「エルドレインの王権元ネタ」こぼれ話

テーロス還魂記発売記念、「エルドレインの王権元ネタ」こぼれ話

昨年末にホビージャパンから発売された雑誌「超攻略!マナバーン2020」にて、記事を2つ担当させていただきました。市川さんと原根さんの対談直前の「プロ制度について」と、おとぎ話を中心にしたセットである「エルドレインの王権の元ネタ」です。

特に元ネタの方は4ページを割いて紹介する機会をいただき楽しく書けましたが、まだまだたくさん書きたいけれど書いてないお話がありますので、次セットの発売に合わせて今回は「こぼれ話」としてそこらへんのお話をさせていただこうかなと思います。タイミング的にもう他のどの記事でも書かない(触れない)と思いますので。

「超攻略!マナバーン2020」では
「3匹のくま」「金のガチョウ」「ガチョウと黄金の卵」「美女と野獣」「いばら姫」「白雪姫」「ヘンゼルとグレーテル」「灰かぶり」「ジャックと豆の木」「ラプンツェル」「カエルの王さま」「人魚姫」「ガラスのひつぎ」「3匹のヤギのがらがらどん」「ハーメルンの笛吹き男」「魔法使いの弟子」「3匹の子ぶた」「ルンペルシュティルツヒェン」そして「アーサー王にまつわる伝説」などなどについて触れたり解説したりしました。(長さは作品によりマチマチです)よろしければ本誌と合わせてお読みください。

何回続けるかは未定ですが、1更新1カード、エピソードを追加していきます。記事本文は完全無料なので、気のむいたときにおひねりください。

「おとぎ話」以外からのエピソード

「エルドレインの王権」は「おとぎ話」以外のエピソードをモチーフにしているカードがあります。まずはそれらの紹介から入りましょう。
(今回、カード画像は諸般の事情で掲載いたしません。)


(2020/01/20 更新分、ここから)

カード名:共に逃走

メインとなるモチーフ:ノートル=ダム・ド・パリ

メインとなるモチーフの媒体:ヴィクトル・ユーゴーによる小説

あらすじ:ノートルダム大聖堂の鐘つき堂に住む醜形の男、カジモド。カジモドを拾い育て幽閉する助祭、フロロ。ノートルダムのお祭りにジプシーの美しい踊り子エスメラルダが訪れてきたことから話は始まる。踊り子に恋をしたフロロはカジモドを利用しエスメラルダの誘拐を企てたが失敗し、カジモドが逮捕された。カジモドをかばう心優しいエスメラルダにカジモドも恋をしたが、エスメラルダは衛兵フェビュスに恋心を寄せていた。

嫉妬したフロロによってフェビュスは刺され、その罪を今度はエスメラルダが負ってしまう。魔女裁判によってエスメラルダは死刑となる。全容を知ったカジモドはフロロを大聖堂の鐘つき堂から突き落とし、殺した。育ての親と想い人をなくしたカジモドはエスメラルダの遺体とより合うように永い眠りについた。

補足:数度「ノートルダムのせむし男」として映画化されている。また大幅な変更を加えたディズニー映画「ノートルダムの鐘」も有名。

元々フェビュスとエスメラルダは不倫関係にあたるが、このあたりは作品によって清い関係に変更されていることも多い。
《共に逃走》では、カジモドのような異形の男とエスメラルダのような美しい女性がともに手を取り合ってなにかから逃げている様子が描かれている。

エルドレインにノートルダムはないので、もちろん彼らはカジモドとエスメラルダではなく、「彼らに似た2人」です。決してハッピーエンドとは呼べなかったノートルダムの悲劇に対し、彼らにはどんな結末が待ち受けているのでしょうかー…

補足の補足:イラストに異形の怪物が登場する点から「フランケンシュタイン」を彷彿しやすい人も多いと思うのですが、「異形(当時は「せむし男」が典型的な表現であったようです。)」がテーマとなる類似作品として、各世代の後世作ごとに相互干渉しあっている作品です。(どちらも原典は1800年前半の古い作品です。)

こんな感じでモチーフそのものの話しと、それにまつわりどうカード化されているのか、また気になりそうな点があればそこらへんへの注釈を含めた形で1つとしようと思います。更新のたびに下に続いていきます。

(2020/01/20 更新分、ここまで)

(2020/01/29更新分、ここから)

カード名:願い爪のタリスマン

メインとなるモチーフ:猿の手

モチーフの媒体:ウィリアム・W・ジェイコブズによる小説

あらすじ:ホワイトという男は知人から「猿の手のミイラ」をもらい受けた。知人によれば「3つの願いごとが叶う」代物だというが、「これによって歪んだ運命は災いをもたらすものだ」とも話していた。

ホワイトの家には妻とハーバートという息子がいた。ハーバートは面白半分に「家のローンの返済金」を願ったが、特になにも怒らなかった。翌日、ハーバードが勤務中に壮絶な事故死に会い、その保証金としてローンの返済金と同額の金額をホワイト夫妻は手に入れた。

息子の死を受け入れなかった母はホワイトに頼み「息子を生き返らせる」ことを猿の手に願った。すると家のドアをだれかがノックする音が聞こえてきた。母は息子だと信じドアを開けようとするが、ホワイトはゾンビのような息子の姿を想像し、おそろしくなり、「息子を墓に戻せ」と3つ目の願いごとをかけた。するとドアのノックは止み、開けてみるとそこには誰もいなかった。

補足:元々童話でメジャーなテーマである「3つの願いごとを叶える魔法のアイテム」(おそらく「アラジン」に登場する「魔法のランプ」が最も有名です。)を「願いをかけた者の意図しない形でそれを叶えるもの」という表現で怪奇小説にした作品です。

(主観的表現ですが)「ちょっとマイナーなオカルトグッズ」ポジションとしてはとても人気のあるモチーフで、非常に多くの怪奇取り扱いファンタジー作品に登場します。

原典同様、「2つ目の願いごとを打ち消すような3つ目の願いごと」をすればおおむね「1つ目の願いごとによって不意に生じた不運」程度で収まることが多いですが、主人公が3つ目の願いごとを叶えるまでにその法則に気づけないと大抵待ち構えてるのはシリアス・バッドエンドです。

「化物語」や「XXXHOLiC」で見たことのある人も多いかもしれません。

補足の補足:モチーフのモチーフに「魔法のランプ」が含まれることは明白なので、このカードのモチーフにもそれを挙げるべきかもしれないですが、カードのイラストと能力は明らかに「猿の手」自体を指し示しています。「2つ目の願いごとは最も意図しない形で叶えられる」という点のテキストですね。

(「魔法のランプ」は「ロークスワイン城」にて、アラジンが願った「あらぬ世界の国(城)」というシチュエーションをモチーフに、カード化されています。)

(2020/01/29更新分、ここまで)

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