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ガイ 4
第六幕/デジタル意識体 ガ イ
「イチ」登場。 留守電の発信音と同時に録音されたものが再生される。
SE: ピィ............ツ( 発信音)
イ チ「東京駅。 東西南北、いろんな旅がはじまり、そして終わる。もうすぐ僕らの『旅』も終わりのようだ。 君は来週には結婚してしまう。 『待てなかった』と君は言い、そんな彼女の応えに一言もかえせない僕は『ごめん』と呟き、僕らの最後の旅に出かけた。 好きなのはその明るさかな、あまり美人とは言わないけど、いつも君が僕を呼ぶ声が僕の心を和ませてくれた。 もしかしたら『愛してる』と言ったことがあるかもしれないけれど、今の君にはそれを言ってくれる別の人がいる。 君はその旅行鞄の中に思い出を連れているのだろうか。 それとも、捨ててきてしまったのだろうか。 もうすぐ東京駅が近づいてくる。 そして君はいつの間にか涙を流しているホームに下りるとき、風の悪戯か、『ごめんなさい』と聞こえてきたのは、僕の空耳だろうか。 君は僕の手をそっと握る。いつの間にか僕は君の肩に触れる。 『ゆるしてくれるのかい』と僕は君に囁きゆっくり首をふる君。 無口になる二人に乗換電車が過ぎ去っていく僕は乗車することに迷っている」
●舞台のスクリーンにアニメが映る
●「マタハリ(このマタハリはマリアに似ている)」が「兵士」「呂」にひっぱりだされる。 「マタハリ」は銃殺場に出される。
●マタハリ「私は、スパイなんかじゃない」
●兵士「よーい」
●マタハリ「私はただのダンサーよ」
●兵士「構え」
●マタハリ「嘘が私を…殺す。 みんな『狂ってるわ』」
●兵士「撃て」
●「マタハリ」は銃殺され、その場に倒れる。
呂 「そして、彼女は『伝説』になった。 女スパイの代名詞として、伝説の中で活躍しいくのだった」
「呂」退場。 入れ替わりに「イチ」登場。
●スクリーンの映像は「蜘蛛の巣」となる。(アニメ)
「蜘蛛の巣」は「脳」となる。
イ チ「今、俺の夢の中にはいってきたな」
●スクリーンには「マタハリ(マリア/略 M)」が写る。 しかしその恰好は「黒いピーターパン」の恰好だ。
●マタハリ(M)「イチ」
イ チ「おまえは…誰だ」
●マタハリ(M)「私よ。マリアよ」
イ チ「嘘だ」
●マタハリ(M)「私は生きているわ」
イ チ「…」
●マタハリ(M)「本当よ。確かに私の肉体死んだ。 でも、意識は生きている。 人々の中に『マタハリ』という名で…」
イ チ「マタハリ」
●マタハリ(M)「そうよ。 あなたが探していたのは『私』」
イ チ「君が…」
「イチ」スクリーンの「マタハリ(M)」に近づこうとする。 そこへ「マリア」が登場する。
マリア 「騙されてはだめ」
イ チ「マリア」
マリア 「真実はここよ」
イ チ「それは架空の人間。 実在しない人間」
マリア 「何を…」
イ チ「しかし、彼女は僕が探していた…」
マリア 「実在しない女性を求めて何になるの」
イ チ「えっ?」
マリア 「あなたには、素敵な女性がいるはず」
「マリア」ゆっくり「イチ」に手をのばす。 「イチ」それをつかむ。
マリア 「おいで…」
●マタハリ(M)「じゃまさせないよ」
マリア 「まだ、気がつかないの」
●マタハリ(M)「何」
マリア 「あの時、銃殺されたのは私ではないわよ。あなたよ」
●マタハリ(M)「えっ?」
「マタハリ」の死体が登場する。
マリア 「あの死体は私のかしら、それともあなたかしら…」
●マタハリ(M)「私のじゃないわ」
マリア 「私のでもないわ」
●マタハリ(M)「じゃ、誰?。 あの殺された『肉体』は私のもの、それともあなたのもの」
マリア 「確かなことは…」
●「マタハリ(M)」は「クロノX・垓」になる。
「ゴッホ」「レイ」登場。
ゴッホ「見ろ、レイ君」
レ イ「なんです」
ゴッホ「この女の脳波を」
レ イ「えっ?」
ゴッホ「デジタル化していく」
