親父が死んだ日


身近な人
普段からの空気のように感じている、本当は何よりも大切でありがたく、かけがえのない人、存在。
人間はどうして失う時までそれを忘れてしまうんだろう

今まで人生でしてこなかったこと

今日を忘れないために
書き記して残そうと思います。

突然襲いかかったコロナショックの渦中で、生き延びるための対策として両親を生活保護に逃がすことを選択した

それが今からほんの一年足らず前の話です。

コロナ禍の中、例に漏れず客入りは激減し、仕事的には未曾有の暇さに陥ってしまった。
しかし、私自身は今日を生き延び、明日を繋ぐために精神的に追い込まれていた私には寝る間もないほど忙しさを極めた時期だった。

私は、自分の肩の荷物を下ろすために様々なものを船から降ろした
それは、誰でもない自分の選んだ選択だったし、その時のわたしにはそれ以外にはもはや方法が思い浮かばなかった

でも、私は気づいてすらいなかった。。
今までいつも共に生活し、いつしかそれが当たり前となり、むしろ守るべきもの、守らざるを得ないものとまで勘違いしていた両親のその苦しみと辛さを。

一人暮らしを始めることによって、ごちゃごちゃ言われることも減り、むしろ人生楽しくなってくれるのではないか

などとも思ってすらいた。

このほんの僅かな期間にここまで身体が弱るとは想像もせず。 いや、想像する心のゆとりすらなかったのだ。

事が発覚したのは7月30日
いつも通り店でバタバタしていた私に突然、警察から電話が入った。
「お父さんが転んで病院で治療を受けています」

出向いてみると、転んだというにはずいぶんな怪我本人に聞いても「わからない」と

あいもかわらず頼りない返答だな…
と普段の通り、特に気にもせずに数日を家に呼び戻して過ごしました。

しかし、熱が一向に下がらず様子も何か違和感があり、コロナの診断を受けさせることに

だが、今のご時世
その検査までの手続きが長く、ようやくPCR検査を受けさせられたのは8月13日
タクシーや公共車両を使わずにとのことで夏の炎天下を歩いて病院に。
途中何度も休みを取り、様子を見かねて停まってくれたタクシーに乗せてもらい病院へ。

今思えば、あの我慢強い父が休みを要求した苦しさに気づきもしなかった、自分の不明
普段からの肉親への甘えが生んだ慚愧の念をおそらく生涯忘れることはできないだろう

今にして思えば、転んだのではなく気を失って崩れ落ちたのかもしれない。
本人にはわからなくてしかたがなかったのかもしれない。
もちろん憶測でしかないがそう思う。

PCR検査は陽性。
しかし、別の所見が見られる
とのことで、再度検査を受けると同時に検査入院
さまざまな検査の総合的な診断結果は
「肺小細胞がん」

それから、今日11月8日に他界するまで二度と家に帰ることはなかった。

その間に私が面会に行けたのはわずか3回ほど。
最後に面会に行ったのは先々週の日曜日で11月1日。
その日に、この世で初めて父と二人で写真を撮った。
その父の笑顔は本当に天使のような幸せそうな笑顔で。文字通り、私の生涯の宝物となりました。

ほんの40分ほどだけど話もできました。お互いに素直な気持ちで父と子に戻れた貴重な時間でした。

実は私は、面会の前毎月1日の早朝の慣習としている氏神様詣りの時に、氏神様と左手に宿る神様(パワーストーンブレスレット)に祈りました。

回復する見込みのない、ただ死を待つためだけの苦しみが少しでも短く、そして残る人生を安らかに生きられますように、と。

その後の面会の折、父にその左手の神様を渡すと嬉しそうに握りしめ、自分も欲しいと言った。

今、振り返ると、父もまた何かを祈っていたのではないかと思えてなりません。

きっと、願いを叶えてくれたのだと思う。

76年の人生
その中で私と出会って約30年
尽きない話となるので割愛する他ないが

思えば、彼の人生は
大半が痛い思いと、それを引き金にした辛い思いと悲しい思いの人生だったと思う。
ただ、どこまでも優しく、誰よりも真面目に生きた誠実な人だった。
若い私はバカにしたり、生意気で不遜な口を叩いたりしたことももちろんあったが

母を愛し、支えとなり
私の反面なりえるほどの本当は尊敬し続けた紳士だった。

発症してからわずか3ヶ月
(実際にはもっと早くから悪くなり始めていたのかもしれないが)

死を待つためだけの苦しみが長引かず、人として何よりも幸せな人生の終わりだったと思います。
優しく、真面目だけが取り柄で生きた人間に神様が施してくれた最後のご褒美かもしれません。

お父さん。
おつかれさまでした。
一緒に生きてくれてありがとう。
3度訪れた面会時に元気な姿すぎてどうしても伝えられなかった私の気持ち、言葉を今伝えます。
次に生まれて来るときは、今度こそ本当の親子として生まれ変わろうね。
私の父は貴方です。
今度は必ず、この人生よりも親孝行のできる人間になってみせるから。

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