「2番線、中野行き、発車します。」

今、大学に通っている人にお尋ねしたいことがある。
まず、この状況を想像してほしい。

それほど出席が厳しくない授業に向かっている道中、電車が遅延した。

いつ運転が再開するかはわからない。その電車を降りて、乗り換えを駆使すれば、問題なく授業に間に合いそうだ。

この時、あなたは乗り換えるだろうか。それとも、その電車に乗ったまま、運転再開を気長に待つだろうか。



____
○「私なら乗り換える」と思ったあなたは、面倒臭さよりも効率を優先して行動できるため、どんな場所でも頼られる存在になれるし、健康に長生きできるだろう(知らんけど)

○「わたしゃは気長に待つタイプ」と思ったあなたは、私と気が合いそうだ。こういうタイプは、鉛のように重たくなったお尻でわざわざ乗り換えるくらいなら、遅刻した方が膝にもいいのではと持論を展開する。

当然私は「気長に待つ」を選択した。

乗り換えを選択するプレイヤーたちが続々と降りていく中、必死のアナウンスが車内に響いた。


「秋葉原駅で、運転手の体調不良のため、ぇ!っ、只今電車を停止させています、、、運転再開の目途は立っていません、、
大変申し訳ございません」



運転手の身体が、ただただ心配になった。
無事を祈りつつ、課題をやって運転再開を待つことにした。

乗りプー(略)たちが、だいぶ降りて行った頃、再びアナウンスが聞こえた。


「交代乗務員が今、向かっているとのことです!!状況がわかり次第、おつとぁえしていきます!!」



JRに関わる全ての人たちの、燃えたぎる魂をひしひしと感じた。


「交代乗務員、タクシーで向かっています!」

「交代乗務員、中央線快速に今乗ったとの報告が入っています!」

「交代乗務員、今御茶ノ水です!
あと一駅、まもなく到着します!!」


この時、駅伝や運動会のような実況アナウンスにより、車内に残っていた人たちの脳内には、連絡が入った瞬間、急いで家を飛び出し、使命を背負いながら汗だくで走る車掌服を着た交代乗務員の姿が映されていただろう。


私は課題そっちのけで、会ったことも話したこともない交代乗務員を全力で応援していた。


数分後ついに、
「秋葉原駅のホーム、今着きました!」

というアナウンスが入り、私は感動のあまり「おお!」と声が出そうになったが、慌てて抑えた。

周りを見ると、

私と同様「おお!」と出そうになった声を咄嗟に抑えた人や、
間に合わず漏れ出ちゃった人、
瞬間的に手をぱちぱちしようとして慌てておろしたっぽい人

がいた。

ここにいるすべての人が一つになった瞬間に立ち会えたこと、JRで働く方々のプロ意識の高さに、強く胸を打たれた。


「2番線、中野行き、発車します。」
これほどまでに、心を打たれた発車アナウンスはいまだなかった。


遅刻は極力避けたいとは思うが、こういった偶然の出会いを期待し、今日も私は遅刻してしまうのだ。


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