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ゲームシナリオ『Follow a dream』

■大まかなストーリー


絵描きになりたい少女さくらは周りから反対される。
自分の想いに自信が持てなくなり、スッキリするために河川敷きで絵を描いていると謎の女性に悩みを見透かされ、相談に乗ってもらう。
自分が一番描きたい未来を選べばいいとアドバイスを受けたさくらはもう一度母と話すことを選択する

■キャラ


 ・さくら(15歳/中学生)
 将来的に絵描きになりたいが、踏ん切りがつかない。
 これまで常に言うことを聞く良い子でいてきた。
 だからこそ自分の意志を持つのに抵抗がある。

 ・さくら母
 さくらに厳しく接する。子どもの将来を思って勉強をさせており、さくらが絵に没頭していることを快く思っていない

 ・凪(絵描き/女性)
 天才画家。飄々としており常にマイペース
 さくらの話を聞いた上でアドバイスをくれる。


〈▼本文〉

/背景:さくらの部屋・夜

【さくら】
「ふぁ……あ、もうこんな時間か」

【さくら】
「絵に集中してたから全然、気づかなかったな。
 うーん。最近、こういうこと多いし、ちょっと注意しないと。
 じゃないとまた……」

 SE:扉がノック(コンコン)

【さくら】
「あ……」

【さくらの母】
「さくら。あなた、まだ寝てないの?」

【さくら】
「ごめんなさい。お母さん。
絵の練習してたら、いつの間にか時間が経ってて……」

【さくらの母】
「はあ……。いい? さくら。
 来年は高校受験が控えてるんだから、そんな遊びに没頭するのは
 そろそろやめにしなさい」

【さくらの母】
「せっかく成績だっていいんだから、
 絵なんてつまらないことで落としたら、さくらも嫌でしょ?」

【さくら】
「…………」

【さくらの母】
「とにかく、明日も学校なんだからもう寝なさい。
  いいわね」

 【さくら】
 「……はい、おやすみなさい。お母さん」

 SE:遠ざかってく足音

 【さくら】
 「絵なんてつまらないこと、か……」

 【さくら】
 「そんなこと絶対にないのに」

 【さくら】
 「だって、あの人の絵は……
凪さんの絵は、私にいつだって——」

 /フェードアウト

 /翌日
 /背景:3年1組教室・朝

 【友人A】
 「さくら~!
 昨日の課題、難しくて解けなかったんだけど、
 解き方わかる?」

【さくら】
「うん。その問題なら大丈夫だよ」

【友人A】
「ありがと! さくら!
 いや~、やっぱり持つべき友達はさくらだね~」

【さくら】
「ふふ、なにそれ。
 えっと、それでどの問題が分からないの?」

【友人A】
「あ、うん。この浮力の問題なんだけど……」

×  ×  ×

【さくら】
「——と、こうやって解けば大丈夫だよ」

【友人】
「うわぁ! ありがと! 本当に助かったよ!
 このお礼は今度絶対するからね!」

【さくら】
「ふふ、ありがと。でもお礼は平気だよ」

【友人】
「いやー、それにしても本当にさくらは勉強できるよね。
 今回の課題だって難関高校の過去入試だし」

【友人】
「先生もかなり難しいって言ったんだよ」

【さくら】
「一応、受験勉強は毎日してるから。
 それに、やらないとお母さんに叱られちゃうし」

【友人】
「そっかー。でも、それだけ勉強できたらどの高校でも平気だよ!」

【さくら】
「……うん、ありがと」

【友人】
「あ、そういえば今日ってたしか進路希望用紙の提出期限日だよね?
 さくらはもうどこに行くか決めた?」

【さくら】
「あっ、そっか。期限って今日だっけ。
 すっかり忘れてたよ」

【友人】
「放課後に先生と面談もあるから、
 早めに書いておいた方がいいよ!」

【さくら】
「うん、わかった。
言ってくれてありがとね」

SE:チャイムの音

【友人】
「 あ、そろそろ先生が来るから席に戻らないと! 
 またね、さくら!」

【さくら】
「うん」

【さくら】
(……進路希望用紙か)

