タイBL・アジアBLドラマの「後で見るリスト」が減らない贅沢な悩み

実写BLにあまり良い思い出がない私にとって、タイBL・アジアBLのどれもこれもが、 脚本、俳優の演技力、映像美、共に素晴らしい作品に溢れ、供給過多気味でさえもあるという現状はまるで夢のよう。
TLを眺めていれば、あれも見たい、これも見たい、と「後で見るリスト」は増えるばかり。

昨年5月から私が見た作品は、2gether、SOTUS、SOTUS S、Our skyy (KAのみ)、MyEngineer、Love By Chance、Still 2gether、I’m Tee,Me Too、Oxygen、トンホンチョラティ、永遠の一位(台湾)。
11ヶ月で11作品と思えば少なくはないのかもしれないが、過去作品の豊富さは元より新作も増え、タイBLに収まらず、アジアBLという括りで気になる作品が増えていることを思うと、タイ沼の皆さんの平均視聴ペースよりは遅いのではないかと思う。(誰かと比べるようなことではないのだけれど)

見れば面白いことが約束されているものが目の前にたくさんあるのに、次々と手を出すことができない自分に、ここ最近は、焦燥感すら感じ始めていた。
「つべこべ言わずに、見ればいい話」なのだが、自分にとってその躊躇と焦燥感との兼ね合いは、今後も続く根深いことのような気がしたので、一旦、整理してみることにした。
何故、私は、「後で見るリスト」をいつまでも抱えているのだろう。


【理由1:視聴環境の複雑化、細分化】

まず、視聴プラットフォームの細分化、複雑化は間違いなく理由のひとつだろう。
私がタイ沼に来た頃は、見たいなと思うタイBLドラマの多くは、YouTubeの公式チャンネルで見ることができていたが、今はジオブロックにより、見られなくなってしまった作品も多い。
私自身も、2gether、SOTUS、SOTUSS、MyEngineerをひたすらループしているうちに、後で見ようと思っていた作品が次々ジオブロックされてしまった。
その恐怖から、SOTUSがJFCさんの日本語字幕付きで今も視聴できるかを確認する為に、定期的にYouTubeを覗きに行くようになってしまった。

現在、タイBLドラマ・アジアBLドラマを心置き無く見るようにする為には、楽天TV、衛星劇場、WOWOW、U-NEXT、Netflix、TELASA、Amazon prime、Abemaなどを複数箇所契約する必要がある。
こちらではこれが見れない、あちらではこれが見れない、など視聴作品のプラットフォームが細分化されている為、複数箇所の契約が必要になってしまう。
ちなみに、私の「後で見るリスト」を心置き無く楽しむ為に視聴先を選ぶとすると、月額1万円くらいになってしまい、これはいくら社会人とはいえお財布的に厳しい。

加えて、ドラマを何度も繰り返し見る私にとって、短期単話レンタルとの相性がよろしくない。
タイBLドラマは2週目からが本番だと思っている。最終回からまた1話へ戻ってくると、新しい発見や初見では生まれなかった視点や感情が見つかる。それがとても面白い。
つまり、私のドラマの楽しみ方からすると、ひと作品を堪能するのに、レンタルだと6000円以上はかかりそうなのだ。(それならいっそ、円盤を買いたい)

昔はレンタルショップで2泊3日や7泊8日でドラマを借り、もう一度見たい場合は借り直したりすることは当たり前だった。
けれど私はもう、いつでもどこでも好きなように見られたYouTube配信を知っている。何度も気軽に見たり、聞いたりすることができるサブスクの便利さ楽しさを知っている。
だからもう、その頃の様式には戻れない。
有料で構わないから、世界同時配信日本語字幕付過去作品も網羅見放題スパダリプラットフォームに現れてほしい。

「見たい!」の熱量にブレーキをかけられる、配信先の作品の分散化や、見放題ではなく短期単話レンタル作品もある状況は、布教のしにくさという観点を横に置いても、私個人が視聴するのにもなんとも言えない億劫さがつきまとう。


