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フライヤーアーティスト・END氏インタビュー"人の繋がり"

今回は東京都を拠点に活動するアーティストであり、渋谷に店舗を構えるアパレルSHOP"GReeD TOKYO"のオーナー、そしてアパレルブランド"OLDX"を手掛けるなど様々な顔を持つ、現在の東京ストリートシーンの中でも重要人物の1人・END氏のインタビューです。
活動当初から横の繋がりを大切にし、ブレることなくキャリアを積み重ねてきたそのルーツ、歴史、考え方などについてお話を伺ってきました!
KONER GALLERY(以下 KG)生まれはどちらになりますか?
END(以下 E)生まれは東京です。
KG ENDという名前の由来はなんですか?
E 実は本名に関係していて"END"にしたんです。あとは"START FROM END"っていう屋号的な言葉で活動してるんですけど、それも好きな言葉で"ゼロから1に"、白紙に自分で描いて作品にしていくっていう。終わりから始まるみたいなポジティブな意味もあります。ネガティブは基本嫌いなんですよ。あとはENDって名前自体が短いし、海外の人にも覚えてもらいやすいと思っていたんです。
KG 確かに!それはありますね。小さい頃はどんな子供だったんですか?

前列の右から2番目がEND氏の少年時代

E 幼稚園からサッカー養成所的な幼稚園に行ってて、サッカー少年でしたね。
KG それはご両親に入れられた感じなんですか?
E 覚えてはないんですが地元の幼稚園がそこで。でも親父もお袋も何かスポーツをやらせたいと思ってたんだと思います。それから学生時代はずっとサッカーやってましたね。
KG アルバイトとかはしてました?
E 結構色々やってました。イタリアンレストランが最初で、それからレンタルビデオ屋さん、土方、解体業者。あとは新宿の回転飲茶屋という謎のお店でもバイトしたりしてましたね。新宿アルタの中のUSおもちゃ屋が1番しっくりきて長かったような。
KG 結構やってたんですね!意外な職種でした。絵やストリートカルチャーに触れるきっかけは何だったんですか?
E 今思えば幼稚園の頃からずっと絵が好きでスーパーマリオとかキン肉マンとかのキャラクターを描いて、それをプラ板にして遊んでました。そこから中高生の時はスケボーが流行ってたり、ヒップホップ、メタル、パンク、古着とかとにかく色んなカルチャーが流行ってた時代だったから、先輩に色々聞きながら仲間と一緒に遊んでました。
でも実際、ちゃんと絵を描き始めたのは20代に洋服屋で働いてた時からになりますね。

写真右が20代の頃のEND氏

KG それはいつ頃ですか?
E 最初は20歳の頃、先輩が始めたストリートブランドでお世話になっていました。その中でドメスティックブランドの在り方や周りのアーティストや知り合いと出会いストリートカルチャーの真ん中へ突入していった感じです。
KG では、音楽カルチャーなどもその頃からハマっていったんでしょうか?
E はい、学生時代にも聞いてたけど、本格的にシーンにのめり込んでいったのは高校を出てからですかねぇ。
KG 洋服屋の方はどのくらいやられてたんですか?
E 大体10年くらいですね。さっきも少し話したんですが、初めは事務所で仕事していて、途中から渋谷の方にお店を出すってことで、そこでマネージメントをやりながら自分のブランドをやらせてもらったりしてました。

20代の頃に勤めていたSHOP時代のEND氏

KG それは現在やられてる"OLDX"のことですか?
E いや、OLDXとは全然関係無い違うブランドでした。
KG フライヤーを描き始めたのもその頃くらいなんですか?
E 当時から絵は描いてたんですけど、フライヤーは描いてなかったんですよ。その頃は洋服屋で働きながらライブ行ったり、バンドやってる先輩や友達と遊んだりっていう感じで。envyの初期ドラムだったカトウさんやノーチョイ(No Choice In This Matter)のメンバーの人にはよく遊んでもらってましたよ。
KG なるほど、では絵の方は趣味程度って感じだったんですか?
E 完全に趣味ですね。描いても誰にも見せてなかったです。何か恥ずかしくて・・・(笑)
KG ちなみにどんな絵を描いてたんですか?
E よくわからないあぶない絵を描いてましたね(笑)なんだこれ?みたいな(笑)
KG (笑)今のテイストとは全然違う感じですか?
E 今と全然違ってました。ホントに謎なものを描いてました。でもそれはそれで良い経験ですよね。
KG 意外ですね!そんな時代もあったなんて。
E 何でも好きでした。グラフィティライターをやってる人もその時代は自分の周りにいっぱいいたんで、そんな雰囲気を真似てオリジナルのロゴ描いてみたり、そんなこともしてましたけど、基本的には謎の絵(笑)人とかキャラじゃなくてもっと抽象的な絵が多かったです。模様とか、あり得ない世界の風景とか。

