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ガレージを建てた 2 - 土地探し編 -

ついに土地探しである。実家のある田舎ならば100坪・330m2で200万と平米単価1万円で土地を買えるが、さすがに郊外とはいえ首都圏は土地が高い。また、自宅の近くは平米あたり20万円と、ガレージを建てる前に土地に資金を使い果たしてしまう。本当は「土地は高いなあ」で諦めるために始めたのだが、こんな条件で探してみると意外と現実的な価格に近づいてしまった。

- ガレージなので住宅地である必要はない
- 自宅から自動車で30分圏内でも良い
- 土地には「市街化区域」と「市街化調整区域」がある
- 「市街化調整区域」の土地は安い
- 上水道が通っていない場所は安い
- 建築不可と書かれている場所はとても安い

市街化調整区域とは

各市町村は、それぞれ「都市計画」というものを策定している。

「都市計画」とは、このエリアに人が住んでほしい、このエリアは防災のための空地だから公園にする、川が近いから市街地にしちゃダメ、このエリアは工業地域にするよ、という、シムシティのようなものである。

ここで八王子市の都市計画図を見てみようhttps://www.city.hachioji.tokyo.jp/shisei/001/006/001/002/p023117.html

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「市街化区域」は、文字通り、住民はここに住んでほしいなあと市町村が言っているのである。財源となる税収が限られる中、上下水道の整備、歩車分離のされた道路、鉄道やバス路線などの交通インフラを優先的に配備して、住み心地の良いエリアを作るぞと指定している地域である。当然ながら、市街化区域の土地の値段は高い。資金力のある住宅メーカー、不動産屋や開発会社も狙うため、土地の価格は普通の会社員にとって一生に一度の買い物レベルの価格になる。

「市街化調整区域」は、乱暴な言葉で、ヨソ者がここには住むな、というエリアである。当然ながら、上下水道、道路や交通インフラの整備には金がかかる。市町村としては、無秩序に住宅を建ててほしくはない。そのため、市街化調整区域に指定されている場合、この場所でずっと農業を営んでいる方やその近縁者のみにしか建築許可が出ないことが多い。土地の価格は当然安い。

詳細は後述するが、ガレージを建てるならば、不動産屋の広告の「市街化調整区域」「建物は建築不可」の単語にビビってはいけない。

安い土地とは

当然ながら、普通の人が嫌がる要素があると土地は安くなる。例えばこんな要素

- 市街化調整区域
- 建物は建築不可
- 上水道が通っていない、引けない
- 近隣に工場があってうるさい
- 墓地や火葬場に隣接
- 駅から遠い
- 交通が不便

あなたはガレージに週あたり何回来るだろうか?寝泊まりはするだろうか?土日に遊びにくる程度であれば、普通の人が敬遠する要素は土地価格を下げてくれるありがたい要素になる。ちなみに、私の購入した土地はこんな感じ

- 市街化調整区域
- 地目だけは宅地
- 上水道が無い
- 引けないことはないが引き込みには250万円
- 下水道と併せて合計500万円
- 隣は墓地
- 電線は目の前の道路にある
- 目の前は田畑が広がり何もない

あるとよいもの

最寄りの電線を確認しよう。目の前の道路に電線が通っていないと、電柱を立ててもらう必要があるので大変だ。途中の地権者に拒否されると電気が来ない。土地を買う前に電気をどこから引くかは不動産屋と必ず確認しよう。

また、ガレージが徒歩圏内ではない場合、バス停やコンビニは近いほうが良い。バス停は重要である。車で買い出しをし、🍖を焼いて🍺を飲んで、車を残して歩いて帰れる。翌日、またバスや原付で向かって、車でゴミと原付をまとめて回収してくればよい。

最寄りのコンビニにちゃんと客が入っているかも観察しよう。コンビニも商売なので、客が入らないと潰れる。ひっきりなしに客が入っているコンビニは潰れない。今後も商売を継続してくれそうか確認しよう。

土地価格を調べる

希望するエリアの土地はいくらくらいなのか、目安を知ろう。一物四価と言われるくらい、土地には次のような様々な価格がつく。

1. 時価
2. 公示地価
3. 相続税評価額(路線価)
4. 固定資産税評価額

このうち、我々が気にするべきは 1. であるが、売値はいくらにでも設定できる。その価格が適切なのか最も参考になるのは 2. であり、以下の「不動産取引価格情報検索」で調べることができる。この調査では、この土地はこれくらいかな?という目安を「公示地価」として公表してくれている。また、土地の売買があると、国土交通省の支局が買い主に「いくらで買ったか教えてくれや」とお手紙を出し、まとめてくれたものが「不動産取引価格情報検索」に公表されている。両方を見ることで、おおよその土地価格の感覚が掴めるだろう。