レ イ「あっ、『クロノX』の振動数とシンクロしています」
「マタハリ」を調べるふたり。 (舞台の一方では「レイ」と「ゴッホ」が。もう一方で「マリア」と「クロノX・垓〈映像/声は「マリア」〉」がいる)。
●クロノX「あの人は私を捨てた。私はあの人なしでは生きて行けなかった」
マリア 「その時、あなたは『コピー』された。 あなたの『怨念』が『コピー』されたのよ」
●クロノX「私はあの時、海岸へと向かい、そしてその岸壁から海に向かって…、飛び下りた」
●一瞬「クロノX・垓」の画像が 頭を抱える「マタハリ(M)」になる。
●クロノX「でも、思い出せない。 何か大事なことを忘れている。 そう、あの時、誰かが私を助けてくれたことを…。 そうだわ、私はあの時、イルカのような背に乗って、浜辺まで運んでもらったような…」
暗 転。
ゴッホ「やっとつかんだぞ、スパイの情報の流れを…」
レ イ「そうですか」
ゴッホ「見ろ、多くの情報がこの『街』に流れ込んでいく」
レ イ「街?」
ゴッホ「そう、この『街』に多くの情報が集まったためにその空間に歪みができたのだよ。 そして、人々がいつの間にかここへ集い、そして『街』がひらけたのだよ。 情報のブラックホールに出来た『街』といってもいいし、精神の『街』と呼んでもいい」
レ イ「何いっているんです。 私たちはここに存在していますよ」
ゴッホ「私の調べでは、この『街』は仮想の街なのだよ。 君が信じようが信じまいが、この『街』は意識の中にしか存在しない『街』なのだよ」
レ イ「准教授、しかし、ここにほら建物や植物や動物だって…」
ゴッホ「それは、この『街』が僕らに見せているだけ、ほらこの『女』が証明している。 この『脳波』とこの『街』の『シンクロ数』がいっしょだ。 我々はこの『街』を見ているのでなく、この『街』を見せられているんだよ」
●スクリーンに「軟派野郎」登場(アニメ)
待合場所の石のところで本を読んでいる「マタハリ」に声をかける。
●軟派「ねぇねぇ、かのじょ。ねぇ、ひ・と・り…ねぇ、誰か待ってるの?」
●「マタハリ」「軟派」を無視してタブレット端末を読み続ける。 (そこには「オペラ」が映っている。 まるでタブレットの中に閉じ込められているようにもがいている。 同時にその映像は舞台のスクリーンにも映る)
●軟派「彼氏いる?…しかとしちゃって、かわいい。 そんなに面白いそれ?」
●マタハリ「読んでいるのではないのです」
●軟派「えっ?」
●マタハリ「読まれているんです。 この『街』に読まれているんです」
●「マタハリ」はまた歩きだす。
レ イ「そんな、ばかな。それは前に見たものと同じ…」
ゴッホ「我々はこの『街』にデジタルとして住んでいるんだよ。 そして毎回同じことが再生されているのだよ… これは地獄だよ。 だってなにも前に進めないから… いつも同じ苦痛の中を再生しつづけいるんだから…」
レ イ「私たちは…」
ゴッホ「我々はひとりひとり、この『街』にコピー(犯)されているんだよ」
レ イ「なんのため…」
●ネットワーク化された都市図が出てくる。
レ イ「これは私がいま勉強している『情報ハイウエイ図』」
ゴッホ「レイ君、これが何に見えるかね」
レ イ「えっ、ネットワークですが…」
ゴッホ「この『街』を中心に広がっていく『情報』は『曼陀羅』と化しているんだよ」
●都市図は「曼陀羅」となる。
レ イ「曼陀羅」
ゴッホ「宇宙だよ」
レ イ「宇宙」
ゴッホ「そうだよ。 このネットワークの世界に曼陀羅(うちゅう)を創作しているのだよ」
レ イ「オー マイ ゴット」
ゴッホ「そうだよ。みんなこの宇宙…『街』に閉じ込められ、『マイ ゴ(迷子)』っと なっているんだ」
「曼陀羅」は「宇宙」となる。
ゴッホ「私が解こうとした『黄金分割』がいま、宇宙の音を導き出したのだよ」
レ イ「この中に宇宙があるのですか」
ゴッホ「そうさ、そして、それはひとりひとりの中にもある。 君の中にもだよ」
レ イ「えっ?」
携帯電話(メールが来た)の音がする。
レ イ「准教授 ここでメールですか」