【さくら】
(きっと適当な高校を書けば、
先生も納得してくれるかもしれないけど……)

【さくら】
(でも、私は……)

/フェードアウト

/放課後
/背景:学校の廊下・夕方

【さくら】
(結局、進路用紙書けなかったな。
……でも、お母さんよりは話を聞いてくれるかもしれないし。
諦めるのはまだ、早いよね)

/SE:教室の扉が開く音(ガラガラ)

【クラスメイト】
 「おーい。次の面談、さくらの番だよ」

 【さくら】
 「あっ、う、うん!
 今行くね」

 /背景:3年1組教室・夕方

 【さくら】
 「失礼します」

 【担任】
 「それじゃあ早速、面談を始めましょうか。
 進路希望用紙を見せてくれるかしら? さくらさん」

 【さくら】
 「そのことなんですけど。
 実はまだ進路が決まっていなくて……」

 【担任】
 「あら、そうだったの? まぁ、さくらさんの成績なら
 たしかに選択肢も多いから悩むわよね」

 【さくら】
 「あ、いえ……そうじゃなくて」

 【さくら】
 「…………」

 【さくら】
 「実はその……美術学校に行きたいんです」

 【担任】
 「美術学校?」

 【さくら】
 「はい。私、プロの絵描きになって心を震わせる絵を
 描くことが夢なんです」

 【さくら】
「ある人に憧れて絵を描き始めたんですけど、それが楽しくて。
だから私も将来はその人みたいに素敵な絵を描いて、
みんなに喜んでほしいな、って思って……だから」

 【担任】
 「さくらさん」

 【さくら】
 「……はい」

 【担任】
 「たしかに夢を追いかけるのは素敵なことよ。
 だけど現実も見ないといけないわ」

 【さくら】
 「……っ」

 【担任】
 「せっかくあなたは良い成績があるんだから、
 そっちを活かした方が将来のためにはいいと思うの」

 【担任】
 「それに第一、このことはご両親に言ってあるの?」

 【さくら】
 「そ、それは……」

 /回想:このシナリオの6、7タップ目の母の台詞

 【さくらの母】
「はあ……。いい? さくら。
 来年は高校受験が控えてるんだから、そんな遊びに没頭するのは
 そろそろやめにしなさい」

【さくらの母】
「せっかく成績だっていいんだから、
 絵なんてつまらないことで落としたら、さくらも嫌でしょ?」

/回想終了

【担任】
「その様子だと言ってないみたいね」

【さくら】
「はい……」

【担任】
「どの高校を選ぶにしろ、まずは保護者と話さないと。
次の面談までには話してくるのよ?」

【さくら】
「はい……わかりました」

/フェードアウト

/背景:校門前・夕方

【さくら】
(はぁ……結局、先生にもダメだって言われちゃったな)

【さくら】
(やっぱり私は絵描きにはなれないのかな?)

【さくら】
「…………」

【さくら】
「……今日は少し、寄り道して帰ろう」

/フェードアウト

/背景:河川敷・夕方

【さくら】
(ここはいつもキラキラしてて凄い綺麗だなぁ)

【さくら】
(水面に映った夕陽に、そよ風に煽られる草花。
 うん。ここならいい絵が描けるかも)

【さくら】
「えっと、スケッチブックは……あ、あった。
それじゃあ、構図はあそこの家を中心に置いて、
遠近感を……」

×  ×  ×

【さくら】
(とりあえずデッサンはこんな感じかな。
 ……でも、なんだかいつもと違う。
 前はもっと気持ちよく描けてたのに……)

【???】
「ほう、なかなかいい絵じゃないか」

【さくら】
「っ!?」

【謎の女性】
「ん? ああ、驚かせてしまったようだね。
急に声をかけてすまない」
 
 【謎の女性】
 「熱意にあふれた絵描きをみると、つい話しかけてみたく
なってしまうんだ。ワタシの悪い癖でね」

 【さくら】
 「あ、いえ。その……むしろ、ありがとうございます。
私の絵を褒めてくれて」

 【さくら】
 「今までそういったことはなかったので。
 ちょっとびっくりしたけど……でも嬉しかったです」

 【謎の女性】
 「そうかい。それならよかったよ」

 【謎の女性
 「ふーむ……ところで、君。
 何か悩み事があるみたいだけど大丈夫かい?」

 【さくら】
 「えっ! どうしてそれを」

 【謎の女性】
 「これでも一応、芸術関係の仕事を長くしていてね。
 多くの作品を見てきたから何となくわかるんだよ」

【謎の女性】
「絵は描き手の心情を、描き手以上によく表現してくれるからね」

【さくら】
(……すごい。見ただけで、すぐに私の悩みに気づくなんて)

