【レポートの書き方講座】 #3 もっと便利に使いこなそう!【無料で読めます】

 さて,$${\LaTeX}$$での文書作成には慣れてきたでしょうか?
「いちいちコマンドを書くのがダルい」という声が聞こえてきそうです笑
今回は自分流にコマンドをアレンジして作業効率をあげる方法について紹介します.

パッケージの追加方法

 その前に,パッケージの追加について学びましょう!
 前々回の課題で「$${\therefore}$$」という記号はまだ打たなくていいよ,という話をしたと思いますが,実はプリアンブルに以下を追加すると書けるようになります

\usepackage{amsmath,amssymb}

「use package」という言葉の意味でなんとなくわかるかも知れませんが,「amsmathやamssymbといった『便利グッズ詰め合わせセット』のようなものを,このtexファイルで使わせていただきますよ」という意味です.amsmathやamssymbは数式を扱う際には必ず追加しておくべきパッケージですので,毎回書いてください!

マクロを使って作業を効率化!

さて,それでは早速「自分流にコマンドをアレンジして作業効率をあげる方法」,マクロについて学んでいきます!
例えばこんな数式があったとしましょう.覚えてますかー?単振動の公式ですよー?(加速度は変位の2階微分です.覚えておきましょう)

$$
\displaystyle
m\frac{\mathrm{d}^2x}{\mathrm{d}t^2} =  - \omega ^2 x             (1)
$$

この数式の中身はこのようになっています.

\begin{equation}
m\frac{\mathrm{d}^2x}{\mathrm{d}t^2} =  - \omega ^2 x
\label{tanshindo}
\end{equation}

実は物理では「微分のdは斜体$${d}$$ではなくローマン体$${\mathrm{d}}$$にする」という記法のルールがありますので,今回のように「\mathrm(MATH RoMan の略)」というコマンドを使って書く必要があります.これは何度も書いているとかなりダルいですよね.そもそも,\begin{equation}…\end{equation}も毎度毎度書いていると結構ダルいです.こんなときは,次の\newcommandを使います.

\newcommand{つくりたいコマンド}[変数の数]{コマンドの意味}

 突然こんなこと言われても何が言いたいのかわからないと思うので,ひとつ例を使って考えてみましょう.
 例えば先ほどの微分記号の場合,$${\displaystyle \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}}$$と書きたいときもあるでしょうし,$${\displaystyle \frac{\mathrm{d}x}{\mathrm{d}t}}$$と書きたいときもあります.なので,「d」以外の文字は容易に変更できるようにすることが望ましいです.よって,次のように\rmdコマンドを定義し,プリアンブルに書いておきます.

\newcommand{\rmd}[2]{\frac{\mathrm{d}#1}{\mathrm{d}#2}}

#の後がNote側に「コメントアウト」として認識されてしまっているので薄字になっていますが,#以降もコマンドの一部なので書いてくださいね!

このように,変数として使用したい部分には「#1」「#2」と入れておくことで,実際にコマンドを使用するときにその部分を変数として使うことができます.例えば,いまつくった\rmdコマンドを使用して$${\displaystyle \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}}$$と書くのなら,

\rmd{x}{y}

これだけで済みます.超絶楽になりましたね!
同じように2階微分のバージョンも作ってみましょう!

\newcommand{\rmdd}[2]{\frac{\mathrm{d}^2#1}{\mathrm{d}#2^2}}


数式もこんな感じのコマンドで簡単に作れるように,マクロを組んでみましょう!

\eq{数式}{ラベル名}

私がつくったマクロはこんな感じです.

\newcommand{\eq}[2]{\begin{equation}#1\label{#2}\end{equation}}

すると,今まで

\begin{equation}
m\frac{\mathrm{d}^2x}{\mathrm{d}t^2} =  - \omega ^2 x
\label{tanshindo}
\end{equation}

と書いていたものが

\eq{
m\rmdd{x}{t} = -\omega^2 x
}{tanshindo}

と書くことができます!!

変数の数が0個の場合は,変数の数は記述しなくて大丈夫です.例えば毎度\displaystyleと書くのが面倒なので,\dsというコマンドで代替することにすると,

\newcommand{\ds}{\displaystyle}

とだけ書いておけばよい,ということになります.

 さて,もう少しで$${\LaTeX}$$の基本的な書き方をマスターできますよ!
あと学ぶべきはこれだけです!

