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子どものための小さな文学フェスティバル|Un Ponte di storie

10月の最初の週末は、山間の街、ソンドリオから車で15分ほどの小さな村、Ponte in Valtellina(人口約2250人?!)で行われた、Un Ponte di storieという子どものための小さな文学フェスティバルに参加しました。今年で3回目となるこのフェスティバル、もともとは5月に予定されていましたが、コロナさんの影響で10月に延期となっての開催となりました。

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メインビジュアルのイラストは、なんと、我が家のおじさん。「Identità in viaggio(旅するアイデンティティ、とでも訳しましょうか)」というテーマで開催されたフェスティバルで、アーティストとしての活動を大々的に紹介してもらえた今回。4日間の期間中、展示・ワークショップ・トーク・公演とひっぱりだこ。様々な分野でのダリオ・モレッティの活動を深く理解してくれているディレクターがいるからこそ実現した、大変ありがたい機会でした。

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子ども達が作家さん達と出会い、絵本や本、アートに親しむ体験をするために、とPonte in Valtellinaで生まれ育った4人の女性(子ども向け演劇や本などに詳しいジャーナリスト|村の議員さん|市の文化課で他のイベントのコーディネーターをしていた方|教育委員会のコーディネーター)が、それぞれの強みを生かしながら、運営しているこのフェスティバル。手作り感たっぷりで、参加しているアーティストもみな、互いにとても協力的。とてもいい雰囲気でした。

また、イタリア各地で、学校の体制が非常に閉鎖的で難しい時期でもありながら、アーティストを学校に受け入ることも、子ども達を外に連れ出すことも厭わない、小さな村ならではの臨機応変の対応が感じられました。

そんな村の、子ども達とのワークショップ『うつくしいまち』で生まれた、二枚の絵がこちらです。

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↑ 6歳以上対象で6名で描かれた縦長の一枚。絵を描くときは、それぞれ紙の周りにいるので、上に伸びていく町を想像しながら描いていくのはちょっと不思議な体験だったかもしれません。そして、出来上がり、にょきにょきと上に建物が向かっていく様子を見ると、彼らが住む、Ponte in Valtellinaに通じるようにも感じられます。

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↑ こちらは、日曜日のお昼下がり、3歳から6歳の子ども達が集まって描いた町。所々、インクがこぼれたり、豪快に塗ってあったり、とってもシュールで抽象的で、宇宙的な、愛嬌のある町です。

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こうして、父が仕事をしている間、土日は娘も色々なワークショップに参加していました。文学フェスティバル、とはいえ、単純に本を読む・読み聞かせのような企画は少なく、挿画をしているアーティストやデザイナー、本を作品にするだけなく様々な媒体を使用するアーティスト、ジャーナリスト、環境活動家など、幅広いジャンルの講師が集結しています。

一つ目は、Daniele Catalli さんの、「本の表紙を作ろう」ワークショップ。

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自分の好きな本を選んで、表紙・背表紙・裏表紙を作るというもの。参加者が少なかったこともあってか、割と個々で黙々と作業をする感じ… 普段の筆箱じゃなくて、彼が持ってきていたいろんな画材でやらせてもらえたらもっと楽しかったかもしれない… と母は思ったりもしましたが、割と無口な禅僧のような風貌のデザイナーさんと時間を共にすること自体が、不思議な体験だったかもしれません。(そしてこの本はけして子ども向けではない、、と思うけれど、タイトルが気に入ったのだろうなぁ)

そのまま次のワークショップへ駆け込み。講師同士で食事をしている間に、色々気になるネタを披露してくれていた、子ども・ティーン向けの科学ジャーナリスト、Andrea Vicoさんの「みんな科学博士!」というワークショップへ。イタリアのNHK的な放送局、RAIの番組ナビゲーターなどもされていたこともあり、話術が巧みで掴みがブラボーなおじさんです。

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最初は室内で身近な素材を使って色々な実験を見せてくれたそうですが、最後は、応用編で、水と自転車用の空気入れ、ペットボトルでミサイル発射!

この現象はどうやって起きるのか?なぜ可能なのか?ということを、熱く、子ども達にも分かりやすい言葉で伝えられる人にはなかなか出会わないので、とても貴重な体験でした。

面白かったーーー!

と、終わった後は興奮して坂道を駆け下っていった娘。

このアンドレアさんが主宰するサマーキャンプが毎年ピエモンテであるようで、来年の夏はこのキャンプに行ってみよう!なんて、今からワクワク楽しみにすることができたのも、大きな収穫です。

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翌日は、マルコ・ポーロの冒険をテーマに、中国の歴史と現在に思いを馳せるワークショップ。講師は、Gabriele Pinoさん。彼はどうやらマッピングを取り入れた手法でイラストを描いているようで、Rai Gulp(NHK教育放送とかBS的な枠組み)のこの番組に出ていたり

旅するイラストレーター、的な肩書きで、旅と各地の不思議な想像の生き物を探すことが彼のライフワークにあるようです。

そんなわけで、ガブリエレさんが出した、いくつかのお題から、娘は「ドラゴン」を選んで、まずは言葉でマッピング。実際に娘が辿ったプロセスを見ると、旅とマッピングとイラストが重なるのは面白い視点だなぁとこれまた感心。

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ドラゴンから出てきた5つの言葉は

再生・繁殖
知恵・叡智
太古
忠誠・厳格

でした。なるほど。こういう言葉が並ぶとは!ちょうど学校でもイタリア語で「描写する」ことを学んでいて、ある題材から思いつくアイデアを書き出して、最終的に一つのテキストとしてまとめる宿題をしているところで、役に立つ…!

そこから生まれたのは、イラストと、言葉を少し使って説明している、こんな「ドラゴンの町」。

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自分で決めた5つの言葉と、この地図とどのように関係しているのかを彼女の口から聞くことができました。絵の出来上がりの良し悪しを求められていたわけではなく、言葉とイラストを結びつけて、自分なりの世界観を生み出す作業にじっくり取り組んだことが分かり、母にとっても嬉しい体験でした。

そして、フェスティバルのフィナーレは、子どもも大人も大興奮!の

宝探しゲーム!

です。先述の科学博士、アンドレアさんの先導のもと、街中のありとあらゆるところを舞台に行われたようです。チーム参加で地元の子ではないので難しいかなと思ったものの、他のワークショップで一緒だった子と同じチームに入れてもらって参加。そして、サイエンス・ワークショップに参加したことも功を奏したのか、最後の結果発表では

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第二位!!!

と大健闘したチームだったそうです。あら!

賞品は、どこかお店の商品券だったようですが、使えないだろうと配慮して下さり、代わりにアンドレアさんの本をもらったようで喜んでいました。

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環境問題についての本、現在絶賛トイレでの読書タイムに携行されています。笑

普段なかなか文字だらけの本に食指が動かなかった彼女が、こうして作家さん達に生で出会い、魅了され、彼らの本が自然に読みたくなる。これは、何ものにも替えがたい貴重な体験でした。

こうして、父も母も娘も、戻りたい場所が一つ増え、今回出会ったアーティストたちに、娘と一緒に旅を続けながら、また違う場所で、再会したいものだなぁと願うばかりです。


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