ゴッホ「10101010…」
レ イ「だれですか」
ゴッホ「レイ君、君は『宇宙』を聞きたくないかね」
レ イ「えっ?」
ゴッホ「宇宙とジャックインしたくないかね。 君の中になる『宇宙』を開放したくないかね」
レ イ「したいです」
ゴッホ「では、これをつけたまえ」
「ゴッホ」ダンボールを持ってくる。
レ イ「ダンボールですか」
ゴッホ「ちがーう。 これは私の考案した装置だよ」
黙って「ゴッホ」の言うとおりにダンボールをかぶる「レイ」。
レ イ「准教授。 何だか、世の中が違って見える。 なんだか自由に感じます。 『ゴッホ』よ、ゴホン ゴホン(咳) オー マイ『ゴット』よ。 ゴ・ッ・ト…。」
「ゴッホ」静かに「レイ」を見つめ続ける。
レ イ「いま、私の夢に入って…来る」
ふたり退場。 「イチ」「ピアノ」登場。 ふたりは携帯電話をもっている(ふたりのいる位置は左右別々) 。
イ チ「俺 やっと気づいたよ。 俺が、本当にほしかったもの。 気がついたんだ。 俺…」
ピアノ「何が…」
イ チ「お前が好きだってことが…」
ピアノ「…」
イ チ「やめろよ、結婚」
ピアノ「何、勝手なこといってるのよ」
イ チ「あぁ、俺はかってな男さ。 もっと早く気がつくべきだったよ」
「ピアノ」の前に携帯電話をもった「イチ」が現れる。 ふたりは会話をしながら、ゆっくり携帯を仕舞う。 もう電話を使う必要はないからだ。
イ チ「俺が馬鹿やっているとき、ずっとそばにいたのは君」
ピアノ「でも…」
イチ「いつでもけんかできるのは君だけ。 いいたいことを言えるは君だけ。 本当のことが言えるのは…君だけだって気がついたんだ。 そんな君を離したくないと思ったんだ。ずっといっしょにいたいと…、そう思っら…。 こんな馬鹿なことをしてもいいだろう」
ピアノ「あなたって、かってね」
「ピアノ」「イチ」の前で手の甲を見せる。
ピアノ「指輪なくしちゃった」
イ チ「えっ?」
ピアノ「私断ったのよ。考えなおしたの…。 私もいじっぱりだから、いつか『あなたの方から』言ってくれると思っていた。 でも、私自身『それ』があるから言えなかった、みっともないとまで思うようになってしまったの。 でも私自分が思っていることと違うことをしていることに気がついたの。 だんだん、それらが自分の『エゴ』に流されて、自分が本当に欲しいものを見失おうとしていたことを…」
イ チ「ピアノ」
ピアノ「私知ってたの…。 私はあった時からあなたが好きだってことが自分自身ではわかってたの…」
イ チ「ピアノ」
ピアノ「イチ」
「イチ」の胸に飛び込む「ピアノ」(退場)。
●スクリーンの「イチ」と「ピアノ」のアニメが…
ふたりは「イチ」の部屋へといく(アニメ)
部屋(夜)/「ピアノ」が「イチ」とベットの上で戯れている。
段々激しく二人。激しく乱れる二人。二人は絶頂に達する。
「ピアノ」はベッドに倒れ込む。
「レイ」登場。 そこに「マリア」がいる。 その姿は「黒いピーターパン」。 その口調もピーターパンのように男の子っぱい。
レ イ「あっ、あなたは…」
マリア 「僕は『ブラック・ピーターパン』」
レ イ「ブラック・ピーターパン?」
マリア「あっ、ブラックだからって悪いとはかぎらないから 悪いイメージをもたないで…」
レ イ「えっ、まあ…(曖昧な返事)。 ところであなたたは誰?」
マリア「僕はここのタマシイたちを監視しているセキュリティーシステムさ。 そしてデジタルなタマシイたちを導く プロデューサーでもあるのです」
レ イ「プロデューサー…さんで」
マリア 「彼らは『マスター』を『コピー』しなければ、完全な生命体としてのアイデンティティをもつ人格にはなれないタマシイたち。 それぞれの人格を『デジタル』にして、あの人の人格になる…」
●「クロノX・垓」登場(アニメ)
レ イ「あれは『クロノX』」
マリア 「いままで複雑化していた『意識』がいま一つの『意識』に統一されようとしているの」
レ イ「うわー、複雑な話になってきた」
