精神科医がみる憂国のモリアーティ

憂国のモリアーティは大英帝国の階級制度を覆すために天才がいくつもの事件を起こしていく物語。19世紀の各国のあり方を考えさせられるとと共に、シャーロックホームズやジェームズボンドが登場して主人公と知能バトルが起きたりと、とにかく面白い作品です。


ここでの1つのメッセージは、善悪とは何か。正義とは何か。

この主人公は、貴族を殺すことで、自分たちの考え方を考えさせ、国自体を変えていこうとする。

変化は、人の立場によってプラスにもマイナスにも働きます。

でも、これって別に必ずしも貴族全員にマイナスなわけではない。残る人は残るし、相手だって本来は貴族を蹴落としたいというより、自分たちのことを見直して欲しい方が重要です。

現代社会でもそう。チームに変化をもたらしたい人と、変化を嫌う人がいる。チームとして成長させたいのであれば、変化は必要不可欠です。時代の流れは常に前に進んでいるわけですから。

私はよく”現状維持は退化”と言っています。会社であってもスポーツであっても、周りが進んでいるのに自分が変わらないのは、相対的に見れば退化です。

周りを見ない状態は上の立場にとって居心地が良いことでもあります。しかも、楽です。

そういう時、お互いの目的、目標の確認が重要になります。このアニメでも、貴族と市民が、”この国をより良いものにする”という目的を互いに確認した時、階級を超えて協力し合います。

変化を求める対立も、組織を良い方向に導きたいという思いは一致していたはずです。それがいつの間にか、階級となり、自分と違うものを排除しようとすることが目的に変わってしまう。違いがあったから頑張れたのに、いつのまにかその違いを排除する。矛盾していますよね。

もし、何かしら変化に対して心当たりのある人は、

変化は立場が上の人にとっても有益なものになる可能性もある

故に、

それを提言している人とまずは目的の確認をすること

をしてみてください。


もう一つ言いたいこと。

モリアーティ次男は、自分の生育歴から命の重みに鈍感です。だからこそ、貴族とはいえ、殺すことに躊躇がないし、結局自分の命でさえも軽視します。ただ、シャーロックホームズの存在が彼の感情に少しだけ彩をつけてくれることになります。


世の中で、「自分が本当に良い環境で育った。親が無償の愛をくれた。」と言える人、どのくらいいるのでしょうか。もちろん、これが言えるに越したことはありません。ただ、毒親という言葉が蔓延る世界で、そうでない家庭があるのも事実です。

誰かが自分の存在を肯定してくれる、だからいきられる。

本来は自分の価値を自分で認めてあげれば良い。でも、私は私でいいんだ、それだけで価値があるんだ、という考えは残念ながら持てていない人が多いのも事実です。本来、この考えは生まれてからの2年間に親が与える感情だと言われています。でも、そうやって成長しなかった場合、この感情を与えるのは別に親じゃないといけないことはないし、何歳からでも感じられるものです。友達だっていい。本当に大切な人だっていい。人間は、経験したことがないことはできません。だからこそ、誰かに「あなたはあなたのままでいいんだよ。何があっても味方だよ。」といってもらうこと、思ってくれる人に出会うことがどれだけ人生を豊かにするでしょうか。

これは、欲しいと思って得られるものではないから、運もあります。得る方法を言葉にできるものでもありません。

モリアーティは、兄弟のことを愛していなかったわけではないけれど、この感情は持てなかった。

なぜ、ホームズとの間にこの感情が生まれたかは、この天才2人だって言葉にできないことです。

そんな人に出会っていない人も、下を向かないでください。今からでも出会う可能性はいくらでもある。人生のいつ出会うかはわかりません。

ここでの注意点は、依存にならないこと。

依存にならないためには、相手からの全てを求めないことです。

イメージとしては、この人がたとえ裏切ったとしても、許せるし、自分が信頼したんだ。この人は裏切らないと思うし、もしこの人に何かあった時は、自分は全力で助けたい。

そんな感じかなって思います。

自分の存在価値に疑問を持つ人は、何歳でも遅くないから、そんな風に感じられる人を探すために。

人とたくさん話して、自己開示。そして、人を信頼してみる。

やってみてください。

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