国土交通省・不動産取引価格情報検索
https://www.land.mlit.go.jp/webland/

試しに、東京都八王子市の高尾駅周辺を見てみよう。八王子-73は高尾駅徒歩10分で140,000円/m2、八王子-77 は駅徒歩3,000mで41,200円/m2 と、地番と生々しい数字が出てくる。

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ここから、水道が無い等のマイナス要素があると、水道を敷設するための金額が地価から引かれるため、掘り出し物が見つかったりする。

維持費を計算しよう

せっかくガレージを建てられても、維持費が払えないと元も子もない。必ず課される税金だけでも計算しておこう。

土地を保有すると固定資産税を払わねばならず、毎年の評価額の1.4%が、市街化区域だと1.7%が課税される。固定資産税を計算する際、前章の 3. 相続税評価額(路線価) と 4. 固定資産税評価額 を参考にする。

国税庁・路線価図・評価倍率表
https://www.rosenka.nta.go.jp/

例えば、次の路線価図の「110D」と書かれている市街化区域のこの道路沿いに100m2の土地を買ったとすると、固定資産税評価額は1,100万円 (= 110千円 x 100m2)なので、年間の固定資産税は 18.7万円 (= 1,100 x 0.017)となる。

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固定資産税高いなと思うが、これは市街化区域の値である。私のガレージは市街化調整区域にあるため、固定資産税評価額は 150平米で 250万円程度であり、この評価額は最寄りの市街化区域の路線価の 40% くらいである。

土地を買ってしまった

地図をにらめっこしながら原付で走り回る日々が続いたある日、突然にも目をつけていたエリアで新規物件が出てきた。しかもその面積は150平米もあり、500〜600万円以上の予算を覚悟していたが、なんと売出価格は350万円だった。土地は雑草が生えまくり荒れ地ではあるが更地で、登記簿上はセットバックも済んでおり、測量もしなくてよい。

早速、電話でアポを取り不動産屋へ出向き、物件について聞くとこんな感じだった

概要
- 市街化調整区域
- 今の持ち主は内装屋の店主
- 店主の祖父が購入して資材置き場にしていたが経緯が不明
- 店主は祖父からゴミの畳や角材が埋まっているかもしれないと聞いた
- ゴミの処分費用として土地価格を100万円値引く(!)
- その代わり、ゴミが出てきたら恨みっこ無し

水道
- 水道は無い
- 隣の農家は私設した水道を使用中
- 敷設から40年が経過し、詰まり気味で2軒分には水圧が不足
- 目の前の通りから全部引き直しになるため250万かかる(!)

立地
- 隣は墓地
- 葬儀屋が自宅を建てようとしたが、水道の費用面で断念

電気
- 電線は目の前にある
- 電気は問題なく引けるだろう

また、不動産屋で情報収集したその足でお隣さんへ情報収集に行った。

「ごめんください、隣の土地が売りに出されており、私は趣味の工場(こうば)を作りたく、どんな人がどんな使い方をしていたか知りたいので教えてもらえませんか」

という趣旨で挨拶した。こんな回答だったのであまり参考にはならなかったが、とりあえず険悪な状態ではないことが分かったのでヨシとした。売主と隣人が険悪な状態だと、土地の購入後も何かと文句を言われるので必ず情報収集しよう。

- 隣地をどう使っていたかは分からない
- なかなか草刈りをしてくれないので虫だらけで困る
- 草刈りも、境界1m幅に除草剤を撒いて終わりなので虫は相変わらず多い
- 草を刈ってくれないので虫が多くて困る
- 草刈り機なら貸すのに
- 草刈りが・・・
- 草・・・(以下省略)

水道が無いという欠点はあるが、次回に記載する水タンクで自宅から水を運べば何とかなるだろうと思っていたし、畳や角材は乾燥後にセーバーソーで細かく切って可燃ごみとして処分すればよい。間口は狭く建築価格は上がるが、自宅から15〜30分の範囲で250万円で購入できる150平米の土地はまず見当たらない。一晩考えて「いける!」と判断し、電話で不動産屋へ購入の意図を伝え、すぐに買付申込書を記入して手付金を払った。ちなみに、手付金は物件にもよるが、最低20万円くらい、土地購入価額の10%が目安である。

土地購入にかかったお金

今回は250万円の土地を購入したのだが、購入時には土地価格の他に以下のようなお金が30万円ほどかかった。土地価格の10〜20%くらいの予算を予め組んでおこう。

不動産会社手数料: 14.85万円

計算方法は、土地の購入価格の3% + 6万円(+消費税) である。レインズ、SUUM🙆、AT H🙆ME、H🙆MESなどの不動産ポータルサイトへの広告、各種建築関連法規の調査、自治体や電気ガス水道インフラへの問い合わせ、売主との交渉をやってくれている。いろんな会社があるが、今回の会社はのんびりした、良い意味で不動産屋らしくない会社でアタリだった。この手数料をケチろうとする買い主は良い顔をされない。必要経費なのできちんと払おう。