  • 画像の挿入方法

  • 表の書き方

  • 箇条書きの書き方(次回)

画像の挿入

ではまずは画像の挿入方法から!
画像を挿入するには,プリアンブルに以下を記述します

\usepackage{graphicx}

論文調の画像の挿入方法は次のようにします.これはもう定型文だと思ってください.

\begin{figure}[htbp]
\centering
\includegraphics[scale=大きさ]{画像のファイル名}
\label{画像のラベル}
\caption{画像のタイトル}
\end{figure}

\begin{figure}〜\end{figure}は「ここは画像の環境ですよ」というのを表します.某人気漫画で言うところの領域展開みたいな感じです.実際に画像を挿入するときは,「\includegraphics」というコマンドを使います.

$${\LaTeX}$$では,画像の場所は基本的に$${\LaTeX}$$くんが決めるので,予め「ここに置いてくれると嬉しいなぁ」というお願いを$${\LaTeX}$$くんに言っておく必要があります.\begin{figure}の後にある「htbp」は「ここ(h=here)か,もし無理ならこのページの上方(t=top),それも無理なら下方(b=bottom),それも無理なら最後のページ(p=page)に画像を貼り付けてね」という意味で,hのみ,tのみなどの指定もできます.ただ$${\LaTeX}$$くんがこのお願いを聞き入れてくれることは少ないので,もし「絶対ここに置いてほしい!!!!!!」という強い希望があれば,プリアンブルに

\usepackage{here}

を打ち込んだ上で,htbpの代わりに「H」とだけ書いてください.

scaleに$${x}$$を入れると,元の画像の大きさを1としたときの$${x}$$倍の大きさで表示されます.他にもscaleの代わりに「width=10cm」と指定すれば横幅10cmで表示できますし,「width=\linewidth」とすれば文章と同じ幅の画像サイズに出来ます.widthと一緒にheightを指定すれば縦横比を変えることも出来ます.私は単位を書かなくていいというなんとも体たらくな理由でscaleが好きですが,好みに応じて使い分けてください!

画像を置く場所は,そのtexファイルが置かれている場所にしてください.もし画像を一つのフォルダ「pictures」にまとめたい場合は,プリアンブルに

\graphicspath{{pictures/}}

と書いた上で,先ほどと同じように書いてください.使える画像はeps,png,jpeg,pdf(pdfの上にpdfって入れられるんですよ!)などですが,基本的にはeps形式が望ましいです.画像変換ソフトなどを用いてepsに変換したものを使用することをおすすめします.

ちなみに,途中にある\centeringというのは,画像をファイルのど真ん中におくためのものです.\labelはわかりますよね?数式のときにも扱った超便利なやつです.絶対入れましょう.

さて,でも画像の挿入のたびにこんなかったるいことを書くのもいやですよねぇ……
そこで,これもコマンド化すると楽ちんです!

\newcommand{\pic}[4]{\begin{figure}[H]\centering\includegraphics[scale=#3]{#4}\caption{#1}\label{#2}\end{figure}}

こうすれば,

\pic{タイトル}{ラベル}{大きさ}{ファイル名}

と書くだけで画像を挿入できます!

表の挿入

次は表です.論文やレポートにおける表の書き方はある程度決まっています.

  1. タイトルは表の上にある.

  2. それぞれの値は「バネ定数$${k\;\mathrm{/\;cm}}$$」のように,名称と記号,そして分数のスラッシュを書いたのちに単位を付記する.

  3. 単位自体に「$${\mathrm{m/s^2}}$$」のように分数が入っている場合には,分数を使わずに「速度$${v\;/\;\mathrm{m\;s^{-2}}}$$」のように書く.この際,スラッシュの前後や,$${\mathrm{m\;s^{-2}}}$$のような組立単位の単位間などには小さなスペースを開けるとすっきりする.

  4. 横線や縦線は余計にひかない.例のように書く.

  5. 合計値や平均値などを表の一番下に書いたりはしない.

  6. 数値の有効数字は合わせる.

もしも横幅のスペースが足りない場合は,このように単位と単位名を分けて書いてもOKです.