【さくら】
(長く芸術関係の仕事もしてるって言ってるし……。
 この人なら、何かアドバイスをくれるかも!)

【さくら】
「あ、あの!」

【謎の女性】
「うん? どうかしたのかい?」

【さくら】
「少しだけ、私の悩みを聞いてくれませんか?」

×  ×  ×

【謎の女性】
「——なるほどね。
たしかにその手の問題はこの業界だとよく聞く話だ」

【謎の女性】
「ただ、結局は自分で向き合うしかない問題だからね。
一概にこうした方がいい、といった答えは無いかな」

【謎の女性】
「ごめんね。あまり力になれなくて」

【さくら】
「いえ、話を聞いていただいただけでも助かりました」

【さくら】
「でも、そうですよね。
私自身がお母さんと向き合わないと……。
はぁ……自信ないなぁ」

【謎の女性】
「……ねぇ、あのさ。
どうして君はそんなに諦めたくないんだい?」

【謎の女性】
「普通、ただ好きなだけだったらもっと簡単に諦めると思うんだ。
なのに君は抗い続けようとしてる。
その理由は何なんだい?」

【さくら】
「それは……。
絵が、私が初めて見つけた夢だからだと思います」

【謎の女性】
「夢、かい?」

【さくら】
「はい。これまで私は親や周りの言う通りにしか
生きてきませんでした。勉強も、塾も、進路も、
自分で決めたものじゃないんです」

【さくら】
「だけど、絵は違って……。
あの、『凪』っていう絵師さんのこと知ってますか?」

【謎の女性】
「…………。
 ……まあ、うん。この業界では有名だからね」

【さくら】
「私、あの人の絵を初めて見た時、凄い衝撃を受けて……!
こう、見た瞬間、これしかない、ってすぐ思ったんです!」

【さくら】
「だから私は凪さんみたいに誰かの胸に響く絵を描くことを
目標にしていて……これだけは譲れないって思って……」

【さくら】
「……でもこんなんじゃダメですよね。
こんなことで怖がってる私が、凪さんみたいな絵を描くなんて、
絶対に無理で——」

【謎の女性】
「それのどこがいけないんだい」

【さくら】
「……え?」

【謎の女性】
「君は初めて自分の意志を貫こうとしているんだろう?
なら怖いのは当たり前さ。それを恥じる必要はない」

【謎の女性】
「君は君で思ったことをやればいい。
心が一番、描きたがってる未来を選べばいいんだ。
納得できるのが何よりも大切だからね」

/SE:携帯の着信音

【謎の女性】
「っと、ごめんね。話の途中なのに」

【さくら】
「いえ。
むしろ私の方こそ急に相談してすいません」

【謎の女性】
「はは、話しかけたのは私の方だからね。
気にしなくていいよ。それじゃ、ワタシは失礼するね」

【さくら】
「はい。ありがとうございました」

【さくら】
「…………」

【さくら】
(心が一番、描きたがってる未来……か)

【さくら】
(…………うん。決めた。
 やっぱりちゃんと話そう!)

