育成枠ライターの文春野球コラム

 昨冬、『文春野球コラム2020』の2次予選向けに書いてあえなく落選した拙文を、「不採用なのであとは自由に公開してください」との事だったので、我らが千葉ロッテマリーンズが優勝圏内にいる今、無料公開させて頂きます。

 これまで読む専門だったnoteでそろそろ何か書こうと思いつつ中々書けず、やっと公開するのが一度コピー誌で頒布した物の使い回しの文章というのもアレですが、お読みいただければ幸いです。

『 日本のプロ野球2020年開幕時点で、もっともレギュラーシーズン優勝から遠ざかっているチームはどこか。
 1996年の優勝を最後に、クライマックスシリーズ導入後含め1度も日本シリーズ進出を果たしていないオリックス?惜しい!
正解は千葉ロッテマリーンズ。
 マリンガン打線炸裂で交流戦初代王者となり、プレーオフで勝率1位だったソフトバンクを破って阪神をスイープし日本シリーズを制覇した2005年、3位から下克上の2010年、2度の日本一で忘れられがちだが、金田正一監督第1次政権の1974年の優勝以来、45年間ずっとレギュラーシーズンの1位からは遠ざかり、ついに平成は一度もリーグ優勝をしないままで終えている。
 球団の売買収が繰り返されたパシフィック・リーグにおいて最も長い歴史を誇るロッテだが、「千葉」でも「マリーンズ」でも無かった発足当初の1970年代は、ホーム球場が無いジプシー球場と揶揄された。73年から仙台を拠点にしていたが、当時会津若松に住む野球少年だった筆者に東北のチームだという意識は皆無。周りも巨人ファンだらけだったが、そもそも後楽園、神宮、川崎でもホームゲームを行っていた為に優勝パレードを銀座でのみ行い、杜の都を激怒させたというぐらいだからそれもやむを得ない。
 新設された横浜スタジアムの供用を計ったが失敗し、川崎に定着したのが1978年。しかし1991年に「TVじゃ見れない川崎劇場」という自虐的キャッチフレーズで注目を浴びるまでは、グラウンドの選手よりも少ない観客を揶揄され、スタンドで流しそうめんをやられるなど、愛する人の少ない球団だった。
 そもそも先日98歳で亡くなったロッテ創業者・重光武雄オーナーによる、大每からのチーム買収も岸信介の提案によるもので、実は御本人は野球よりサッカーが好きだったという(wikiより)。野球愛に溢れるソフトバンク孫正義オーナーが「金は出すが口は出さない」主義だとすれば「カネも出さない口も出さない(興味が無い)」と言うべき、オーナーからさえ愛されていない、不遇の星オリオンの元に生まれた球団だったのかもしれない。
 そして愛されないチームを象徴する様に昨秋のストーブリーグでは、なんと選手会長の鈴木大地がFAでチームを去り、09年の契約更改時に「生涯ロッテ宣言」をしていたサブローも共に楽天入り。球団単独として初の黒字を達成したみずほ銀行出身の山室晋也球団社長は清水エスパルス(サッカーに)へ去って行ったし、「いっそ買収された方がいいんでは?」と思っていたZOZOは会社ごとソフトバンクにさらわれた。

 そんな、愛されないチームを愛する事に慣れっこなロッテファンにさらに追い打ちをかけたのが、昨暮れに立て続けに発表されたパ・リーグ選手と、『THE IDOLM@STER』(略してアイマス)声優との結婚のニュースであった。
 オリ姫声優の「こんちきさん」にして「りっか様」こと立花理香はオリックスのキャッチャー若月健矢と、西武ファンの声優、「るるきゃん」こと佳村はるかは西武のピッチャー野田昇吾と結ばれた。一方、
「パ・リーグでは千葉ロッテファン」
と言っていた、文化放送/A&Gの『麗&優衣 ホームランラジオ』パーソナリティとして野球ファンにもお馴染み、麗ちゃまこと松嵜麗も結婚の報。お相手は当然ロッテ選手! ではなく、ヤクルトの「ファン」仲間の「一般男性」…元々熱心な燕党の松嵜麗だけに、「ヤクルト」の「ファン」! 
「いや、パ・リーグではロッテってだけじゃん」
と言う向きもあるかもしれないが、立花理香は広島出身で、元々は熱狂的なカープ女子であった。MBSラジオの『うたぐみ Smile×Songs』がキッカケでオリックスと接点を持ったのであり、2017年に行われた『THE IDOLM@STER』シリーズとパシフィック・リーグのコラボ『P@cific League』をキッカケにロッテファンになった松嵜麗と同じ、言わば同じパ・リーグビジター仲間なのである。
 無論、ロッテファンのバイブル『おれとカネやん』のカネやんの台詞「お客様は神様や」を思い出せば、神様同士の結びつきこそ尊いとも言えるが、そもそも野球界において『アイマス』と言えば千葉ロッテなのである。
 遡る事2010年、前年に最悪の形で解散した応援団『MVP』に変わって編成された新生ロッテ応援団は「ヒットテーマ2」にアイマスのキャラクター「高槻やよい」(埼玉出身の設定だが、「貧乏」でもやしが好きという泣かせるプロフィールは非常にロッテに近い物を感じる…「うっうー」CV仁後真耶子)の『キラメキラリ』を採用し、今もロッテの選手がヒットを打てば球場に『アイマス』の楽曲が鳴り響くのだ。 
 なのに…
 愛されずに育った子供は自己評価が低いと言われるが、ロッテの控えめな「2位で充分」「声優様と交際なんてとんでもない」体質の根源は、そこにあるのかもしれない。
 しかし、小池秀郎に「ロッテにだけは行きたくない」と言われたのは過去の思い出。4球団競合の佐々木朗希が快くロッテに来てくれた。なんだかんだ言っても赤字球団を手放さなかったツンデレの重光武雄オーナー、何より45年前の優勝の立役者、金田正一監督の墓前に正真正銘のリーグ一位を捧げてくれる事を願っている』

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