堀部篤史さん(誠光社)

もうすぐ姿を消してしまうかもしれないとある学生寮についての物語。
『ワンダーウォール』はただそれだけのドラマではありません。この世界からマージナルな、治外法権的領域が損なわれていくことへの警鐘がこの作品には込められています。それはレコードや本をたくさん持っている友だちの下宿部屋だとか、行けば誰かが話を聞いてくれる酒場、空き地や、クラスに居場所のない少年にとっての部室、仲間内でのDJパーティーとか、それくらい身近なもの。ドラマの中の学生寮はそんな場所と地続きなのです。その領域がじわじわと損なわれつつある現状に息苦しさを感じる「彼ら」は先頭に立って炭鉱に入っていくカナリアみたいだ。