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びわこ京阪奈線ごっこ

びわこ京阪奈線とは

びわこ京阪奈線とは、滋賀県で言われている大な構想で、近江鉄道と信楽高原鉄道の線路を改良、また信楽~京田辺に新線を建設して片町線に乗り入れることで滋賀湖南エリアと大阪をダイレクトに結ぶ、というもの。実は鉄道敷設法の予定線に貴生川~加茂が記されていて、単なる妄想というわけでもないのだが、実際には同区間を運行していた国鉄バス→西日本JRバスの近城線も2002年に県境区間を廃止の上奈良交通と甲賀市コミュニティバス(当時は信楽町)に移管され、さらにその奈良交通の運行していた区間も2023年3月末で一部区間が廃止されるなど、近距離輸送も通過利用も望めないのが実情である。

まあそんなことは置いておいて、一人でびわこ京阪奈線を完成させるのは勝手であるから、それをやってみようと思って前日(当日)の夜にその実行を決意した。

経路

びわこ京阪奈線を忠実に再現するなら、
まず片町線に乗って大阪府から京田辺駅まで行き

そこから京都京阪バスで宇治田原町のはずれ(宇治田原町自体が京都のはずれだが)の工業団地口または工業会館前バス停まで乗車(季節によってはそこから京阪宇治駅方面からのバスに乗り継ぎさらにその先茶屋村バス停まで)

徒歩で9.5kmほど(茶屋町バス停からの場合は4.5km強)進み

県境を越えた先で甲賀市コミュニティバス(信楽高原バス)石倉橋バス停に乗り継ぐ
という経路となる。
京都京阪バスの茶屋村方面は土日祝限定運行であり、2/25(土)なら運行しているはずなので、この経路でもよかったのだが、JRバス近城線に引っ張られすぎてこれについて考慮しておらず、さすがに10km歩くのはだるすぎるという判断で、近城線の経路である加茂~信楽、つまり和束町経由で行くことにした。この場合、奈良交通和束木津線の終点である和束町小杉、あるいは厳密な最寄りである和束清水橋バス停から4kmほどで先述の石倉橋バス停に乗り継ぐことが出来る。

ちなみに、12時台のコミバスに乗り継ごうとすると、宇治田原での京都京阪バス同士の乗り継ぎが微妙(土曜ダイヤだと1時間くらい待たされる)なのでどっちにしろという感じである。

*注釈
3月31日をもって湯船地区の路線バスが廃止され、デマンドバスというかデマンドタクシー的なもの(wazcar)に移行した。湯船地区では代替交通にあたる区間で時間を定めて予約制の運行を行っているが、これが和束小学校前発の場合午後にしか設定されていないのでよそ者にはかなり使い勝手が悪そうである。

いざ、加茂駅へ

ということで2月25日(土)、朝7時半過ぎに家をでて、三条駅に向かう。NAVITIME先生によれば、京阪沿線からであれば黄檗で乗り換えて加茂へ向かうのがよろしかろうとのことであった。7時48分発の特急に乗ればいいのだが、自分は杜撰な性格なので、ちゃんと確認せずになんとなく7時56分発だと思い込んでいた。7時52分ごろ余裕しゃくしゃくで三条駅へやって来た私は56分発の電車などないことに絶望する。51分発の準急の次は8時ちょうど発の特急である。余談だが京阪君は祇園四条駅下り方面でもそうなのだが50分台に電車が少ながちである。焦った私は地下鉄線、バス、東福寺乗り換えあるいは稲荷乗り換えについて考えを巡らせた。最終的にたどり着いたのは、丹波橋から近鉄特急に乗り継ぎ、大和西大寺乗り換えで新大宮まで行き、そこから奈良駅8時51分発大和路快速加茂行きに乗り継ぐというものだった。新大宮に着くのは8時44分、1.2kmほどの距離を7分で乗り換えることが出来ればどうにかなる。中学生の頃1500m走を6分くらいで走っていたのだからどうにかなるやろ!の精神で8時ちょうど発の特急に乗り込んだ。

わーい

京阪特急の車内で近鉄特急券を購入する。たまたまポイントがたまっていて免費特急であった。丹波橋駅でビアードパパのシュークリームに後ろ髪を引かれつつホームへやってくると、ダブルデッカーの車両がやって来た。実は近鉄特急でダブルデッカーに乗るのは初めてなのだ。よく調べずに適当に席を予約したが、たまたま2階席でラッキーだった。近鉄丹波橋から大和西大寺で特急に乗るなんて普段だったら考えられないが、仕方ない。落ち着かない心のままやわらかい座席に深く体重を預け、短い特急乗車を楽しもうとした。

