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うん!この味!ホンモノだなァ。の補完

少女は貧しかった。
たった一着のワンピースを着まわすような苦しい生活を送っていた。
その日食べるものにさえ困っていた。

悪ガキたちは残酷だった。
「腹減ってるだろ。うんこ食わせてやるよ。ありがたく思え。」
嫌がる少女を羽交い絞めにして、無理やりうんこを食わせようとした。

少年は駆け付けた。
少女のことは知らなかった。ひどい目にあっていることはわかった。
それだけで充分だった。
湧き上がる義憤のままに悪ガキたちに飛びかかった。

勢いはそこまでだった。
数で不利な少年はあっという間にぼこぼこにされた。
そして、
少女が食わされるはずだったうんこは少年の口に押し込まれた。

少年は諦めなかった。
口の中に押し込まれたうんこを噛み潰してブッと吐きつけた。
味蕾を走る不快感も鼻腔を抜ける嘔吐感もすべて怒りに変えた。
驚いてバランスを崩した悪ガキのリーダーに馬乗りになり、
これでもかと殴り続けた。
他の悪ガキたちが引きはがそうとしてもがんと離さず殴り続けた。

泣きべそをかいて立ち去る悪ガキたちをにらみ続けた。
その姿が見えなくなったころ、少年は黙ってそそくさと帰ろうとした。
自分の姿があまりにも格好悪く思えたのだ。
空想するヒーローのようには行かず、幼いプライドは深く傷ついていた。

その時、少女は思わず少年に飛びついた。

ぎゅっと抱きついて、
ありがとうと言って、
少年のうんこ塗れの口元など気にも留めずにキスをした。
それがどういう意味を持っているのか少女自身も知らなかった。
ただなんとなく"ヒーロー"に救われたらそうするものだと思っていた。
二人の唇はどこまでも無垢だった。

少年は呆けていた。
少女はなんだか気恥ずかしくなって笑った。
その顔を見て少年もほほを赤らめながら笑って、言った。
「その…負けるなよ。…笑ってろよ。」


月日は流れた。

少年は、少女のことを忘れてしまった。

幼い心にとって、あの日のことは、
人を助けた誇らしさより手酷くやられた屈辱が勝る記憶だったから。
いつしか”無様な自分の姿”として記憶の奥深くに追いやられてしまった。

少女は、少年のことを忘れはしなかった。

幼い心にあって、あの日のことは、
貧しさをなぶられた屈辱より差し伸べられた優しさが勝る記憶だったから。
いつしか"心の支え”として、貧しい日々でも少女は笑顔を咲かせ続けた。

「また逢いたいな。」
そう願いながら、彼女は何度も何度も思い出していた。
名も知らないヒーローを。
笑ってろよと言ってくれた彼を。
運命の魔法のような、いとけないキスを。


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