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やまとばしを渡りながら作った、ちっぽけな恋のショートショートショート。

君の街と、僕の街をわけているのは、この坂の上に流れている、一本の川だ。

僕はいつでも朝寝坊で、働き者の君とは、生活のリズムがまるで違う。

でも、深夜1時をまわった頃に、僕が部屋で待っていると、君は大概1時半頃に帰って来る。

君は、僕と一緒に食べる晩ご飯を、大慌てで作り、トン、トン、トンと、軽快な音を残しながら、いくつかの小鉢を丸い机に置いて行く。

晩ご飯を食べ終わったら、君が歯を磨き、テレビを見ながら、今日来たスナックのお客さんのことなんかを実に楽しそうに喋る。

僕が相槌を打っていると、そのうちに君は眠くなり、あらかじめひいておいた布団に潜り込みながら、

じゃあね、またあしたも来てよね、きっとね。

と、精一杯甘い声を出す。

そして、君が眠ったあと、僕は食卓に並んだ器を、流しで洗い、順に立て掛けて、君の部屋を出る。

だいぶと、あったかくなったけど、春先の深夜3時はまだ寒い。

マスクで曇った眼鏡を気にも留めず、坂を登り、やまとばしを渡る。

向こう岸で、2本並んだ高いビルの屋上の、ヘリポートの赤い点滅を見ながら、川を渡る。

今日も紀州街道を歩いて帰ろう。

そう呟いた僕の声は、一つの咳に掻き消された。

『やまとばしを渡りながら作った、ちっぽけな恋のショートショートショート』

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