近鉄君は京都線民からするとあまりうれしくないダイヤ改正を行ったので、京都から新大宮、近鉄奈良方面へ行くには乗り換えを要する確率が高くなった。乗り継ぎは対面でかつ時間も短いので普段であればほとんど不便は感じないが、今の自分は1分1秒が惜しいため、3分ほどの乗り継ぎもじれったくて仕方なかった。新大宮駅は近鉄奈良駅方面に隣接する道路側に改札がある。つまり最前の車両に乗り込んで扉前に張り付くのが重要である。いよいよ電車が動き出して、新大宮へ近づく。新大宮へは定刻で到着した。扉が開く音、それは俺にとって何年振りかもわからない1200m走の始まりを告げるピストルの音である。

まず駅を出てすぐに踏切をわたろうとすれば、自分の乗っていた電車によって塞がれていることは確かであるから、踏切を待つ車の間を無理やり横断して線路沿いの道を走る。歩く人に変な目を向けられつつ、できるだけ早く進もうとするが、自分の体力が自分の思っていた以上にカスで、もうすでに苦しい。ただこうなった時に無理やり進むのが得意であると自負しているので、無理やりジョギング以上のスピードで進んでいく。次の踏切が、別の電車によって塞がれている可能性もあったが、それはもう大丈夫だと信じるしかない。幸い、700mほど進んで踏切のある道へ出たとき、踏切は空いていた。国道との交差点を渡りきって、すこし終わりが見えてきたような気がするが、まだ500mほどある。jr奈良駅前はロータリーが深く、また私は大和路快速の発着番線を把握していなかった。この時点でタイムリミットはあと3分ほど、苦しくて仕方なかったが、それでも走った。

ロータリーに入り、たむろするJKなどから黒い目線を浴びつつ駅構内へ最後の気力を絞ってダッシュする。電光掲示板を見る。なんとまだ電光掲示板にもその電車は表示されていた。ただ今の時刻まで把握する余裕はなかった。発着番線を確認し、降りてきた人の波をかき分けてホームへ駆けあがる。いた。目の前で扉が閉まる恐怖から急いで電車に乗り込む。ガラガラになった車内で座っていると1分ほどで電車は発車した。意外と余裕をもって乗車できたらしい。久しぶりに強度のある運動をしたのでしばらく息が上がりっぱなしで大変だった。そこから15分ほど乗車すると、加茂駅に到着する。

近城線敷設

加茂駅西口を発着する奈良交通の路線は和束木津線だけである。この路線はその名称通り、もともと木津駅を発着する路線だった。しかし、数年前に和束町から補助金減額を目的として木津~加茂間の休止を申し込まれ、今の加茂駅発着となった。ここから和束町の山奥、和束町小杉まで、国道163号、京都府道5号木津信楽線などを通り40分ほどの乗車である。

スマホで幕取れないからこういうデジタル幕いや( ;  ; )

バスは9時11分に発車。車内は自分のほかに2人の客と1人の運転士だけで、かなり寂しい。その2人とも、和束の中心部、和束河原~東和束までで下車してしまった。その先、山を越えて湯船地区へは貸し切りである。

こんな山奥にやってきてもPiTaPaが使えるのはけっこう不思議な感じがする。和束町小杉は、湯船集落の東の端で、川沿いの狭いところに民家が密集している。この終点から、清水橋まで来た道を戻る。

少し先にある転回場まで回送する。見に行けばよかった

この辺りはサイクリングのルートとして振興が図られており、サイクリング集団に何度か遭遇した。その間、通りがかった店(うりものが雨ざらしにしてあるだけとも言える)を覗いていたら、おばあちゃんが「今朝ついた餅あるよ」というので100円で買ってみた。よもぎの味が良くする餅をたべつつ、県境越えの道を歩いていく。

謎の店
狭隘な道を走るバス

お茶の産地なだけあり、バスに乗っているときも、歩いている道中も、茶畑を頻繁に見る。県境の何もない道だが、ちょっと開けたと思うと斜面に茶畑がこまめにある。意外とそれは県境を越えて、滋賀に入っても続いていて、信楽の一部でもお茶は名産であることを知った。どうやら朝宮茶というらしい。