当時製作された作品達

KG そこから今のアーティスト活動に変わるきっかけがあったんですか?
E 完全にターニングポイントはありましたね!当時からNUMBのギターのナツオくんとこまめに遊ぶようになってたんですけど、ナツオくんやNUMBのメンバーは音楽だけじゃなくてジャケやフライヤーのアートワークとかも大好きで"このフライヤーヤバいよね"みたいな話を当時からしてもらったりしてて。
2006年くらいですかね、当時は東京で手描きのフライヤーを描いてる人がかなり少なくて、ジャパニーズハードコアパンクのシーンには昔から描いてる人はいたんですけど、ニュースクール、オールドスクールのハードコアシーンはパソコンでフライヤー作るのが主流の時代だったんですよね。
それでナツオくんに"やっぱりあえて手描きのフライヤーが良いんじゃない?"って言ってもらって。
KG あー今思えば確かに当時はみんなパソコンでしたね!
E パソコンで作るのが新しくてイケてるって時代でしたからね。ちょうどパソコンが普及してきた時で、洋服のデザインもカッコいいグラフィックデザインが増えてきてましたし。そんな中で手書きの生々しいハードコアの世界観を表現した方が絶対いいっていうことはナツオくんもよく言ってて。
それで2007年に新宿ANTIKNOCKでNUMBが初めてワンマンショーをやるタイミングでフライヤーを描かせてもらったんですよね。AGNOSTIC FRONTのリップオフデザインで。日付とかの文字まで全部手書きのスタイルで描きあげたら周りの反応がすごい良かったんですね。

NUMB初のワンマンショーのフライヤー

KG きっとそれが斬新に見えたんですよね!
E そうなんだと思います。手描きのフライヤー自体は昔からあるものなんだけど、当時は周りにいなかったから逆にグッと入ってきたものがあったんじゃないんですかね。
KG なるほど、それがきっかけだったんですね。
E それからNUMBやETERNAL Bとか周りのフライヤーをよく描くようになって、東京はライブも多くて、毎週末どこかで何かやってるんで、自然と描くことが増えて気づいたら今みたいになってました。

END氏が手掛けたニューヨークハードコアのレジェンド・AGNOSTIC FRONT、GORILLA BISCUITSのジャパンツアーのフライヤー

KG 確かBRAHMANのフライヤーも描かれてますよね?それはどういった経緯があったんですか?

E 当時だんだん自分がフライヤーを描いてるってのが周りにも認知され始めた頃で、自分の過去の作品をまとめたポートフォリオを常に持ち歩いてたんですよ。日々誰かに見せる用として、ライブハウスで紹介してもらった人とかに見せたりしてたんですよね。
それでちょうどブランドやバンドの先輩達と話してるところにTOSHI-LOWくん(BRAHMAN)もいて、その流れで作品を見せたら気に入ってもらえたみたいで、それからすぐにBRAHMANのツアーフライヤーの話をもらって。いきなりで嬉しかった反面ちょっと戸惑ってたんですけど。
KG それはなぜですか?
E 自分は当時からアンダーグラウンドのローカルバンド周りの繋がりを大事にしてたんですけど、BRAHMANはその時からアンダーグラウンドでありながらオーバーグラウンドな存在で、すでに認知度もあったし。自分のスタンスであるお互いにフックアップするというところからズレていかないように意識しましたね。のっかり的なことに自分がならないか考えたりしてました。最初は色々話し合って、実際にライブにも足を運んでイメージを沸かせたりする中で、やっぱり真面目に何かに向き合ってる人には心打たれるものがあるし、改めて一緒にやりたいなぁと素直に思えました。
KG 単純に依頼されたから描くのとは違うんですね。お互いの意思疎通が大切というか。
E そうです!お互いのリスペクトが無いと基本的には描かないですね。まぁギャラが1000万円とか言われたら言われた瞬間から食い気味に描いちゃうかもしれないですけど(笑)そんなこと実際ないんですけどね(笑)
でもフライヤーに関してはそんな感じです。
知り合いじゃないと信用できないタイプです。
KG なるほど!お金よりも気持ちを大切にするというスタンスですね。
E はい、情熱が大切ですね。だってお金持ちの文化ではないじゃないですか。ハードコアとかパンクって。お互いの世界観が好きで集まって作られたカルチャー、それがカッコイイというか。俺はそれが好きなので。こう言ったカルチャーはやはり情熱が先行で後からアーティストに対してのリスペクトとして対価が生まれていくんです。それが物品であったりギャラであったりと。まあ気持ちの問題ですよね。やっぱり必ずウィンウィンな関係が良いですよ。相手も描いてもらってプラスになって、自分もそれを描けてプラスになっていないとね。
KG 確かに。間違いないです。ではその中で影響受けたアーティストはいますか?
E Agnostic FrontとかGorilla BiscuitsとかNYHCのアートワークを手掛けてる人達には影響受けたましたね。有名なとこで言うとショーン・タガートとか。あと、日本でいうとTOMさん。キャラなどを必ず描いてて世界観や抜きの美学がうまく描き込まれてる感じが好きですね。