けれど、それだけが私が「後で見るリスト」を一向に解消しない理由ではない。
自己責任にはなるが、VPNを通し自動翻訳でドラマを見ることもできる。
それに、楽天TVでターンタイプを全話パックで購入しておきながら未視聴だったり、Abemaプレミアムを契約していながら、カラーラッシュをまだ見ていない現状を思えば、もっと他にも理由がある。

【理由2:タイBLドラマ、アジアBLドラマは、瞬間的な消費に留まらない】


SOTUS Sを休日1日で駆け抜け、50話以上ある戦隊モノシリーズを3日で駆け抜けたこともある私なので、視聴時間の不足だけが理由でもない。
私はリアタイが苦手で、心揺り動かされた状態をなんとか宥めすかしながら、一週間を過ごすことがこの上なく辛いので基本的にドラマは一気見することが多い。となるとむしろ、タイの12話や台湾の6話完結は、一気見しやすい話数で相性が良いと思う。

ただし、タイBLドラマ、アジアBLドラマは「あぁ、面白かった」では済まない。
確実にその後の自分の可処分時間を侵食していく。むしろ、それこそがファンにとって幸せで有り難くもあり、それ故に新しいドラマに気軽に手を出せない理由なのだ。

タイBLドラマ完走後はだいたい、またもう一度ドラマを見返して、ビハインドを見て、プロモーション活動を見て、ドラマの解像度を上げていく。そして「そうだったのか…!」とまたドラマを見直す。
俳優さんたちのIGやTwitterをフォローし、過去の活動をチェックし、FCさんをフォローしたら最後、洪水のような現在未来の供給が溢れかえってくる。(この間ずっと興奮して狂い咲くことになる)
オンライン時代はなんと素晴らしくて恐ろしいのだろう。どんなに遅くハマったとしても、SNSやYouTubeで検索すれば、過去の活動も容易に見ることができる。

1年間に1作品、ハマるドラマに出会えれば上々な私にとって、この10ヶ月間のドラマの確率は怖いくらいなのだ。見るもの、見るもの、同じように深みにハマる。しかもドラマが終われば供給も終わる日本とは違い、推しCPはそのあとも一緒にいたりする。
スマホの容量は常に限界突破で、家事をしながらや通勤時間、他の趣味時間や睡眠時間さえも削って、タイ沼に当てているのに、1年たっても時間は不足し続けている。単純なドラマ視聴以外のところで、時間が溶けていく。

愛は無限だ。
推しがいくら増えようと、今までの推しへの愛が減るわけじゃない。愛する推しがたくさん増えることは心豊かで幸せになっていくし、学ぶことも多い。だから、どんどん素敵なひとには積極的に出会いたい。

けれど、時間とお金は有限なのだ…!
私が突然大富豪になって、悠々自適な暮らしぶりを手にいれない限りは視聴環境は選択せざるを得ないし、平日の余暇時間は3時間以上に増えることはないし、突然週休3日制になったりもしない。

つまり、気軽に新しくドラマを見ることに躊躇しているのは、ハズレをつかまされるかもというコスパ的視点ではなくて、またこの作品も「当たり」で心がどうにかなってしまう可能性が高く、これ以上廃人になるわけにはいかない、という防衛反応なのだ。
端的にいえば、「推しが増えるのが怖い」

「面白そうなコンテンツには、とりあえず手を出してみよう」がモットーのオタク人生だったのに、このような防衛反応が作動するほど、タイBL、アジアBLは私のツボを押しまくりのジャンルだということだろう。なんて、恐ろしい…!(だが、この上ない幸せ)