道沿いの茶畑

乗り継ぐバスが、土曜であるため2時間後となってしまい、石倉橋で1時間ほどの待ち時間が発生することを知っていたが、どうするかについては考えていなかった。とりあえず、あまり急がずに歩を進めていたが、散歩として楽しめるくらいの感覚で石倉橋バス停に到着してしまった。ただ、ここには何もない。時間を1時間もつぶす術などあるわけないので、とりあえずバスの経路に沿って歩いて進むことにした。

朝宮地区をのんびり歩く。道中、何かしらの行事のためか、白い法被を着た集団に出くわした。「どこいくの」「信楽駅です」「歩いていくの!?」暇だから途中まで歩いてバスに乗るんだと言ったが、地元の人がバスの存在をどれくらい認識しているのかは定かではなかった。

朝宮地区の国道から外れた旧道沿いの集落を歩く。意外とまだ時間があると、ずんずん進んでいく。すると、見慣れたロゴの書かれた旗を目撃することになる。あのホンダ車が進入禁止と勘違いすることで知られる某ラーメン店である。目を疑った。10㎞先右折とか書いたイオンの看板のたぐいだと思った。しかし違う、こんな辺鄙なところに確かに""それ""があった。古民家をリノベーションしたようなおしゃれで和風な雰囲気の天下一品が確かにそこにあった。ちょうどおなかもすいていたし、時間もあったし、ここで昼ご飯を食べていこうかと思ったのだが、さらに驚くことに、待っている客が数組いた。どういうことなんだろう、よくわからないままそそくさとその場を後にし、先へ進むことにした。

天下一品⁉️

後で知ったことだが、どうやらこういう特別な天下一品というのがたまにあるらしく、ここでもおばんざい風の料理を合わせたセットなど、限定メニューが用意されていて、昔ながらの雰囲気の中でいつもと違う天下一品が楽しめるらしい。

脳が混乱したまま歩いていると朝宮地区の集落が終わってしまった。コミュニティバスはこの先、国道には入らず杉山地区へ向かうらしい。国道からその道を覗くと、民家の一軒もない山道であったが、まだ時間があったので進むことにした。途中、ゴルフ場やつぶれたレジャー施設の入り口なんかを横目に見つつ進むと、やがて開けたところに出て、別の道にぶつかる。これは京都府道・滋賀県道5号木津信楽線である。つまり、ここは和束町小杉をさらに進み県境を越えたところなのである。時間があるせいで、結局10km歩いてしまったらしい。杉山バス停まできて、時間的にちょうどよくなったので、ここでバスを待つことにした。天下一品の代わりに、持ってきた食パンをかじった。

やがてコミュニティバスがやってくる。よくあるマイクロバスである。のってみると客は自分一人、運転士のおじいさんはまるで寝坊した息子を高校に送っているかのような猛烈な勢いでバスを運転している。私は不安と実家のような安心感を同時に覚えた。おそらく定刻よりも早くバスは信楽駅に到着した。250円を透明な箱に入れる。運賃箱には先客のお金が入れてあった。往路か、あるいは朝宮地区までのどこかで乗った人がいたのかもしれない。
(ちなみに、このバスは平日限定で京阪石山寺まで運行しており、土休日でも大石小学校バス停で京阪バスと乗り継ぐことで京阪石山寺まで行くことが出来るので、SKRを単振動したくない方にはおすすめである。市外を含む場合の運賃は300円。)

後ろ姿

信楽線&近江鉄道線

信楽駅でびわこ京阪奈線フリー切符を購入した。土休日に限り信楽線と近江線の全線が1,050円で乗れるおトクな切符である。信楽駅構内にはあの信楽高原鉄道列車衝突事故に関する展示があり、列車の安全対策のフロンティアを開拓した当時の信楽高原鉄道の姿を伺うことが出来る。

不思議なフォントで日付が印字される

すこし街を散策してから駅に戻ると、モンハンコラボの列車がやって来た。おそらくそれ目的であろう人々が割といて、思ったより乗客は多かった。変わった名前の駅を通ってゆき、一気に山を下りると貴生川駅に到着である。ここで近江鉄道に乗り換えた。


でんしゃだ‼️

その後は近江鉄道を本線、多賀線、八日市線の順に、多賀大社にお参りしつつ雑に全線乗り潰して、近江八幡からはjrで京都へ戻った。近鉄に余計に金を払った代償として徒歩で帰ったが、朝宮で目撃した例の店のことが忘れられず、結局三条で天下一品を食べて今回のお出かけを締めた。ちくしょう。

P.S.

河原町三条の天下一品っていつもコーヒー出してくれるけど、麺食った後にコーヒー飲むと口の中が納豆の味しませんか?今のところ誰も共感してくれません。



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