国試・CBT対策医師国家試験予備校まとめ
1.概論
医師国家試験・CBTに向けて予備校の映像講義を受けようとしている人も多いと思います。しかし、大学受験の時とは異なり塾の存在感もいまいち薄いし通うわけでもなく映像だと向こうの顔が見えなくて不安...という人も多いと思います。結論的にどこの予備校を受けてもきちんとやれば受かるものではあるので(全国平均をキープするのが大事)、”自分にあった”ものを選ぶのが大事です。予備校のスタイルを大きく病態生理重視派・まとまり重視派に分けてみましたので参考にしてください。各予備校を大学受験での立ち位置に換算して書いているので、そこも役に立てていただければと思います。
2.1.病態整理重視派
「この疾患の検査所見はこうなります〜」という教え方よりも、なぜこうなるのか、なぜこの薬を使う/使わないのかなどを含めて根本から教えようというスタイル。赤シートで暗記をしようと思わなくても、理解できていれば疾患の概念と所見は考えて言えるようになるというコンセプト。医学を勉強していて暗記することが附に落ちずに頭に入らず悩んでいる人、既にQ-Assistのようなものを終わらせた人向け。ここの3つの予備校はどれも板書形式なので、医学部のパワーポイントのスライドを秒で飛ばしていく講義の速さが無理な人はこれらが向いている。
2.1.1 TECOM ★★☆☆☆
【歴史】
一番古いはず。教授クラスの優秀な先生を多く擁していることを特徴に人気の大手塾。ここを抜けて新たに塾を作る人もいる。もともと、板書してノートを取る方式だったが、最近に講義を短縮してテキストに書き込む場所を設ける形式にしたところ誤植・内容希薄化が多発して人が一気に他社へ流れた。m3.comと提携。
【大学受験塾に換算すると…】河合塾
超大手で全国に展開している河合塾。しかし、年々新興の塾の台頭に打ち勝つ良さを見せられていない。老舗ではあり有名な先生はいるが、優秀な層からの鉄緑やグノーブルへの支持遥かに下回る。老舗なのにちょっと微妙な存在、そんなポジション。
【懸念点】
実績も講師のレベルも十分ではあるが、先に述べたように講義スタイルの変更が不評なために多くの学生がmedu4などに流れてしまっている。他に比べて優位性を打ち出せていないのが難点。
2.1.2 MEC ★★★★☆
【歴史】
1982年開校、TECOMに並ぶ大手。medu4の先生、Q-AssistのDr.清澤もここで教えていた。落ち目気味なTECOMとは対照的に、直前講習でもバンバン当ててくる安定したクオリティで絶大な人気。先生もその分野の専門の先生が入っていてクオリティは高い。MEC模試の質が良いことでも評判である。国試合格に難を抱える私大では学校単位でMECにお願いしているところもあるのだとか。ちなみに、最初はTECOMから抜け出したDr.塩沢(元・慶應解剖学)が設立したようで、彼は内科学書(中山書店)の監修もしているくらいに有名、今は教えていない。
【大学受験塾に換算すると…】駿台
理系の駿台と言われるように、ここ出身の人も多いだろう。そんな感じで、シェアは高く人気の講師も多い大手であるが現役コースはやはり鉄録やグノーブルに生徒を取られる。そんな感じで最大公約数みたいなポジション。
【講義内容】
特にDr.孝志郎、渡が人気なようで板書でイラストを描いて頭で理解できるように、そして覚えられる程度にポイントを絞って授業は組み立てられている。大手なだけあってカリキュラムも良い。紙テキストがメインなのでタブレット勉強が苦手な人は是非。漫画ネタが出てくる様なので漫画好きの方も是非。
往々にしてマイナーの評判は悪い。ただ、最大のシェアを誇っているだけあって内科・病態生理・直前講座の分かりやすさで人気。テキストは書き込みやすく、シンプルな作りになっているので調べた内容を書き込む勉強スタイルがいい人は向いているかも(PDFもあります)。 TECOM, MACに比べれば量は少ない。6年で一気に講座を見て終わらせたい人にも向いている。Dr.孝志郎は医学生の頃からハリソン内科学を読み込むほど勉強家であり、臨床経験も十分なので信頼に値するはずですし皆さんも満足するかと!