ショーン•タガート氏によるAGNOSTIC FROTのアートワーク

2015年に開催されたHC FIYER EXHIBITIONのフライヤー

では作家活動で初めて個展を開催したのはいつですか?
E 確か2012年です。あ、でもそれは2人展でしたね。BRAHMANのアートワークをずっとやってるUZIIIくんと。
それで初めてバンドのアートワークを見せるっていうことをやりました。その時は売るっていうより見せるっていう感じで。

UZIII氏(左)とEND氏(右)

KG そこから作品展示活動が始まったんですね。
E そうですね。でも細かい絵で時間も掛かるんで、作品がたまってきてそろそろだなっていう時にやるって感じです。

初個展(2015年)

KG ENDさんはフライヤーなどのアートワークとは別で、より繊細な作品を製作する漢字の"円度"という名前で2つの顔を持ってますよね。
E はい、作品も全然違いますからね。日本人らしい繊細な作品が漢字の"円度"で、それはまた違う場所で展示をしていて2017年にはGARNIっていう先輩のシルバーアクセサリーのお店で展示をやらせてもらったり、その前は代々木上原のELNESTっていう俳優の井浦新くんのやってるお店でやらせてもらって。普段のバンド界隈のお客さんももちろんですけどそっちの方はお客さんの層も普段と違って幅が一気に広がるんですよ。反応ももちろん違うから自分も勉強になります。

KG 普段のストリートな感じとは全然違うんですね。
E バンドの友達とかも好きな人は全然来てくれて、それに+@で新しい層の人って感じです。
KG なるほど!とても良い傾向ですね!ではGReeD TOKYOさんについてお聞きします。お店を始めるに至った経緯は何だったんですか?
E これは話すと少し長くなってしまうんですけど。元々GReeDは奈良の会社で、社長の平山くんはたまたまRULERの展示会で会って以来仲良くさせてもらってて、それでGReeDに入らないかって言う話をもらって絵を描いたりパソコン作業をやったりして手伝ってたんですけど、7〜8年前に平山くんとH8Mongerさんが一緒にGReeD TOKYOを出すからENDくんのアトリエにもなるし、お店立ってくれないかっていうことになったのがきっかけです。それが宇田川町のGReeD TOKYOなんですけど、もっとさかのぼって2010年頃にも渋谷パルコでもGReeD TOKYOをやってたんですよね。
KG あ、覚えてます!期間限定でしたよね?
E そうです!自分はお手伝いとかで遊び行ったりしてて、あの時はハプニングだらけでしたね(笑)まぁ面白かったんですけど(笑)
KG ハプニングですか?(笑)
E 渋谷パルコから皆んなよく怒られてましたね(笑)
KG なるほど(笑)
E だから自分的にはGReeD TOKYO自体は結構前から渋谷にあったんです。それから自分が今の場所でやらせてもらい、それで何年か前から自身がオーナーに代わり再度新しく始めたという流れです。
今は自分のお店としてブランドやったり、アート展やったり空間を作ってるって感じです。

KG ではご自身のブランドOLDXについて教えてください。いつ頃からやられてますか?
E 7年前くらいに元々GReeD TOKYOでやるっていうことで始めたんですけど、その時はTシャツとか自分達が着るような軽いものを作ってて。それからずっと続けていくうちにちょっとずつ定着してきて、ゆる〜く規模がデカ過ぎず小さ過ぎず自分の見える範囲で商品を展開してる感じです。