Wordだとこのような表を書くには結構いろいろぽちぽちしなければならないのですが,$${\LaTeX}$$ならめちゃくちゃ簡単に書くことができます!先ほどの表は,次のようになっています.

\begin{table}[H]
	\centering
	\caption{$5N$を加えたときのばね定数$k$と伸び$x$の関係}
	\begin{tabular}{cc}
		\hline
		ばね定数$k\;/\;\mathrm{N\;cm^{-1}}$&伸び$x\;/\;\mathrm{cm}$\\
		\hline
		0.10&50\\
		0.20&25\\
		0.30&17\\
		\hline
	\end{tabular}
	\label{ばね}
\end{table}

もう皆さんなら読んだだけで大体の意味がわかってしまうかもしれません.
\begin{table}〜\end{table}は「ここは表の環境ですよ」というのを表します.画像挿入のときにもあった「領域展開」ですね.画像と同じように位置の「お願い」もしておきます.今回は「H」を指定しました(\usepackage{here}はしてくださいね!).

画像とは異なり,\captionが上にありますね.画像や図はタイトルを図の真下に置くのですが,表は真上に置くのでこの位置に書いてあります.

\begin{tabluar}〜\end{tabular}が実際の表の部分です.「{cc}」とありますが,これはそれぞれの列の数値や文字列の位置を表すもので,左寄りにしたければ「l(leftのlです)」,右寄りにしたければ「r(rightのrです)」,真ん中にしたければ「c(centerのcです)」を使って,列の個数だけ並べて書きます.例えば今回の例では,ばね定数を「c」,伸びを「c」で書きたいので「cc」と書いていますが,もしばね定数を「l」で書きたければ「lc」と書きます.
また,もしも縦線が引きたければ,この時点で「|(エルではありませんよ〜,縦棒です!)」を使って区切ってください.例えば先ほどの表を「|c|c|」のように直すと,次のような表が出力されます.

縦線が引かれましたね!
\hlineで横線を引くことができます.無闇矢鱈に引かないように気をつけましょう!
次に単位です.概ね今まで通りですが,スペースをつけるために「\;」というコマンドを用いています.半角スペースよりも小さいスペースを書くことができるので,こういった調整に使ってください!

実は半角スペースはどんなに連続で打ち込んでも1回分しか表示されない,というルールがあるので,スペースはコマンドを駆使する必要があります.そのため,他にもさまざまなスペースがありますので,状況に応じて使い分けましょう!

  • \hspace{1cm}……水平方向に1cmのスペースを空ける(負の数も指定可能)

  • \vspace{1cm}……垂直方向に1cmのスペースを空ける(負の数も指定可能)

  • \quad……1文字分のスペース

  • \qquad……2文字分のスペース

  • \, …….小さなスペース

  • \: ……..\,よりも若干大きめ

  • \; ……..\:よりも若干大きめ

  • \! ……..負のスペース(間が縮まる)

そして次に数値です.数値と数値の間は「&」で区切ることでセルを分けることができます.最後にラベルをつけて終了です.
表も次のようにコマンドを作っておくことをおすすめします.

\newcommand{\tbl}[4]{\begin{table}[H]\centering\caption{#1}\label{#2}\begin{tabular}{#3}#4\end{tabular}\end{table}}

こうすることで,先ほどの表はこんなに簡単につくることができます

\tbl{$5N$を加えたときのばね定数$k$と伸び$x$の関係}{ばね}{ccc}{
\hline
ばね定数$k\;/\;\mathrm{N\;cm^{-1}}$&伸び$x\;/\;\mathrm{cm}$\\
\hline
0.10&50\\
0.20&25\\
0.30&17\\
\hline
}


本日の課題

自分だけのテンプレートを作りましょう.次回からはそのテンプレートを使って書いてみることにします.
その際,documentclassのすぐ下に,次の記述は必ず追加するようにしてください!

\usepackage[top=20truemm, bottom=20truemm, left=10truemm, right=10truemm]{geometry}

これはページの余白を決めるためのものです.20truemmは「20mm」という意味です.
もし余裕があれば,このリンクを読んだ上でなにかグラフをつくり,実際に挿入してみましょう.pdfで挿入すると綺麗な画像になりますよ!!
https://1drv.ms/b/s!Ark3zVRLo_ymiaZvqWs57PmD5kNIxA?e=L0AiBC
次回は箇条書きを学んだ後,実験の授業で誰もが挫折する「不確かさ」について学びたいと思います(本当はもっと早く教えたかったのですが,基礎科学実験Aのテキストがあった方が便利なので教科書販売まで待ってたんですよ……)
不確かさは面倒な概念ではあるものの,一度理解してしまうととてもすっきりしますよ!

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