「幼児教育の無償化」のはなし②「利用料金」っていくらくらいなの?

text by このゑ@moriyasu

そろそろ「エルドレインの王権」発売なので恒例のドラフト記事を準備したいと思っています。お気に入りはノルウェーの絵本「3匹のやぎのがらがらどん」モチーフの《カタカタ橋のトロール/Clackbridge Troll》です。

以下、MTGの話ではなく「幼児教育の無償化」のはなしのつづきです。

①では「認可保育所」「幼稚園」「認定こども園」「認可外保育施設として届け出を出している施設」そして「幼稚園類似施設」の5種類の幼児教育施設があることをお話しました。

今回は引き続きこれらの施設についての説明です。「無償化」の主たる論点でもある「利用料金」についてです。

②幼児教育の「利用料金」っていくらかかるの?


まず「利用料」の概要についてです。大きく分けて3種類の「料金」に内訳されます。

1つは「保育料」(「授業料」を含む)です。

保育士や幼稚園教諭が実際に通常の保育や授業に当たる費用(の一部)をまかなうために利用者が支払う料金です。

もう1つが「食費」です。

食費は「保育料」とは別の項目として徴収されます。ただし児童福祉法において特別に定められた項目があり、注意が必要です。

まず「0・1・2歳児の主食(ごはん)費」においては利用者は原則請求されません。「3歳児以上の主食費」と「全年令の副食(おかず)費」が利用料金の一部として請求されます。

※「3歳児以上の主食」「副食」に関しては費用請求ではなく持参の形をとる施設もあります。

さいごの1つが「実費(特別な実費・オプション費)」です。

イベントなどで使用する消耗品の負担、予定時間を超過する延長保育の利用、オプションとして送迎サービスを利用する場合などがこの項目です。

オムツの購入は自己負担が想定されているので、「園が用意する」場合の費用負担もこの項目になります。入園費が設定されている場合もこの段落です。

※一部施設が利用に関して募る「寄付金」に関しては名前の通り、「利用料金」とは別のものです。

「保育料」「食費」「実費」この3項目が幼児教育施設における「利用料金」の内訳になります。

それぞれ施設によっていくら程度が示されているのか見ていきましょう。

助成の性質上、「幼稚園」を「公立幼稚園」と「私立幼稚園」、「認可外保育施設として届け出を出している施設」を「認証保育所と企業主導型保育事業」と「その他」に分けて掲示します。

▼認可保育所

「保育料」:0円~60000円程度

自治体が運営費を助成しています。ほぼ必ず「応能負担」制度が採用されています。管理する自治体ごと利用者世帯の収入(支払い住民税額)と子どもの年令によって保育料金が変わります。無償化対象部分です。

(例:千代田区料金表。自治体によって金額は異なりますが、利用する区分自体はおおむねこれに準拠しています)

逆に言えば「同じ自治体の認可保育所」はすべて同じ利用料金表を用いています。「応能負担」は皆保険制度的な意味合いが強く「すべての世帯が利用できること」を目標に採用されています。

「他施設よりも認可保育所は利用料金が安い」という認識が発生するのは、この独自の料金表に依存するところが大きいです。

「食費」:主食費3000円、副食費4500円程度

公定価格(政府が定める料金)としてこの金額が設定されています。徴収される保育料(≒利用料)のなかに含まれる形ですが、応能負担によって指定された利用料金がこの食費を下回る場合は実質的に軽減されています。無償になるかどうかは自治体によって異なっています。(制度上無償化の対象ではありませんが、独自の支援などが予定されている自治体が多くあります。)

「実費」:施設による

その他施設も同様ですが、この項目は基本的に施設によります。ただし認可保育所は「入園料」の徴収は原則行いません。固定金額の場合が多いです。無償化の対象になりません。

▼公立幼稚園

「保育料」:0円~10000円程度

設置自治体が運営費を助成しています。「こども園」ではない「幼稚園(単体)」かつ国公立の施設は近年かなり数を減らしています。(国立、区立、市立と表記されます。)

料金形態も自治体ごとに考え方がことなり保育園同様に保護者の支払い能力に応じる「応能負担」を採用する場合と、固定金額(対比表現「応益負担」)の場合があります。無償化対象部分です。

「食費」:主食費3000円、副食費4500円程度もしくはお弁当

食費の基準は保育園と同様の場合が多いですが、自治体・施設によっては主食副食ともに「お弁当」の用意を保護者にお願いしている場合があります。

費用請求の場合は保育料とは別途徴収になることが多いです。

無償化のタイミングで無償になるかどうかは自治体によって異なっています。(制度上無償化の対象ではありませんが、独自の支援などが予定されている自治体が多くあります。)「お弁当」の幼稚園は変更ありません。

「実費」:施設による

公立幼稚園も保育園同様、入園料は設定されていません。「授業に必要なものの購入」など実費負担もしくは実物の用意など細かく保護者の確認が必要なものの項目が多くなりやすいです。原則、無償化の対象になりません。