マリア 「物質と精神が一つになろうとしている証拠なのさ。 意識がネットワークを使ってどんどん集まろうとしているんだよ」
レ イ「…」
マリア 「あの中に多重人格の意識が統一されようとしているのだよ。 我々はこの『街』の意識が生んだものです。 この『街』が多くのネットワークに繋がったとき、意識をもちはじめたのです。 そしてその意識は『肉体』が欲しいと感じたのです。 そして『情報』の『DNA』をもち『メディア』の体をもち、脳化都市の頭脳をもつ『情報』が生まれた。 それを『ガイ』と呼んでいるのです」
レ イ「ガイ? 彼らは『情報』なのですか」
マリア 「えぇ、デジタル人間です。 しかも『オリジナル』を捜しさまよう… オー マイ ゴ(迷子)っと なのです」
レ イ「オリジナル?」
マリア 「ガイは言ってみれば『泡』のようなものです。 すぐに消えてしまうのです。 だから誰か『肉体』をもつものにアクセスしてそのデータをコピーしなければならないのです。 『アナログ』を『デジタル』に変換しなければならないのです。 そして我々はその『肉体』をもつ人々を『マスター』と呼びます。 その『マスター』を『コピー』しなければ完全な『アイデンティティ』をもつ『自分』にはなれないのです」
イ チ「それは 『カオナシ』だ。ここには妖怪がいるのか…」
マリア「なに…? それ…」
イ チ「いにしえより 伝わりし、日本の妖怪。『カオナシ』は命はあるがその証拠をもっていない。 だから その証明となる人(うつわ)をもとめ、そしてそこから奪おうとするんです…」
マリア「僕らは奪いはしない。ただコピーするだけです…」
レ イ「じゃぁ、もしかしたら…『マタハリ』も『ガイ』なのでは…」
マリア「『マタハリ』?、『マタハリ』はミスコピーだよ…」
レ イ「ミスコピー?」
マリア「『マタハリ』は この『街』が狂った『夢』を見たとき生まれたミスコピー」
●スクリーンに老人のようになった「マタハリ」が出てくる。
レ イ「まるで、老人のようだ」
マリア 「はやく『マスター』の『データ』を『コピー』しないと老化もはやい。 だからあせって 狂気に走る…」
レ イ「狂気に走る」
携帯電話(メールが来た)の音がする。
マリア 「0101010。これはあなたの『デジタル・コード』です。 あなたは『データ』になったのです」
レ イ「なんてこった」
マリア 「『情報』という磁場が時空を歪めて、その隙間に出来た架空の街『水境町』。 ここで生きる人々は皆『デジタル』でなければなりません」
レ イ「ここは…。 現実ではないというのか、情報の街とでもいうのか」
マリア 「あなたがたはここでは生きていけません。 なぜならここでは全てが『デジタル』だからです。 あなたのように迷い込んできた人達はたくさんいます。 だから、みんな『マスター』と交わり、コピーをされて、そこで生き残るのです。 あなたが生きるのでなく、あなたの『デジタル』が生きていく『街』なのです」
あたりが「七色」の光に包まれる。
マリア 「その『デジタル』とは生命の『色』です。 全ての生命には『色』があります」
レ イ「生命の色。オーラのこと」
マリア 「その色が個人個人に表現され、『街』を、『国』を、『星』を そして『宇宙』を表現するのです。 それはつまり あなたたちが『世界』を描いていくということです。 その『色』が自分自身の『人生』を描いていくということですよ」
●舞台は暗くなり、スクリーンには「レイ」と「マリア」のアニメが写る。
「色」に包まれるふたり。「色」のオンパレード。
「レイ」「マリア」を抱き抱える。
二人は「色」に包まれ、雲(クラウド)の中に消えていく。
レ イ「あぁ、マリア、愛しいマリア」
暗 転。
第七幕/カウント・ゼロ
「レイ」大の字で寝ている。
レ イ「終わった…。 何だか、やっと、安らぎを感じる。なんだか『精霊』が舞い降りてくるようだ」
「レイ」起き上がる。
レ イ「ここは…」
●古い町並み(映像)。 豆腐屋のラッパの音と同時に記憶されているものが再生される。
