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Poem 333

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ブログ・電子書籍・コンクール入選・・・既発詩から厳選して採取採集。
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#入選

永劫回帰命題

振り返る べき時じゃない時に振り返り ああでもない こうでもない 結論なき迷路へと進んで迷い込む 何もかもが 芳しい手招きで誘っている 目移りさせていては消失の一途だよ 何を犠牲にして 何を無駄にして ここまで来たのかなんて考えても それらしい答えなど それらしい応えなど 永劫回帰を思わせるしぶとさで 命題は巡り巡って さっき昇ったばかりの陽を落としていく その横顔だけで満たされたなら こんなに悩まずに済んだのかもしれない 時間軸に犯されてしまった 「孤独」とはもう呼

若者時代世代

肯定も否定もされず 曖昧な「いいと思うよ」で ぬるま湯の中 認められも許されもしないまま 漂い続けている たぶんこれからもそんな予感 時代 といってしまえばそれまでだが 世代 といってしまえばそれまでだが 少子化や晩婚化を背景に 草食と肉食に振り分けられてしまいがちでも その本質で蠢いている雑食精神 内向きやら受け身やらなんやらと レッテルを貼られがちな氷河期にあっても その深淵には燃え滾る暖炉がある 悲観しようと思えば いくらでも悲観できてしまう 絶望しようと思えば

シャッターだけが降り注いでいた

ひまわりを背に 端正な顔立ちがしっとりと崩れてゆく シャッターの音が シャッターの音だけが あたり一面に 静かに 降り注いでゆく 火曜の午後 思いつくまま講義をすっぽかし キミを連れてやって来た 壮大なひまわり畑 夏はまだまだこれからと 自分で自分に言い聞かせたくて 雑誌カメラマンを真似て その儚さを 永遠にしようと想った 振り切るように 思い出すように ふいに走り出すなめらかな被写体 その姿を追ううちに 撮ることが どんどんカタルシスに どこに行くかさえ聞かず 黙っ

知らずに済んだフクシマ

ミリシーベルト、ミリシーベルト、ミリシ・・・ 一生、知るはずのなかった言葉 ベクレル、ベクレル、ベクレル、ベクレル・・・ 一生、知らずに済んだはずの言葉 一大キャンペーンのように バラ撒かれた バラ撒かれた 津々浦々にバラ撒かれた 無知は黙認に等しく 無関心と何ら変わりないこと 痛切に実感した 福島がフクシマになってしまってようやく 数値に求められ 毒気を抜かれたリスクとコスト 一つの天秤に乗せられ 維持を前提とし 見え透いた古典原能を誇大踏襲 「今、福島原発はどうなっ

君がいなきゃ

君がいなきゃ                            醤油さしがどこにあるかわからない 君がいなきゃ                            大好物の中トロもさほどおいしくない 君がいなきゃ                            窓の花もそんなに綺麗と思えない 君がいなきゃ                            チャンネルの取り合いもできない 君がいなきゃ