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おにぎり

「ねぇねぇ。なっちゃんママ!
    "いつもの"ってありますか⁈ 私の大好物!」

台所にいると、もうわたしよりも背の高くなった、娘の友だちに声をかけられる。

懐っこくて、それでいてけっこう毒舌…😂
でもどうにも塩梅が絶妙なので、聞いている方は嗜めることもそこそこに、まんまと笑ってしまうような。そんな天性の技を持った女の子だ。

喜怒哀楽がハッキリとしていて、大人との対話にすばらしく長けている彼女は、小学校の児童会長さんをしている。

「2月から引き継ぎをしているのが、ほんっとめんどくさい!」
と言う彼女の言葉を聞いて、娘ともう1人のお友だちが
「いやいや、それは仕方ないやろ。そもそもなんで会長になりたかったん?」
と聞くと、

「それは決まってるよ!全校制覇したかったから!!」

と言って、あっけらかんと笑ってる。
わたしも吹き出してしまうし、結局、そこにいるみんなで笑ってしまう。

こんなこと言いつつも、運動会でのスピーチなんかはお家で遅くまで何度も練習していたし、みんなを引っ張っていく難しさに涙を流して、ご飯が喉を通らないくらいに一生懸命に悩んだ時期があったことも、彼女のお父さんから聞いている。

優しくて、頑張り屋さんだと思う。

彼女はお父さんと2人暮らしをしている。
お母さんとは月に2回ほど会っていて、わたしにもよくその時の話を聞かせてくれる。
彼女はお母さんとも仲が良くて、聞くのはいつも楽しいエピソードだ。


娘が幼稚園生の頃、地域で行われるイベントで偶然鉢合わせする機会が多かったことがきっかけで、以前からわが家とそのお友だちとお父さんとで一緒に遊ぶことが度々あった。

その後、娘が2年生の時に引っ越しをしたら、たまたま彼女の家まで小走りで2分の距離だった。

娘の同級生は近所にたくさんいて、そんな環境に居られるのは娘もわたしも幸せだと思う。

よく聞く "多様性" って、わざわざ意識をしなくても、わたしからしたら身の回りで十分多様だわ…
なんて思うくらいに、子どもたちみんなそれぞれに持ち味があって。
得意も不得意もなんだか堂々と開けっぴろげにしている雰囲気が、わたしからしたら眩しく思えるくらい👀✨


ちょうど2年前。
わが家で娘とお友だち2人が一緒に居た時、彼女から、

「今度さ、子ども食堂の日なんだ。一緒に行かない?結構楽しいよ?!」

とお誘いがあった。

学区内にある大きなお寺で月に1度、子ども食堂が開かれているのは、娘が入学した頃に学校で配られたチラシを見て知っていた。
200円で手作りの夕飯を頂けて、食事の後はみんなでゲームをしたり、大学生(留学生)たちによる英語教室の催しもあるんだよと、人づてに聞いたこともあった。

でも、"子ども食堂" ってどういう趣旨で行われてるのかな…。

"行きたい!!"

と言っている娘とお友だちに、

"ご飯は人数分しか用意されてないかもしれないし、急に行ったら困らせてしまうかもしれない。
明日にでもお寺に連絡をしてみるから、行けるかどうかはそれからだね。"

と口を挟んだ。

その後、彼女のお父さんにその話をしてみる。

「多分、受け入れは大丈夫って言ってもらえますよ! よかったら、なっちゃんママも1度お寺の住職さんご夫婦に会ってみてほしいです。
むっっちゃ良い方たちですよ!
わが家、小1からお世話になってますけど、娘はほんと毎月楽しみにしてて。
なっちゃんたちも一緒に行けるってなったらうちの子すごく喜びますよ。ぜひぜひ!」

彼女のお父さんは、かなりオープンマインドな方だと以前から思っていて。
そして、人当たりが相当良いけれど、必要な時はカラッと毒を吐ける方だとも思う。
そこまで "良い方たちですよー!" と言われると、ワクワクしてきた。

次の日にお寺に電話をして、奥さんとお話ができた。
想像のさらに上をいくような、優しくて自然とこちらに安心を感じさせてくれるような話し方と声に、ちょっとジーンとした。