SE: パァ~、ラァ~( 豆腐屋のラッパの音)
レ イ「不思議な街がここにある。路地は迷路のようにいりくんで、そこで子供がかくれんぼ。 子供の自分とかくれんぼ。僕は迷路に迷い込んみ、子供の自分を見失う。 僕は自分の迷子になり、小さな冒険が始まった。 誰であれ、子供の自分とかくれんぼ。 そして日が暮れたらこんばんわ。 あしたがくるまでわんばんこ。 誰かが僕を見つけてくれて、そこで冒険は終わってしまう。 そんな子供のやりとりを子供の自分としているようで、僕はこの不思議な街に立ち止まり、子供の自分に手をふった。 子供の自分は母親に連れていかれながら、やさしく僕に手をふった。 そんな不思議な街の出来事に、僕は不思議なことを感じた。 『故郷』それがこの『街』の名前だ。 僕は不思議な街の『名前』を知る。」
SE: 缶けりの音。 下駄の音。 子供たちの遊び声。
レ イ「ここは何故か、なつかしい。 ここは…」
「タオ」登場。
タ オ「むかしむかし、あるところに『隠れ里』がありました。 子供が神隠しにあった時『隠れ里』にいってしまったというあの『里』ですよ。」
レ イ「隠れ里」
タ オ「人々の懐かしい思いが集まった里がある」
レ イ「この『街』の下にこんな『里』があるなんて…」
タ オ「人々が忘れてるものや、置いてきたものが眠る里」
レ イ「この『街』が眠る時…」
タ オ「街はこの『里』の夢を見る」
レ イ「あの時は希望や夢を失った…。 今は、ただまっているだけ、そしてそこには『執念』がある。 貪欲なまでの自分自身。 チャンスをひたすらまつ自分は自己表現を貪る『狂気』だ」
タ オ「あんたは『狂気』の夢をみるのかね」
レ イ「いいえ」
タ オ「いいえ?」
レ イ「天使の夢です」
タ オ「天使」
レ イ「あなたはもしかしたら…『天使』では…」
タ オ「私が天使…」
ふたりのところにいままでの登場人物がやってきて暴れまわる。
レ イ「なっ、なんだ」
イ チ「いやぁ、俺が彼女を取ったから相手の男が追いかけてきちゃって…」
ピアノ「私たち結婚します」
レ イ「おめでとう」
イ チ「レイ、俺やっと気がついたよ。 俺は『夢』がなくなってずっとそれを探していた。 それがいつ見つかるか分からず砂漠の中を歩きつづけた。 でも、その『意味』がなくなったことに気がついた時、俺にはこいつがいることに気がつんたんだ」
レ イ「おめでとう」
幸せなふたり(「レイ」と「ピアノ」)。 「留守電」がなる。
SE(ピアノのフィアンセ )「まてー、ピアノさ~ん」
ピアノ「さあ、逃げましょう」
イ チ「どこへ?」
ピアノ「まずあなたの部屋(ところ)でいいわ…」
どたばたになる。 そしてダンスシーンになる。 ダンスの合間に「留守電」が切り替わる。
●スクリーンに男が登場(「座長」のアニメが登場)
●座長「何ごとだ、これは…」
ピアノ「あっ、座長」
●座長「ピアノ、イチ…。 イチ、どうだ戻ってくるきになったか」
電話を睨む「イチ」
レ イ「どうしたの、あのふたり」
ピアノ「私のいるプロダクションの社長で芝居の座長なの。 でも、ふたりはいつも演技のことでけんかしているの。 この前ついに『イチ』のほうが切れて出ていってしまったけどね」
レ イ「仲が悪いの?」
ピアノ「そうでもないわ、互いを認め合い、技を競い合う。 『イチ』にとって彼は恩師なのよ」
レ イ「へーっ」
●座長「おまえはまだまだ未熟だ俺がみっちり鍛えてやるぞ」
イ チ「へん」
レ イ「やっぱり、仲が悪いんじゃ」
ピアノ「私『イチ』の事がわかったわ」
レ イ「なに」
ピアノ「彼、誰か相手がいないとだめなんだって…」
レ イ「相手」
ピアノ「そう、自分を燃え上がらせてくれる『ライバル』よ。 そういう相手がいて始めて彼は彼でいられる」
イ チ「おれはおまえが戻ってきてくれと土下座するようにビッグになってやるぜ…」
●座長「ふふふふ。 楽しみにしているぜ、お前の成長を…」
SE:プッ、プッ、プッ、プッ…(電話の切れた音)
「イチ」深く頭を下げる。
SE(フィアンセ)「ピアノさーん」
