというストーリーだ。

話としては王道だが細部にまでこだわった演出は、
かなり怖いともっぱらの評判。

実際、実況を見てる途中で何度も声を上げそうになった。

・パッケージ絵消去

……まぁ、怖がりの私からしたら
ホラーゲームなんて全部怖いけど。

それでも見てしまうのは、ひとえに好奇心のせいだ。

昔から、私はこの手のゲームや心霊特集が大好きだった。

・心霊スポット1、2表示

特に大学の頃は毎週のように心霊スポットに
行ったりして最高に楽しかった。

・心霊スポット1、2消去

ほら、よく言うでしょ?
怖がりな人ほどそういうのが好きだって。

ホラーっていうのは結局、
怖さを楽しめる人専用のコンテンツだもの。

だから怖がりでホラー好きは矛盾しない。

幽霊だってきっと、驚いてくれる人の方が嬉しいだろうしね。

【】
「……そういえば、もうずっと心霊スポットにも行ってないなぁ」

久しぶりにホラーゲームを見たせいか、
あの頃の気持ちが蘇ってくる。

スクニちゃんの動画を止めると、
スマホで近くの心霊スポットを検索してみた。

・SE:クリック音

が、当然空振りに終わる。

【】
「そんなに都合よくあるわけないか」

まぁ、そうよね。

そんなにポンポンあったら逆に怖くないし。

特別だからこその心霊スポットだもの。

今はとりあえず諦めよう。

・SE:ボフッ

私はスマホをベッドに放り投げて横になった。

【】
「明日も仕事だし、シャワーだけでも浴びようかな」

・BGM停止

そう呟いた直後のことだった。

玄関からチャイムの音が鳴り響いた。

・SE:チャイム1

【】
「宅配便かしら?」

【】
「……でも、こんな時間に来るってちょっと非常識じゃない?」

少し愚痴りながら玄関の方へ向かう。

・背景2表示
・背景3表示
・SE:ドアを開ける音

扉を開けると外の冷気が流れ込んだ。

・背景4表示

「はいはい。お待たせしてすいま…………えっ?」

・不穏なBGM

外には誰もいなかった。

……誰かの悪戯だろうか?

辺りを見回してみるが、
それらしき人影も物音もしない。

それにここはマンションの角部屋だ。
逃げたとしてもすぐに分かる。

頭の中で疑問が膨らんでいく中、
視界の端に茶色の何かが映った。

・封筒絵表示

【】
「……封筒?」

拾おうと手を伸ばす。

するとその瞬間、
なぜかスクニちゃんの言葉が頭をよぎった。

・スクニちゃん表示

・回想:スクニちゃんの11タップ目の台詞
『皆も呪いの言葉には気を付けてね~!』

・回想終了

背中を嫌な汗が伝う。

……いやいや、まさかね。

呪いの言葉なんて実在するはずがない。

あれはゲームや都市伝説の中だけのものだ。

【】
「……………」

……だけど、

……だけど、仮に

これが本当に呪い言葉だったらどうだろう?

そこには何て言葉が書かれているのだろうか?

気になる。

めちゃくちゃ気になる!

心の中の天秤が揺れる。

もちろん私だって、呪われたくはない。

けれど、今はそれ以上に

この封筒の中に何が書いてあるのかが気になって仕方なかった。

【】
(…………ゴクリッ)

・SE:封筒を拾い上げる

ゆっくりと封筒を拾いあげる。

中にはA4の白い紙が折りたたまれて一枚入っていた。

震える手で封筒から中身を取り出す。

・SE:紙を広げる

すると、そこには――

・不穏なBGM停止

【】
「…………門?」

と、ただ一文字だけ書かれていただけだった。

…………………
…………
……

・ちょっと間抜けなBGM

【】
「……はぁ」

途端に重い溜息が肺から洩れた。

テンションもダダ下がりだ。

……まったく、誰だか知らないけど
くだらない悪戯をして。

朝になったら管理人に言いつけてやる。

そう心に決めながら、私は部屋の中に戻った。

・背景4消去

・間抜けBGM停止

・背景1表示

【】
「ちょっとだけ期待しちゃったじゃないの――よっと!」

八つ当たり気味に、拾った紙を丸めてごみ箱に投げ捨てる。

・SE:ごみを捨てる

紙の玉は放物線を描きながら飛んでいき、
ゴミ箱への軌道から外れて床に転がった。

はぁ、もう拾うことすら面倒だ。

……ま、別にいっか。

とりあえずさっさとシャワーを浴びて今日は寝ちゃお――

・スクニちゃん用BGM

【】
「ん?」

聞き慣れたBGNに思わず振り返る。

・背景1消去
・スマホ/スクニちゃん表示
・白背景表示

止めたはずのスクニちゃんの雑談配信が流れていた。

……なんで急に?