【価格】
大学プランで10万円ほど。
【こんな人に向いている】
CBT終わって全て頭から抜け落ちたので「これ常識でしょ?」とか言わないで一から教えて欲しい人、これやれば大丈夫、みんなやっている!というのが欲しい人、板書してもらって手を動かして勉強したい人、丸暗記する前にきちんと理解してから進めたい人
2.1.3 MAC ★★★★☆
【歴史】
かつては関東圏の学生を全員直前講習に集めるくらい人気だったが、対面をメインとしていた分、オンライン講義が主流の昨今ではマイナー。初期研修医のマッチング試験の作成、医師向けの講座、MR向けの教育など薄く広くやっている。日経メディカルと提携。地方医大の国家試験の成績を全国上位に引き上げたり、新設医大のカリキュラムを作成したりして、ほのかに一部で有名。
【大学受験塾に換算すると…】Z会
講師の質もよく、書籍も人気で通信教育のクオリティも高いZ会。しかし、そのクオリティに反して圧倒的に大学受験界ではマイナーな塾、受講生は隠れキリシタン、そんな感じのポジション。
【講師】
Dr.東田:iMedicineの著者、金沢医大教授、慶應卒。在学中にUSMLE取得、Mayor clinicでも研修。丸暗記は不要で、病態整理・総論を抑えれば良いというスタンス。症候学が好きな人には向いているかも。ちなみに分かりやすさでは一番かと思う。
Dr.中山:病態整理できったの著者(監修は別の人)、慶應次席卒業。本を書いているだけあって分かりやすさは段違い。話すのは遅い。
Dr.倉田:東京医大准教授(病理)、循環器を主に講義する。
【講義内容】
高校の講義のような空気感でたまにタメになる話も入る。上の2つと同様、黒板を用いて行うのでペースは速くない。暗記するよりきちんと考えればわかるはずというスタンス。Meditunesという月額制のサービス(1480円)に「項目別解説講義+過去問映像解説」があるので、既に大方勉強し終えてあとは過去問で大丈夫な人にはこれだけで十分と思われる。内科・マイナー科を取りたい人はこれに加えて取る感じ。
【価格・懸念点】
ここの予備校の懸念は全てにおいて値段が高め(10~20万円程)&画質が良くない(来年から良くなるそう)ことに尽きる。あと、知名度低すぎ。Q-Assistやmedu4が商売上手なのに対してこれら3つの昔からある予備校はビジネスが下手なのだろうか、そして繰り返し4K画質のこの時代にしては画質は悪い。
【こんな人に向いている】
他社より数万円高くても値段はしょうがないと思える人、医学部に入ってから覚えることが多すぎてうまく知識が整理できないと悩んでいる人、少数派でも屈しないメンタルのある人、USMLE(病態大事なので)に繋がる国試対策をしたい人、医師になってからも役立つ勉強をしたい人。
2.2.まとまり重視派
病態より、解法重視派。だからといってわかりにくい訳ではなく、最短で合格を目指しに行くスタイル。病気の解説から問題演習までをコンパクトにまとめている分、記憶の定着が早い。既にCBT向けに視聴した人もいるかもしれない。
もう勉強は自分でみっちりしたから後はまとめて欲しい人or最短で合格したい人向け。レジュメを電子黒板に写して、もしくは講師がiPadに書き込んでやっていくので授業スピードはわりかし速い。既に大方は頭に入っていてまとめて欲しい人、もしくは時間がない人には向いている。
2.2.1 Q-Assist ★★☆☆☆
【歴史】
もともとMedic Mediaで働いていたDr.清澤とTECOMにいたDr.盛永で立ち上げた新しい予備校。流石のメディックメディアの資本力で一気に台頭、他よりも圧倒的に値段が安い。世間の医学部では低学年で取る層が多いとのこと。ただ、まだ新しいせいか講師の問題か大学お抱えで出講するほどではない。有名ツイッタラーのDr.さとみなが最近追加。最近、浪人生向けに対面の講義も始めた。
【大学受験塾に換算すると…】東進
