省コミュニケーション

これはとても取るに足らないことなんだけど、LINEが連絡手段として主流になりはじめた頃、スタンプに抵抗があった。送るにも、受けるにも。

雰囲気で言って良いなら「脱コミュニケーション」「省コミュニケーション」「節コミュニケーション」のような感じがしたのだ。
相手のことを考えて、言葉を選んで並べることに時間をかけなくていい。ぽんとスタンプを押すだけでいい。

コミュニケーションをさぼる、軽々しく適当にするようでなんだか嫌だった。
相手に対して、コミュニケーションをとる手間を省くのも、自分が省かれるのも、なんだか雑な態度で、寂しいと思った。

もちろん、言葉より絵や表情のついたイラストのほうが伝わりやすいとか、補助的に使えばいいとか、そういうことも言える。
それに、時間や手間を省くといった点では、手紙からEメールへの移行も同じ事例だ。今に始まった話ではない。

めんどくせぇって思われるかな。それとも大半が思ってたことかな。

このまえ数年ぶりにAと再会した。やっぱりAはLINEでスタンプを使わなかった。そうだろうな、と思っていた。
Aは人の話を聞くとき、人に話をするとき、しっかり目を見る。電話をするときは、電話だけする。 昔からそうで、私は、まっすぐ私のことを見てくれる、Aのそういうところが好きだったと思う。

私はもう適当にスタンプを使うし、マニキュアを塗りながら電話もする。ごめんね。別にそれ自体は問題ないことなんだろうけど、その行動に基づくコミュニケーションの雑さが良くないよね。ごめんね。私も寂しい。そんなんだからずっと一緒にいられなかった。本当はこうなりたくなかったのに。愚かだな。

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このみ
急に雨が降ってきた時の、傘を買うお金にします。 もうちょっとがんばらなきゃいけない日の、ココア代にします。