戸惑う私をよそに画面の中では
スクニちゃんが雑談配信を続けていた。

【スクニ】
「あー、そういえばこんな話があってね」

【スクニ】
「この【閲覧・禁視】の元になった都市伝説なんだけど」

【スクニ】
「その都市伝説の話を聞いた人の元に送られてくるんだって」

【スクニ】
「それも一番、自分に興味がある人間を選んで」

【スクニ】
「だから皆はあんまり、興味持っちゃ駄目だぞ~?」

【】
「えっ」

スクニちゃんの言葉にドキリとする。

動画を止めようとした指先がピタリと固まった。

【スクニ】
「呪いの言葉が送られてくる方法は色々あるらしいけど」

【スクニ】
「家のチャイムが鳴って、いきなり手紙で送られてきた――」

【スクニ】
「なーんてパターンもあるらしいから注意してねー!」

【スクニ】
「それじゃあ皆、おつクニ~!」

・スクニちゃん用BGM停止
・スマホ/スクニちゃん消去
・白背景消去
・背景1表示

【】
「…………」

……嘘、だよね?

配信の終わった画面を見つめながら立ち尽くす。

……というか、そもそもの話。

どうして急に、動画が流れたんだろう?

しかも丁度、スクニちゃんがこの話をしたタイミングで。

まるで私に聞いてもらいたいみたいに……

・不穏BGM

【】
「……まさか、ね」

意識した途端、何者かの視線を背後から感じた。

……何かが私を見てる。間違いなく。

ぎこちなく首を動かす。

すると、そこには、

・見つめる瞳の絵表示
・不穏BGM停止
・SE:目をギョロッと開ける音

――私のことを睨みつける一つの眼球があった。

・危険BGM

【】
「なっ」

ギョッとした。

さっき拾った紙に書かれた「門」の文字の中。

まるで扉の間からこちらを覗き込むように、
目玉がそこにあった。

【】
「ひっ――!」

あまりの恐怖に腰が抜ける。

・SE:尻餅をつく

金縛りにあったみたいに体が動かない。

【】
「なによこれ……一体なんなのよ!?」

徐々に「門」が開いていく。

次に現れたのは一本の腕だった。

【閲覧・禁視】
「キキキ、キキンン、ンキンシシシシキンシシシッ」

【】
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

叫んだところで、体は動かない。

腕が体を這い上がってくる。

ソレは私の首を鷲掴みにして、「門」の中へ引きずっていった。

・スチル1表示

【】
「あっ、あぁぁぁあぁぁあ!」

やめて、やめて、もうやめて!

・SE:引きずられる

いくら心の中で絶叫しても、ソレは止まらない。

少しずつ開いていく「門」の奥が視界に映る。

そこは一面、闇に覆われていた。

【閲覧・禁視】
「キンシキンシキンシキキンシシシシッッ」

【閲覧・禁視】
「エツランシタモノハ、シシシシシシシシ」

見ているだけで背中にナメクジが這いまわるような
不快感と恐怖が押し寄せてくる。

そして同時に私は理解した。
……理解してしまった。

自分の最悪の状況に。

……恐らく、あの「門」という文字は封だったのだ。
中に潜む化物を閉じ込めるための。

人の止まらぬ好奇心を利用した罠。

それを解いた瞬間にはもう私の運命は決まっていた。

このままあの「門」をくぐれば死ぬ。

いや、もしかしたら死よりも恐ろしい目に合うかもしれない。

……怖い。

自分がこの後、どうなってしまうのか。

考えるだけでとてつもなく恐ろしい。

だけど、今はそれ以上に――

・テキストウィンドウ消去
・画面中央に縦書き表記、赤文字

物凄く、喜ばしくもあった。

・テキストウィンドウ再表示
・黒背景

――あぁ、ここをくぐったらどうなるんだろう?

不意に押し寄せた好奇心に口の端が歪む。

恐怖の底から好奇心が顔を見せる。

……ああ、そっか。

本当に私のことを殺したのは目の前のコイツじゃなくて……

・SE:沼の中

次の瞬間、私の意識は闇に飲まれなくなっていた。

〈了〉

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