▼私立幼稚園

「保育(授業)料」:施設による(20000円~程度)

制度上の運営費の助成はありません。私立幼稚園に関しては公定価格がないため、全ての施設のなかで各費用がピンキリ(高い安いの差が激しい)です。無償化の対象ですが上限(25700円)が決まっているので、超過分については請求されます。固定金額で、応能負担を採用している園はありません(知りません)。

「食費」:施設による(5000円~程度)もしくはお弁当

無償化の対象ではありません。直接の自治体による支援なども予定されていません。

「実費」:施設による

入試申込、入園料、教材費などを設定している園が多いです。その他、エアコン費や父母会費などを年費として設定されている場合もあります。通常イメージされる「私立の学校」の費用負担に準拠しています。無償化の対象ではありません

(一例:國學院幼稚園)

▼認定こども園

「保育料」:0円~60000円程度

自治体が運営費をじょs保育園機能利用や幼稚園機能利用などで利用料金に変わりがありますが、応能負担制も含めて、おおむね認可保育所に準じます。無償化の対象です

「食費」:主食費3000円、副食費4500円程度もしくはお弁当

公立幼稚園同様、「食費の基準は保育園と同様の場合が多い」ですが、自治体・施設によっては主食副食ともに「お弁当」の用意を保護者にお願いしている場合があります。給食費は保育料に含まれる場合もあります。無償になるかどうかは自治体によって異なっています。(制度上無償化の対象ではありませんが、独自の支援などが予定されている自治体が多くあります。)

「実費」:施設による

公立幼稚園に準じ、入園料は設定されていません。「授業に必要なものの購入」など実費負担もしくは実物の用意など細かく保護者の確認が必要なものの項目が多くなりやすいです。原則、無償化の対象になりません。

▼認証保育園と企業主導型保育事業

「保育料」:0~60000円程度

この2施設は認可外保育施設のなかでも、認可保育園に準ずる形で国や自治体から助成を受けて運営している施設です。利用時間や料金設定などに一定の決まりがあります。

利用料金は施設ごとに決定しますが、公定価格に準じて割り出す必要があります。認可保育所の満額を大きく上回らないこととされています。割引の設定などもあります。施設ごとの決定として「応能負担」を採用している園も一部あります。37000円を上限に無償化の対象です。(幼稚園と上限金額が異なります)

「食費」:主食費3000円、副食費4500円程度

徴収される保育料(≒利用料)のなかに含まれる形でしたが、無償化の対象ではありません。区別されて実費請求へと変更となる場合が多そうです。

「実費」:施設による

「入園料」は徴収されません。その他実費の基準は認可保育所に準じますが、行事やオムツなどで項目ごとに設定されている場合があります。無償化の対象ではありません

(一例:保育所くまこぐま)

2019年度の3歳児クラスでは利用料:30000円(内訳 保育料:25500円/月、食費合計:4500円/月)、実費(オムツ費):2000円/月の合計32000円です。このうち25500円が無償化の対象となり、6500円が月額請求という形になります。

▼認可外保育施設の届け出を出している施設(認証保育園と企業主導型を除く)

「保育料」:施設による

認可保育所や認証保育園・企業主導型保育事業と異なり、運営費の助成がないため利用者利用料金で運営費を賄う形になります。

私立幼稚園同様、公定価格を基準としていないため施設によって利用要件や利用料金が大きく異なります。応能負担採用の園はほとんどありません。

37000円を上限に無償化の対象です。

「食費」「実費」:施設による

私立幼稚園同様、各費用に大きくバラつきがあります。入園料を徴収する場合もあります。無償化の対象ではありません。

▼幼稚園類似施設

「保育料」「食費」「実費」:施設による

幼稚園と異なり、運営費の助成がないため利用者利用料金で運営費を賄う形になります。

私立幼稚園同様、公定価格を基準としていないため施設によって利用要件や利用料金が大きく異なります。応能負担採用の園はほとんどありません。

①でも触れましたが幼稚園類似施設にかかる費用は現状すべて無償化の対象ではありません

まとめ

「認可保育所」「公立幼稚園」「私立幼稚園」「認定こども園」「認証保育園と企業主導型保育事業」「その他の認可外保育施設」「幼稚園類似施設」の料金設定の仕組みについて簡単に説明しました。

「私立幼稚園」「その他の認可外保育施設」「幼稚園類似施設」の3施設に関しては標準利用時間や標準料金が設定されていないため具体的な金額をお伝えするのが難しいです。また食費についても、今回を機に表記方法をあらためた園も多いと思います。(別途徴収予定などがなかったため)

※「食費の別途請求」については応能負担との背反性が存在し、既にトラブルも発生しているので、別項にてお伝えします。

本当になんとなくといった形になってしまいましたが、各施設の料金の性質の違いみたいなところを覚えてもらえればと思います。その他、ツイッターの方で連絡いただければ補足できると思います。ご意見、ご感想よろしくお願いします。


twitter(@konoe_moriyasu)





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