なお、取引態様が「売主」になっていると、売り手は不動産会社なのでこの手数料は不要である。(割とデカい)

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登録免許税: 5.5万円

計算方法は、土地評価額 x 1.5%(2023年4月1日以降は2.0%)

所有権を法務局へ登記する際の税金である。ガレージを建てる用途ではケチることはできないが、自宅として取得する場合はタダに近い金額へ減免される。

司法書士手数料: 4.5万円

売主・買主から中立した第三者の立場で、適切に登記してもらうための手数料。身内であれば自分達で登記すればよいが、他人同士だと金を持ち逃げしたり、いつまでも登記せずに毎年の固定資産税が売主に降りかかるリスクがある。きちんと払おう。

相場観であるが、土地の売買金額1,000万円までなら、報酬単体で4万円くらいだと「いいんですか?ありがとうございます!」という印象である。これに出張料(2,000〜5,000円)、謄本請求手数料(1,000〜2,000円)、送付手数料(1,000〜2,000円)を加算される。同じ法務局の管轄内に司法書士事務所と購入する土地があると、出張料をお安くしてもらえる印象がある。いま見直してみると、だいぶお安くしてくれたなあ、ありがてえなあと思う。

不動産取得税: 5.5万円

土地を取得すると、国へ登録免許税を払っているのに、都道府県にも税金を払わねばならない。ヤクザか。税率は固定資産税評価額の4%であり、登記が終わって半年くらい経って忘れた頃に払えというお手紙が届く。なお、宅地については令和6年3月31日まで税率が2%なので、本来の半分で済んだ。

空き地の手入れの話

主に雑草の手入れについて。私は10月に土地を購入・引渡を受けた。すぐにガレージを建てられれば良いが、私の場合は資金面でできず、金が貯まるまで2年以上はかかるかなという算段だった。一方、草は私の財布など知らずに生えてくるので、約50坪もある敷地を夏の間に毎回刈ればよいか、考えただけでも憂鬱になる。

そこで、冬の間に防草シートを張った。2m幅の25m巻を2本買った。草が成長するには日光が必要だが、遮光することで大部分の草は成長できない。中には防草シートを突き破って生えてくるタンポポ等もあるが、手で数箇所毟っておしまい、という程度に収まる。土地を寝かせておく際には、春がやってくる前に必ず防草シートを張るべきである。どうせ工事するまで保てばよいので、一重に張るだけで良い。春以降に防草シートを剥がしてみると分かるが、スギナや謎のツタがシートの下でがんばって白い茎を伸ばしている。雑草の生命力はすごい。

ちなみに、私の購入した土地には隣に農家のおうちがあった。前の持ち主は草刈りをかなりサボっていたらしく、私がきれいに防草シートを張ったことでかなり好感度がアップしたようだ。良いガレージライフのためには、お隣さんとも良好な関係を築かねばならない。

高密度防草シート 2×25m 黒
https://www.cainz.com/g/4549509749097.html

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防草シートの押さえは、150-200mmのピンで、ケチらず丸い押さえも用いるとシートが破れにくくて良い。最初は300mmのピンを買ってしまい、土の中の石、ゴミやコンクリートガラ等が邪魔でなかなか打つことができなかった。

押さえ 60mm 3穴 ブラック 10個
https://www.cainz.com/g/4549509428381.html

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剣先Uピン 150mm×10本\
https://www.cainz.com/g/4549509428350.html

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次回はいよいよガレージの設計である




原付で探し回った話

完全に余談ではあるが、土地を探す場合は、現地へ行き足で稼ぐ必要があることは多い。

私も、目をつけているエリアを原付で回り、不動産会社の1軒1軒や路地の1本1本を走った。「売物件」と看板が立っていても、Webサイトや不動産ポータルに載っておらず、不動産会社の店頭にしか表示していない物件があったりする。

理由としては、売主がケチってレインズ(不動産会社向けの取引情報掲載ポータル)に登録していない、売物件であることを公開してほしくない、不動産会社がIT音痴、サボっている・・・等の数々の理由はあるが、情報を足で稼ぐしかない場合は多々ある。

また、物件を買う場合は、その土地を朝・昼・晩の3回は見に行ったほうが良い。意外と交通量があったり、なかったり、行き交う人の民度、治安の悪そうな車が走っている等、意外な発見がある。

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