再び舞台場は乱闘となる。 子供のように無邪気に遊ぶ人々。 笑い声が飛び交う。 「天使」のように…。
ピアノ「もうすぐ世界が終わるんだって…」
イ チ「だっから、見に行こう…。 世界の最後の姿を…。 この舟に乗って…」
ピアノ「例え、最後の日が来ても絶望なんかしない。 今が一番面白いから…。 一瞬一瞬が面白いから…。 永遠は一瞬一瞬の中から生まれるものよ。 一瞬が輝かない永遠なんて退屈だわ」
「イチ」「ピアノ」が残りほかは退場。 「レイ」がそこに倒れている。
「レイ」を抱き上げる「イチ」。 目覚める「レイ」
イ チ「レイ」
レ イ「イチ」
イ チ「どうしたんだ」
レ イ「夢を見ていたの」
イ チ「夢」
レ イ「この世の終わりよ」
イ チ「何だって…」
レ イ「誰もが『狂人』になっていく。 そして心が『空洞化』していく」
イ チ「何だって…」
レ イ「私たちの運命は…」
イ チ「そんなことはないまだ…」
レ イ「運命は変えられない、私ちたの運命は…」
イ チ「くそーっ」
力一杯地面をたたく。その握り拳を見つめる「レイ」
レ イ「ここが地獄だったんだ。 この『街』が地獄だったんだ」
ピアノ「でも、この『地獄の街』も自由に生きれたら…そういう風に生きれたら素敵よね」
イ チ「諦めたりしている暇はない。 絶望なんかしていたら…この街に殺される。 さあ、この『街』から脱出するんだ。 運命は自分で切り開くんだ」
ゆっくり拳をひらく「イチ」。 ゆっくりと「タオ」が三人のところへとくる。 にっこりと微笑む「タオ」。
イ チ「おまえは…」
タ オ「最後の対決ですね。 それが、最後に残された『希望』です」
イ チ「希望」
タ オ「運命です」
イ チ「運命」
タ オ「私はあなたたちに3つの予言をさずけましょう」
レ イ「3つの予言」
タ オ「そう、それは…」
「タオ」は『じゃんけん』の『グー・チョキ・パー」を出す。
イ チ「それは『じゃんけん』」
タ オ「そうです。 『あなたたち』と私の運命の予言です」
レ イ「じゃんけんで運命を決めるなんて…」
タ オ「これは『運命』を決める力をもっているのですよ。 あなたたちの精神がまだ『希望』をもっているなら、運命を跳ね返せるはずです」
イ チ「もし、だめだったら…」
タ オ「もう、あなたはダメですね。 運命に飲み込まれている」
イ チ「なんだって…」
レ イ「『もし、だめだったら…』なんていう言葉が出ていることから『精神』が諦めているのよ」
タ オ「そうです」
レ イ「私たちが見た夢が全てその答えなんでしょ」
タ オ「わかりましたか」
レ イ「あなたが…クロノX…『ガイ』」
タ オ「ここの人達はそう呼びますね。 でも私は別の場所では『ノア』とも呼ばれています」
イ チ「ノア?」
タ オ「そう、『情報』という大洪水が起きる前に全ての『生命』を この『舟』の中に…」
イ チ「舟」
レ イ「この星の『デジタル』意識のこと」
タ オ「あなたは賢い、さすが准教授の助手だ」
レ イ「へへへへへ…(照れる)」
イ チ「どういうことだ」
レ イ「この星を『ネットワーク』で繋げて、その中に『デジタル』な意識だけが生き残る」
イ チ「そんなことが…」
タ オ「あなたがたはいま『数字』という『デジタル』に世界を委ねようとしている。 そして、あなたがたの本当の『デジタル』:生命の『色』を失わせようとしているのですよ。 『個人個人』の『色』が灰色に…」
レ イ「私たちの『色』がなくなってきているの…?」
タ オ「あなたたちはとても優秀な人達です。 あなたは『選ばれた人たち』です。 私が負けたら、この『運命』を変えてあげましょう」
イ チ「俺は負けない。 これが『諦め』なんてものではない。 俺の『夢』は『諦め』なんかにはならない、どんな時でも『諦めない』中に生きていくのだ」
「じゃんけん」をする「イチ」と「タオ」。
タ オ「もっと、楽にしなさい。 肩に力が入っているわよ」
イ チ「うるさい」
最初の「じゃんけん」は「イチ」の勝ち。
イ チ「勝った」