【理由3:昇華したい熱量と時間がかかるアウトプット】

これはもう単純に、私の性癖であるからどうしようもないのだが、激しく心揺り動かされた物語を噛み砕き、解像度を上げ、言語化したり絵を描いたりして、自分の中に取り込みたいという欲がある。
この時、どうしてこんな表情をしたのか、いつから彼は惹かれたのか、心に取り纏めたい。カメラでは映らない物語のビハインド、余白を想像するのがとんでもなく楽しい。そして、自分の感情の高ぶりの理由を言語化できた時の快感たるや…。
この解像度を上げることを快感に感じるというオタクとしての性癖と、タイBL・アジアBLは、これまた相性がよすぎるのだ。

沼にハマりたての頃、タイBLドラマは和歌のようだと言った事がある。
「去年はこの木が花咲く姿を見たのに」という歌に込められた「今年はあなたが傍にいないことが恋しい」という想いのように、言葉で直接的に説明せずに伝えてくる想いの交歓が、タイBLには多くあるような気がしている。

例えば、My Enginnerではイヤホンを分け合い音楽を聴いていたRamが微笑んだのを見て、Kingは「(この曲が)気に入ったんだな」と言う。それに対して、「チョップ」と応え、窓の外を見るRam。そんなRamの返事に心が揺れるKing。その「チョップ」は、Kingの問いに対してだろうか、それとも…。

そんな余白の解釈考察を深め、アウトプットするのが大好きである。
それが私にとって、ドラマや舞台、ひいては物語を見ることの面白さの重要な要素であり、タイBLドラマにこんなにも深くハマり、前に進めない(進みたくない)理由なのかもしれない。
つまりは、タイBLドラマを足早に見るのは勿体ない。もっと一作品ずつ完全に味わい尽くしたいのだ。

けれどその昇華作業スピードが、文章にせよ、絵にせよ、とても時間がかかり、自分のアウトプット能力、抽象化能力の至らなさを痛感する。
今の私は、あまりにも甘美で最上級の物語のインプットに溺れている状態で、インプットの量に対して、アウトプットのスピードが追いついていない。

どうしてみんな、そんなに演技力があるのだろう。どうしてそんなに雄弁な瞳や仕草をするの。頭の先から爪先まで、全身で相手が好きだと伝えるの。
尊すぎて、ため息と身悶えしかできないところだが、なんとか言語化して昇華したい。自分に落とし込むまで、他のドラマに進みたくない。ちゃんぽんしたくない。となると、なかなか新しいドラマに手を出せない。

また、配信環境の複雑化、細分化によって、このアウトプット作業が思うように進まない現状もある。
例えば、YouTubeで自動翻訳で視聴したOxygenは、現在、WOWOWで字幕が付いて放送されている。そうすると、よりしっかりと解釈する為にはそちらの字幕でも見たい。けれど、お財布の都合上、すぐに契約というわけにもいかないので少し待っている状態である。(個人的に、TELASA見放題か、U-NEXT見放題か、楽天TV購入パックあたりに来てほしい)
消化不良のような状態で正直モヤモヤしている。


【アップデートされる可能性のある解釈】


私は、引き出し型のオタクだと思う。
自分の中で納得するまで落とし込んだら、ラベリングをして引き出しの中にしまう。愛が冷めたわけではなく、また何か新しい事柄が出れば、すぐにその引き出しを開けることができる。そうやって、物語を渡り歩いていく。
しかし、タイBLに関しては、無理にラベリングして仕舞い込む必要は無いかもしれない、と最近思い始めた。
タイBLドラマの解釈は、後に、アップデートする可能性が多いにあるからだ。

まず、配信先によって翻訳家が違えば、得られる情報が増え、解釈も変わる可能性がある。誤訳はさておいても、翻訳は多いほど面白い。
主語が無かったり、言葉に複数の意味があり、組み合わせによって言葉の意味が変わり、言葉遊びもあるタイ語ならではの面白さは、翻訳する人によって色が出るのだと知った。