【さくら】
(きっと沢山、怒られるかもしれない。
でも……)

【さくら】
「これが私の、一番やりたいことだから」

× × ×

【謎の女性】
「もしもし? どうしたんだい、マネージャー」

【マネージャー】
『どうしたんだい、じゃありません!
ホテルを急に抜け出して何をしてるんですか!? 凪先生!』

【凪】
「いやー、この街の桜が綺麗でさ。
つい興味が出ちゃってね。
あ、黙って出ちゃってごめんね?」

【マネージャー】
『はぁ……。
とにかく、今すぐホテルに戻ってきてください。
取引相手の方が凪先生にぜひ会いたいと——』

【凪】
「あ、ごめん。
それは無理」

【マネージャー】
『……はい?』

【凪】
「次の新作の構想が湧いちゃったからね。
だから今は無理というわけさ。
取引相手には上手いこと言っておいてよ。じゃあね」

【マネージャー】
『あ、ちょっと凪先生——!』

/SE:電話が切れた音(ツーツー)

【凪】
(さて、と)

【凪】
(それじゃあ描きますか。
題材は……桜吹雪と夢を追う少女、これに決まりだね)

【凪】
「うん、いい絵ができそうだ♪」

/フェードアウト

/背景:さくらの家_玄関・夕方
/SE:扉を開く音

【さくら】
「お母さん!」

【さくらの母】
「遅かったじゃない。
どこを寄り道していたの。もう勉強時間は——」

【さくら】
「その前に少しだけ、私の話を聞いてほしいの」

【さくらの母】
「…………?」

/フェードアウト

/背景:さくらの家_リビング・夕方

【さくらの母】
「それで? 話ってなんなの」

【さくら】
「あのね、お母さん、私…………美術学校に行きたいの」

【さくらの母】
「…………」

【さくら】
「急にこんなこといってごめんなさい。
でも、前からずっと進路のことは悩んでて」

【さくら】
「それで今日、人に相談してようやく決心できたの。
やっぱりこの夢は絶対に譲れないって」

【さくら】
「お母さん。私は絵のプロになりたい!
そのためにたくさん努力もする! だから——!」

【さくらの母】
「……はぁ」

【さくらの母】
「何を急に言い出すかと思えば。
 ……そんなの、許せるはずないでしょ?」

【さくらの母】
「昨日も言ったけど、あなたには良い成績があるの。
今まで積み上げたものを全部、絵で無駄にするつもり?」

【さくら】
「そんなことは……」

【さくらの母】
「とにかく、もう話はこれで終わりよ。
ほら、早く部屋に戻りなさい。
もう勉強の時間はとっくに……」

【さくら】
「——あのね、お母さん。私、お母さんには凄い感謝してるんだ」

【さくらの母】
「……なによ、急に」

【さくら】
「これまで私はお母さんに全部、決めてもらってた。
でも、絵をやりたいって決めた時に思ったんだ」

【さくら】
「何かを決めるのって、とっても怖いことなんだって」

【さくら】
「お母さんは私の代わりにいままでずっと決めてくれた。
厳しくてもそれは全部、私のためにしてくれたことだもん。
だから……」

【さくら】
「ありがとう。お母さん」

【さくらの母】
「さくら……」

【さくら】
「でもね、お母さん。
私はこの夢だけは諦めるつもりはないの」

【さくら】
「どんなに叱られても、怒られても、
これだけは絶対に曲げないって決めたんだ」

【さくらの母】
「……将来の選択肢なんて他にも沢山あるでしょ」

【さくら】
「うん。でも、私が描きたい未来は一つしかないから」

【さくらの母】
「……そのせいでこれまで積み上げた成績がなくなっても?」

【さくら】
「うん。私はこの

【さくらの母】
「…………」

【さくらの母】
「……はぁ。まったく。
その頑固さは一体、誰に似たんだか」

【さくらの母】
「……やるからには、全力でやりなさい。さくら」

【さくら】
「……! うん! 約束する!
絶対に私は凪さんみたいな絵描きになって、
沢山の人を笑顔にしてみせるから!」


【さくら】
「もちろん、お母さんもね」

/フェードアウト

/背景:さくらの部屋・夜

【さくら】
「はぁ……緊張したなぁ」

【さくら】
「ふふ、でもお母さんと話せて良かった。
あの女の人に感謝しなくちゃ」

【さくら】
(……けど、本番はここからだよね。
 きっと今日よりも辛いこともたくさん、これからあるんだろうな)

【さくら】
(でも私は——)

【さくら】
「いつかきっと……ううん、絶対に、
凪さんみたいな絵を描いて、いろんな人を幸せにするんだ!」

〈完〉


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