レイ/ピアノ「やった」
タ オ「負けました。 じゃあ、ひとつの『戦い』を終わらせてあげましょう。 ちょっと、『情報』を操作すると『戦い』は終わります」
イ チ「あっ」
「タオ」と「レイ」「じゃんけん」をする。
タ オ「自由になりなさいよ」
レ イ「うるさい」
「じゃんけん」は「タオ」の勝ち。
レ イ「負けた」
イチ/ピアノ「えーっ」
タ オ「勝ちました。 じゃあ、ひとつの『戦い』をはじめましょう」
レ イ「最後だ」
イ チ「最後だ」
タ オ「これで…」
最後の「じゃんけん」がはじまる。
全員「じゃん、けん…」
暗 転。
「オペラ」登場。 留守電の発信音と同時に記録されたものが再生される。
SE: ピィーーーーーツ( 発信音)
オペラ「本当の私、それは『寂しがりや』です。 いきがったり、つよがったり、涙を流したり、したいのです。 でも、だめなんです。 そんなことをしたら、何かに押しつぶされてしまうんです。 そんな私を強くしてくれる。 強く見せてくれるものが欲しかった。 でも、私は笑ったり、怒ったり、愛したり…」
「オペラ」泣き出す。
オペラ「泣きたいです。 でも、そんな私をさらせないんです。 こんな私を弱いと思わないでください。 こんな私を笑わないでください。 皆、だれもが、もっています。 自分が自分でなく、いつも何かの『仮面』をもっている。そんな自分に嘘をつく。 そして『私』が『私』でなくなる。『私』が『狂って』くる。 『私』が『意味の喪失感』に襲われる。 そんな『私』を笑わないでください。 『私』は弱いです。 でも『それ』を目をそむけないで、それが人間なのだから。 だから『誰か』に支えられるんです。 そして『私』も『誰か』を支えていく。 そんな人の和が『人間』を創っていく。 それが『コミュニケーション』をつくっていくんです。 『私』は『情報』の中にいるのではありません。 コミュニケーションの中にいるのです」
●「オペラ」の周りに「人」の「顔」が無数に落ちている(アニメ)
それは「人」が捨てた「本当の自分」の顔だった。 子供になっている「オペラ」のところに「マリア」登場。 優しく「オペラ」の肩をたたき、手を差し延べる。
●スクリーンには「海」の映像が映し出され、沢山の「イルカ」が泳いでいる。
マリア 「これはひとつ『選択』の光景です。 ひとつの『歴史』の光景です。 それは思い出の金庫を開ければ、一人一人の過去の歴史をもっているものです。 でも、それは『過去』でしかない。 それにどんな『意味』もないのです。 ただの『情報』でしかないのです。 私たちはいつも前に進んでいます。 そして『歴史』は『歴史』となるだけです。 どんな時代でも歴史があるように、人の歴史は尊いものだ。 年老いていく人々へ、それはどんな可能より尊いものだ。 可能を達成した/しなかったに係わらず、それは尊いものだ。 それは確かに時代を生きていたのだから…。 それが生きるものの本質だから、自分の命を全うすることが…。 自分の運命を全うすることが…」
オペラ「あの時、私を救ってくれたのは… あなただったんですね」
●映像には一頭の『イルカ』が楽しそうにないている。
マリア 「生命に色があるのを知ってますか。 それはどんなものより、美しく、力強いのです。 それはとても尊いのです。 生命は尊いのです。 そして一人一人の生命の色に描かれたものが、それぞれの『曼陀羅(うちゅう)』となって描かれていくのです。 あなたの『色』は何色ですか? あなたの生命の『色』で、あなたの『人生』を描くのです。 あなたの『一瞬』があなたの『永遠』を創っていくのです。 『あなた』ひとりひとりが『世界』を創っていくのですよ」
オペラ「マリア様、あーっ、愛しいマリア」
マリア 「『マリア』…ここでは『生命』はそう呼ばれているんですね。 あなたが、あなたである時、『天使』が今舞い降りる。 『幸運』をもって」
暗 転。
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