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子ども食堂が作る新しいコミュニティのカタチ

今回インタビューしたのは、熊谷市にある「なないろ食堂」の代表である山口純子さん。なないろ食堂では毎週平日の月・水・金曜日、中学生以下は無料、高校生以上は200円で食事をすることができる、いわゆる子ども食堂である。
現在の日本においては、貧困や個食化など家庭での食事を取り巻く様々な問題がある。核家族化が進み、地域でのコミュニケーションが希薄化する中、新たなコミュニティを作りながらよりよい環境つくりを目指す山口さんに、お話を伺ってみた。

「熊谷なないろ食堂」
毎週月・水・金の3日間(祝日はお休み)17時~19時半に子ども食堂を開催。中学生以下は無料、高校生以上は200円でビュッフェ形式の食事が楽しめる。また、大学生のボランティアによる手話教室や夏祭り等のイベントなど、子どもから大人まで様々な人との関わりが生まれる場を提供している。

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山口純子さん
熊谷なないろ食堂代表。お子さんの小学校卒業で自分の時間が多くなったことをきっかけに、ライフワークとなるなないろ食堂に出会う。ちょっとした手助けで誰もが少しずつ楽になる環境作りを目指して、精力的に活動している。

◆子ども食堂に行ってみたいのですが、対象は子どもだけなんですか?

 誰が対象、という決まりはありません。どなたにでも来てもらいたいです。
 なないろ食堂には、いつも色々な方が来てくださいます。親子で来る方もいれば、お子さんだけで安心して利用してもらえるようにもなっているし、大人だけで来る方もいます。以前親子で来てくれたお母さんがこんなことを話してくれました。「主人の帰りが遅くていつも子どもと2人で夕食を食べているんですけど、まだ小さいのでなかなか食べてくれないこともあって、それが毎日続くとイライラしちゃうし気が詰まっちゃう。そういう時にここに来ると普段食べられないようなものも食べてくれたんです。また、何回も来ていると、同じようなお母さんたちと顔見知りになって、一緒のテーブルで食べたり相談し合えたりして助かります。」他にもいろいろな方の話を聞く中で、熊谷にも色々なことで困っている人がいるんだ、と思うようになりました。例えば、共働きが増えている中で学童や保育園に遅くまでお子さんを預けている方。仕事が終わって6時とか6時半にお迎えに行って、それから買い物をしてご飯を作るのって、しんどいですよね。でも、迎えに行った時点で子どもはもうお腹がすいている。だから、コンビニ弁当や菓子パンで済ませちゃう。それが続くと、親として罪悪感を持ってしまうかもしれません。でも、うちに来て野菜がいっぱい入っている料理を食べさせられれば、「自分で作れないけど、まあいいかな。」という気持ちになれるんじゃないかなと思います。出来合いのものと同じ金額でいろんな種類の料理が食べられる、そういうのが時々あるとお母さん方も助かると思うんですよね。仕事で疲れている時、一日中子育てをして気づいたら夕方になってしまった時、シングルの方が病気になってしまった時、経済的に余裕が無い時、みんながそれぞれにそれぞれの困難を抱えています。
 だから、だれにでも来てもらいたい。ちょっとの手助けでみんなが楽になる、そんな場所であれたらいいなと思います。


◆普通の飲食店に比べて料金がとても安いのですが、どのように運営しているのですか?

 調理や準備を行うスタッフは、ほとんどがボランティア(無償)でお手伝いをしてくれています。調理は主婦の方が多いのですが、大体14時くらいに集まってその日のメニューを調理していきます。高校生や大学生も得意なことを生かして参加してくれます。例えば、1人で食事をしている子どもに寄り添って、一緒に食べながら話を聞いてくれたり、食べ終わった子どもと一緒に遊んだり、手話教室を開いてくれたりもしています。
 食材もたくさんの方が寄付をしてくださっています。市内外のスーパーマーケットや農家さん、家庭菜園をしている方、本屋さんやパチンコ店さんなどから、お野菜やお菓子、絵本などたくさんのものをいただいています。
さらに、応援してくださっている企業さんからの寄付金や助成金にも助けられています。
 たくさんの方々がそれぞれ自分のできる方法で、得意なことを生かしてボランティアをする、それがなないろ食堂なんです。

◆週3日の営業を毎週、ボランティアのスタッフで続けるのはとても大変だと思います。なぜ、それほどボランティアでの運営ができるのですか。

 無理をしないでやりたいことをやって、それが自分の為にも相手の為にもなっている、みんながやりがいや役割を感じる関係を築けているからだと思います。
 例えば、私たちはいつも食材を寄付してくださるお店の方々にとても助けられています。食材の寄付があるからこそ、安い料金で料理を提供できる。一方でお店の方の話を聞くと「まだ食べられるけどお客さんには出せない食材を捨ててしまっていいのか。」ということが社内で問題になっていたそうなんです。そんな食材を寄付していただければ、食料廃棄の課題も解決できるし、それが社会貢献にもつながる。結果として、お店側にもプラスになったんだそうです。まさにお互いのためになる関係ができているなあと思います。
 ボランティアの方々も同じだと思います。学生さんには、せっかく来てくれたんだから、こちらから指示を出すのではなく、自分たちのやりたいことをやりたいようにやって欲しい。子どもと遊ぶのが好きなら、思いっきり子どもと遊んでもらう。手話サークルの学生には、手話教室をやってもらう。イベントの運営がしたいなら、ハロウィンや夏祭りで活躍してもらう。学生さんに遊んでもらえる子どもたちは楽しいし、学生さんにとっても好きなことができる成長の場であってもらえたら嬉しいです。
 このように寄付をしてくださる方々、ボランティアの皆さん、関わってくれる人全員のためになる、みんなが嬉しい関係性をこれからも作っていきたいです。

◆最後になりますが、かりんの読者の皆さんに、メッセージをお願いします。

 子ども食堂というとハードルが高くなりがちですが、皆さんに気軽に利用してほしいです。
 なないろ食堂には、色々な人が集まってきます。食事をしに来る人は、親子で来る人もいれば、お子さんを預けていく人もいる。発達の支援が必要なお子さんもいれば、大人だけで利用する人もいる。車いすで食べに来る人もいます。ボランティアの方も多様です。学生や主婦、男性が調理をするときもあるし、聴覚障害の方が筆談でボランティアに参加することもあります。でも、誰かが困っていると、必ずほかのだれかが助けてくれるんです。
 だからハードルを上げないで。ちょっとした手助けでみんなが楽になる。食事でも、ボランティアでも、何でもいいです。なないろ食堂にぜひ遊びに来てみてください。

※現在はコロナウイルスの影響でテイクアウトでのお食事提供になっています。
(2020年4月12日現在)

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