"この地区にこんな方が居てくれるってことが、すごく嬉しい。"

そう感じて、ハッキリと頭の中で言葉になったのを覚えてる。

もともと、住職さんがフードロスの問題を解決に向けて何か出来ないかなと考えられたのが発端だったそう。加えて、小学校とも長年関わりが深かったので、孤食に関してもずっと思いがあったと。

「"子ども食堂" が認知されやすいかなと思ってその呼び名にしているけれど、子どもだけに来てねというわけじゃないし、誰でも来てくれたらいいですよと思ってるんです。
月に1度だけだけど、共働きで忙しいママさんも多いからその1日くらいは夕飯作りから解放されて、子どもと一緒に、自分の為に作ってもらったご飯をゆっくり食べてほしいなとそんな思いもあるし。
楽しい場所になれば、それでいいなと思ってるんです。こちらは子どもたちから元氣もらえますし!
2人なら大丈夫なので、次回から来てくれたらいいですよ!」

嬉しくて胸がホクホクした。

学校から帰った娘に伝えると、やったー!と言って、もう1人のお友だちにも伝えに行った。

それから、毎月3人にとって月に1度のお楽しみになった。
他に同級生も数人来ていて、放課後にみんなで話をしたりご飯を食べる。
それはそれはとても楽しかったようだ。

交代で送迎をして、子どもたちが行き帰りにどんなに楽しそうかを目にしているので、3軒共に、

「ほんと、あの子たち楽しそうですよね〜。
きっといい思い出になるでしょうね。有難い🙏✨」

は、共通認識になってる。

月1のお寺でのご飯会。
この子たちは今月で最後になると思う。
中学生も来ている子はいるようだけれど、3人とも違う部活を希望しているから、きっと次回で区切りになるんじゃないかな。

5年生、6年生、と成長していく中で、体も心もたくさん育ってきた。
この時期に、この場所に出会う事ができていて良かったなと思う。
娘にとってもだし、わたしにとっても。

お寺で出る食事はいつもボランティアさんの手作りで、広いお台所は入口の付近なので迎えに行った時に窓越しに見える。
エプロンに三角巾を付けた女性たちが数人で後片付けをされていて、話し声と笑い声が聞こえる。

玄関口で待っていると、中から出てくる子どもたちはとても元氣がよくて、お迎えに来たお母さんたちは柔らかい表情で。
住職さんや奥さんと話をしてから、暗い道を手を繋いで一緒に帰っていく。
ここは、色んなものが明るいなぁと思う。
明るいほうにスッと引っ張られるような、そんな空氣があると思う。

クサクサする感覚も、お腹が満たされたらホコホコになる。
誰かと一緒に食べたら、一層あったかくなる。


わたしは、優しくてにこにこのお母さんには遠いけど、"おにぎりを作って!" と言われたらそれくらいなら出来る。

娘とお友だちにおにぎりを作って、食べてもらう🍙

"おいしい!もう1個ある?"
とか言われたら
"お家の夕飯、ちゃんと残さずに食べれるなら…"
と念を押しながらも、嬉しくなって小さめのをオマケしたりして。

以前から何氣なくやっていたのに、コロナの影響でそんな事すら躊躇するような思考に自分がなってしまっているのが、何だかくるしい。
でも、そんなのを軽ーく吹き飛ばすみたいにして彼女は言ってくれる。

「なっちゃんママのおにぎりが食べたい!」って。

一応、彼女のお父さんにもチラッと言ってみたら、
"ほんと、あいついつも厚かましくてすみません!ご迷惑かけて…"
って言われながらも、おにぎりを出すのは🆗だったので、遊びにきた時にオヤツとしてラップの上から握ったおにぎりを出すのは前と変わらない。

もじゃもじゃと考えてるだけで、結論を出せないいつものわたしに、ヒントや答えをくれるのは子どもたちだった。
…みたいな事って相変わらずよくある。
結構、子どもたちの取捨選択って神がかってる時あります…よね?

依存になり過ぎない程度に、子どもたちの意見や考え方を参考にしたいなぁと思う、この頃です👀✨


※パステルプラネットさんのイラストをお借りしました🍙✨うまそう可愛いです…♡
ありがとうございます😊

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