精神科医がみるPSYCHO-PASS

最初のシーズンが始まった時から大好きなこのアニメ。私の周りでも、一番好きなアニメと聞かれて、「PSYCHO-PASS!」と答える人が結構います。そのくらいファンの多いアニメです。

シュビラシステムというものが人間を分析して、職業適性などを弾き出し、何になるかを自動で決めてくれる。
また、犯罪係数というものが出て、犯罪を起こす前に可能性がある人を弾き出し、セラピーを受けさせる。もし、セラピーを受けても治らない場合は、潜在犯として収容される。

この人気アニメ、色んな要素が詰まりすぎていて、一概に奥のテーマは言えないですが、少なくとも
人に見えるものだけで判断すべきか
そして
決められた社会で生きることの弊害

はテーマに含まれていると思います。

まず、職業などを勝手に決められるこのシステム、なんとも言えないのは、これって
この職業につく人はこういう人であるべきだ
という人物像を勝手に決められている。

たとえば、学校の先生は真面目じゃないといけない、とか、経営者はキッパっていくリーダー要素がないといけないとか。

世の中、色んな人がいます。
でも、その人のキャラは、職業によってみんな一緒ですか?そんなことはありません。どんなキャラの人がいても良い。
それに向いてる仕事だから、よりも
興味がある分野だから気がついたら仕事ができるようになっている
こういうことも多くあります。
自分が持つべき像って人から決められたものじゃなくて良いと思います。
この職業はこうじゃないといけない、ではなく
私が目指すこの職業像はこれだ!
こっちの方がよほど無理なく自分に合った仕事ができるはずです。

また、決められたことをするこのシュビラシステム。違う世界のことのように見えますが、そうとも限りません。たとえば、私は普段精神科医をしています。医学部に入った時、親の7割以上は医師でした。「親が医者だから継がないと」という声もたくさん聞いたし、継ぐものだと思って育った感じの意見も聞きます。親が医師だから、職業の選択肢の中に医師があるというのは素敵なことですが、医師1択なのは話が違います。シュビラとは言わずとも、決められた社会が全くないとは言えないのです。
先ほども話したように、興味があるから頑張れることはいくらでもあります。人に決められたレールしか見えていないと
あれ?結局私は何がしたかったんだっけ…と自分がわからなくなる時が来るでしょう。そして、人間は考えることをやめるし、自分の感情にも鈍感になっていきます。やりたいと思ってもできないのならその感情を抑えたほうがまし、もうその感情を持たない、とばかりに。
ですからこれは、現代人の無気力だったり、なんとなく人生を楽しくないと感じる人がいる社会への問題提起のようにも感じました。

また、精神科医としては、潜在犯という立ち位置をどう対処するのかも、焦点を当てるべきことだと思います。たとえば海外では性犯罪者に電子監視をつけてGPSで居場所を把握しています。これは、性犯罪の再犯率の高さがありました。韓国では、制度施行前の2004年から2008年間の性暴行犯罪者の再犯率は14.1%だったのが、制度施行後の2009年から2014年までは1.7%となりました。再犯率が88%減少したというのは、誰もがこの監視の効果を認めざるを得ません。日本でも2021年10月、保釈された被告にGPS端末を装着して監視する制度が導入される見通しを立てていると発表しました。実際、性犯罪の再犯についての平成26年のデータで、強姦や強制わいせつ罪で服役した元受刑者が5年以内にふたたび入所する確率は約21%です。その犯罪を少しでも減らすためにGPSをつけるという発想は有効です。
しかし、これが人権侵害なのではないかという見方も、もちろんゼロにはならないでしょう。
もちろん、この場合はすでに性犯罪を起こした人ですから、PSYCHO-PASSとは設定が全く違いますが、少なくともこの話題が頭をよぎった人は多いのではないでしょうか。

色々考えさせられるPSYCHO-PASS。物語の登場人物も魅力的なので、ぜひ見てください!


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