映像講義で一気に生徒数を増やし合格者数も増やした東進。その急成長っぷりと他の塾と掛け持ちでやっている人の多さがまさに東進。別に特進コースとかはないが…
【講師】
Dr.盛永:九州大卒、総合診療科。フェラーリを乗り回すことでも有名。端正な顔立ちで女子人気がずば抜けて高い。(他の予備校の講師はほぼオジサマ)現役で医者をやっている分、問題のアプローチ方法が端的でわかりやすい。講義はちょっとバラバラな印象。
Dr.清澤:大阪医科大学卒。喋りのうまさが人気、CBTで彼の講義を取った人も多いだろう。講義にミスがちょくちょく多く、編集が入る。暗記よりも理解して覚えようというスタンス。授業はめちゃくちゃ上手い…
【講義内容】
講師が現役の臨床医であることがウリである、実際に面白い話も多い。同じまとまり重視系のmedu4に比べると問題の解説はかなり良い。ただ、medu4に比べるとレジュメだけはかなり改善の余地あり、見にくい。暗記用のサブプリントも結構なミスが目立つ。ビデオが疾患ごとに別れているのでいちいち再生し直すのが手間と感じる人もいるだろう。ただ、聞いてて頭に入りやすいテンポの良い講義なのでQB解いてて忘れていた疾患のみを見る感じでも良いかもしれない。個人的にはmedu4と足して2で割ればいいのにと思う。病気が見えるやQB, year noteと連携が良いので、調べ物とかは楽。個人的には、連携しすぎて情報過多に陥りそうではあるが…
【価格】
病気が見える、year note, Question Bankで荒稼ぎしているメディックメディアだけあって安い。初年度3万円、継続で1万円。公衆衛生だけは別料金だが破格の安さである。
【こんな人に向いている】
部活など課外活動に時間を割きたい人、値段を抑えたい人、足りない部分は自分で病みえとか読んで埋められる人、要点だけまとめてもらいたいという人。
2.2.2 medu4 ★★★★☆
【歴史】
MECから独立したDr.穂澄が設立。当時は珍しかったiPadを用いたデジタルに強い講義スタイルが受けて人気に。他の塾が「THE 臨床」っぽく教えてくるのに対して大学受験に近い、キーワードを抑えてシステマティックに解いていく教え方がわかりやすいと人気。他の医師も昔は居たが、今は彼一人。オンラインだけでやっている。MECやTECOMが合わない子が取ることでも有名。
【大学受験塾に換算すると…】スタディサプリ
オンラインのみであるものの解説の端的さと手軽さ、勉強のしやすさで最近人気である。特に、時間のない医学生にとっては簡潔に・復習しやすいというコンセプトが人気。
【講師】
Dr.穂積:東大卒、医師経験は無いようでコンサル出身?授業の喋りそのものは医学って感じではないがレジュメが他の予備校に比べて圧倒的に良い。何ならレジュメだけ販売して欲しい。イメージとしてはめちゃくちゃ優秀な6年生に教えてもらう感じ。とにかくレジュメが良い。
【講義内容】
キーワードをきちんと押さえて解いていく形式。実際に見てみればわかるがすらすら解けるようになるし、レジュメはそのまま暗記帳として使えるし有能。iPadとApple pencilが必須な講義スタイル。国試も医者が作っているので医療現場の常識みたいなのが出題されるが、そういうのに弱い時がたまにあり、そういった分野の解説はかなり弱い印象。そこさえ除けば優秀なレジュメをきちんと暗記すればおおよそできるようになる。内科・マイナー科といったもの以外に特定の分野を取り上げた講義もあるので勉強しやすい(塾の夏期講習みたいなもの)。データ駆動型講義のようなイメージ。
【価格】
全部購入してやっと10万円程。他の予備校と大きく差はない。
【こんな人に向いている】
iPad勉強に慣れている人、確認テスト・系統講義・補修講座などあらゆる面で強化して欲しい人、隙間時間でうまく暗記して問題も解いていきたい人向け。これ一個やれば良いっていうものが欲しい人。