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何てことない忍ぶの日常〜彼らの受難〜

最近忍ぶは、毎日恋人の小池くんのことばかり考えている。
というのも、小池くんはこの春から、長い学生生活に終止符を打ち、地元に帰って就職したのだ。
つまり、春から忍ぶたちは、東京とふたりの地元の、遠距離恋愛をしている。

小池くんの顔、忘れそうだよ。と忍ぶは思う。まだ、離れて3週間と経たないのに、忍ぶは小池くんのいない日常が退屈で退屈でしょうがない。常に小池くんのことを考えている。
小池くんのつんとした鼻を思い出したり、けむくじゃらのおヘソを思い出したり、長い睫毛を思い出したりするたびに、忍ぶは会いたくて会いたくてたまらない気持ちになる。

仕事の帰り道、アパートの外から自分の部屋に電気がついてることに気づき、急いで階段を駆け上がることも、酔っ払った小池くんが朝方、来ちゃった、と言って忍ぶの布団に潜り込むこともなくなってしまった。

一番つらいのは、どうでもいいことで笑い合える人がいなくなってしまったことだ。
夜中の3時に近隣の住民が猫を巡って争っていたとか、職場の本田さんの可笑しな言動とか、そういう些細な、でも楽しいことを話す相手がいなくなってしまった。
そして忍ぶと小池くんの、ふたりの1番気が合うところは、どんなにくだらないこともふたりの中で特別な会話として笑いあえることなのだ。

そんなこんなで、忍ぶは毎日ぼおっとしている。仕事のあと小池くんに会うこともないし、週末の予定もないので毎日ぜんぜん楽しくない。女友達に会っても、ずうっと小池くんのことを考えてしまう。
さて、これからふたりはどうなるのか。受難である。

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