例えば、SOTUSでコングの告白を聞いてしまったピアティが翌朝、「(コングポップは)いつも通りかよ」という訳と、「(動揺するな)いつも通りだ」という訳。
先程のMyEngineerのKingの「(この曲が)気に入ったんだな」にタイするRamの「チョップ」も有志の方がつけてくださった翻訳は「好きですよ」で、衛星劇場版は「はい」だ。
その台詞の後のピアティの顔や、Kingの顔を思うと、有志の方がつけてくださった訳の方がしっくりきて好きだが、言葉の捉え方として、なるほどと思う。(2gether JFCさんの「労働にはNO、おっぱいにはYESだ」なども、Tineらしくて好きな翻訳)
台湾BLの「永遠の一位」も、字幕が読みやすいのは楽天TV版だが、WeTV版の方が、言葉の情報量が多く感じる。

(簡単な単語を聞き取れるようになった今は、字幕の奥に、別の言葉のニュアンスを感じたりして面白い。直で理解できたら、どんなに楽しいだろう)

こういった翻訳の妙というか、おや?ということは、古典文学の翻訳版でもよく感じる事柄で、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」などは翻訳者と翻訳された時代によって(特に男女の関係性において)様子がだいぶ異なるので、いくつか読み比べたこともある。

このように、複数の翻訳を見ることで、好みとは別に、解釈がより深まる可能性は多いにある
また、原作や監督のコメント、俳優のインタビュー、カットされたシーンなどから余白の解釈が、後に深まっていくこともある。

ドラマが終わったら終わり、ではないのがタイBL。
Still 2getherで、2getherの解釈が深まったことを考えれば、2gether Movieで見ることのできるSarawat視点で更に、「2gether」の解釈の幅は増え、解像度が上がるだろう。いつまでも解像度は上がり続けるのかもしれない。

【まだ解釈を深めたい自分と、新しいドラマを見たい自分との妥協策】


そして何よりも、製作サイドの「意図」や原作はあっても、ドラマの受け取り方の「正解」「絶対」は無いのではないかとも思う。
個人的解釈であることを前提に、こうじゃないか、あぁじゃないかと話をしたり、文字を起こすことに楽しさと拡がりがあって、そこに必要以上に「正解」を求めて、間違い探しをする必要は無いのではないかと思った。
だって、こんなに余白があり、俳優のアドリブがあり、字幕解釈も複数生まれるのだから。
解釈度100%を求めすぎて動けず、見たいドラマが見れなくなっているのは、なんとも勿体無い。フレッシュな初見感想だけメモしたら、後は躍起にならずに、ゆっくり解釈を深めていけばいい、というスタイルを取った方がいいなと、ようやく感じてきている。

それでも、「でも…まだ次のドラマに進みたくない…」という躊躇する私と「早く、次のを見たい…!」という焦燥感のある私の折り合いがつかないので、以下のようにタスク整理をしてみた。(急に仕事感)

・いつまでにどの作品を見ようか計画を立てる。(GMM展までに、四天王ドラマは見ておきたい、など)
・レンタルよりも見放題作品を優先視聴する(見放題に来ることを強く祈りながら)
・ながら見などではなく、集中してドラマを見て、初見の感想を1話毎にアウトプットしておく。(正解・不正解考えない)
・全話見ての初見のアウトプットをする(正解不正解考えない。後でアプデする可能性があるから)
・中の人を追いかけることに、躍起にならない(網羅は無茶である)
・その都度、その都度、解釈は深まっていくものだと考える(ずっと煮詰めない)

ラベリングをすることに躍起になると、マイエンのように本を出すまで納得いかないなどということになりかねない。その間、動かざること6ヶ月。(原作も読めていない以上、それでも完全昇華感はない)

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まずは、「後で見るリスト」を書き出してみた。きっとこれからも、後で見るリストは増えていくだろう。けれどそれは、なんと幸せで贅沢な悩みだろう。楽しみが約束されている。
タイ沼に来てから一年になろうとしている。今年のGWも私の職場は長期休みが決定している。悠々自適な大富豪ではないが、視聴チャンスだ。
贅沢な悩みを感じるほど幸せなタイ沼で、なんとか呼吸をしながらドラマを楽しむように、していきたいと思う。

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