KG ブランド名の由来は何かあるんでしょうか?
E ほぼ響きとか感覚で短い名前にしたんですけど、自分は絵も描いてて昔のモノを今の時代にっていう思いがあって、自分が過去に見てきたものや経験してきたもの、知恵とか感覚を新しく今の時代に出していきたいっていうのが"OLD(古いもの)"で、"X"は謎のXっていう意味で組み合わせた造語が"OLDX"ですかね。古き良きものを今の時代へって意味です。
KG なるほど!そういった意味があったんですね!ちなみに普段はお店の経営しながら作家活動、ブランド運営など色々やられてますが、どんな生活スタイルで1日を過ごされてますか?
E 午前中から動いてますね。だいたい9時くらいから、絵を描いたり、お店の事務作業とかを全部終わらせて、昼からはお客さんと話すだけみたいにして、家帰ってからまた絵を描いてっていう。
KG だいたい何時くらいに寝てますか?
E 2時3時くらいです。
KG あんまり寝てないんですね!
E でも疲れて早く寝ちゃう時もありますよ。やっぱり睡眠も大事ですから。
KG 色々やられて忙しいかと思うんですが、それを感じさせないポジティブなところもENDさんも魅力だと僕は感じてますね!
E でも元々そういう性格なんです。若い時は血迷って様子おかしい時とかあったかもしれないんですけど(笑)
KG そうなんですね(笑)何か息抜きとか、気分転換でされてることとかあるんですか?
E 最近は40代半ばになってきて肉体的な疲れが出るようになったから、嫁さんと銭湯に行って疲れを取るのがマイブームです。
KG あと、最近K-POPにもハマってますよね?
E はい(笑)去年コロナ禍でめちゃくちゃハマったんですよ。K-POPはみんなすごい上手いですよね。ダンスも歌も。アイドルっていうよりはアーティストって感じで。知るのはめっちゃ最近で遅かったんですけど、ハマって聴きまくって気づいたらYoutubeのオススメがTWICEばっかになってて何だこれ?みたいな(笑)
安室ちゃんとかスピードとかマックスみたいなガールズグループがまた時代を掻き回してほしいです。
NIZIUは応援してます。親目線ですけど(笑)
KG なるほど(笑)では海外繋がりで今まで行ったことのある国を教えてください。
E スペイン、イギリス、韓国くらいですね。

KG 海外どうですか?
E やっぱりどこ行っても面白いですよね。結婚してから1年に1回は海外行こうって思ってます。去年はメキシコに行く予定だったのがコロナで行けなかったんですけど。あと、自分的にはヨーロッパが好きなんですよね。
KG 確かに!歴史もありますからね。
E そう、歴史があるんですよね。海外に来たって感じもしますし。
KG 確かにそれを肌で感じられるのは大きいですよね。
E やっぱり記憶、経験、知識とかって財産にもなるし、人生においてマイナスになるってことはないんで、自分の絵に活きてくるものだと思ってます。それは国内旅行でも同じなんですけどね。感覚とか、見てきたものは表現する人にとっては影響すると思います。
KG それはありそうですね!潜在意識というか。
E そうですね。自分の中の引き出しとか。それは経験から来るものだと思うし、無知ほど怖いモノはないですからね。
KG 絵でもなんでも、何かしら知識がないと出来ないですもんね。
E 出来ないですね。でも絵は基本的に自由だと思ってて、プロとアマで上手い下手とかはありますけど、それぞれの価値観で良いと思ってます。
KG それはありますよね。では今後について伺いたいと思います。これからやっていきたいこととかありますか?
E ホントは2020年に個展をやろうと思ってたんですけど、コロナのこともあって自分的にも気分が上がらなかったんで、今年もしくは来年中にはやりたいです。他の県とか、みんなが自由に行き来できるような環境になったらですね。場所はGReeD TOKYOになるか他のとこになるか分からないですけど、今の時代に合ったネットを使った販売とかもやりながら、上手く伝えていける新しいカタチを構築したいですね。でも、基本的には現場っていうのは不可欠だと思ってますから、そこは大事にしたいです。現場があるから、WEBも活きますしね。
KG 臨機応変に変えていくのが大切ですよね。ちょっと話がズレるかもしれませんが、ENDさんと話すと毎回色々な情報というか、僕にとって新しい発見とか、勉強になる部分が多いです!それはENDさんが色んな人とか接してるからですかね?
E そうですね!でもそれは多分洋服屋やって、絵を描いたりする中で必要な情報だから、必然的に自分で集めてると思います。より良い活動が出来る為に。勉強というか。
KG 素晴らしいですね!キャリアを重ねる中で学ぶ姿勢が薄れていく人もいると思うんですが、常に吸収しようとしてるところがすごく尊敬できます。
E オレらにしか分からない30代、40代、50代の感覚があるように、10代、20代の感覚っていうのがあるから、みんなが楽しんでもらえるように考えるようにしてます。
KG なるほど!勉強になります。ではこれからの時代、ENDさんはどのように生きていこうと考えていますか?
E 元号も変わったし、新しい時代が来て今までの常識がどんどん変わっていくんで、それを先読みしつつ、今までのスタンスをキープしながら新しいことに挑戦していきたいなぁと思ってます。風の時代と共に変化をプラスに考えていきたいですね。
あとはひたすら毎日絵を描きたいです。
絵が大好きなんで。

END instagram @endflyer
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