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Poem 333

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ブログ・電子書籍・コンクール入選・・・既発詩から厳選して採取採集。
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#文芸

良い詩を書かなくていい、書けなくてもいい。

良い詩を書かなくていい 良い詩を書けなくてもいい できれば 良い詩の方がいいのはもちろんだが 結果的に 良い詩にならなくてもいい その時 書きたいと思った詩を 書いた方がいいと想った詩を 書けばいいだけ ふらっと書いてもいい しっかりと書いてもいい 結果的に 書いた詩が良い詩ならラッキー くらいの感覚でいい 良い詩を書こうとしなくていい 良い詩を書けなくてもいい 書きたいと思った詩を 書いた方がいいと想った詩を 形にできたら 放つことができたら 届けることができ

333万篇から3篇への旅路

333万篇を書き 33万篇を考え 3万篇を磨き 3千篇を解き 3百篇を放ち 30篇を届け 3篇が響く。 これでいい。 これくらいでいい。 これを出来たら良い。 ------------------------------------------------------------------------------ 【 初出 】 詩のブログ 橙に包まれた浅い青 2021年10月14日 「 333万篇から3篇への旅路 」 「 以上、全文を無料公開済です。   以下、

¥333

永劫回帰命題

振り返る べき時じゃない時に振り返り ああでもない こうでもない 結論なき迷路へと進んで迷い込む 何もかもが 芳しい手招きで誘っている 目移りさせていては消失の一途だよ 何を犠牲にして 何を無駄にして ここまで来たのかなんて考えても それらしい答えなど それらしい応えなど 永劫回帰を思わせるしぶとさで 命題は巡り巡って さっき昇ったばかりの陽を落としていく その横顔だけで満たされたなら こんなに悩まずに済んだのかもしれない 時間軸に犯されてしまった 「孤独」とはもう呼

深紅のトースター

何をやってるんだ 何がしたいんだ 続く晦渋の自問自答が虚空に響く 嘘で塗り固めた経歴は 当人でさえもいつからか どこからどこまでが嘘なのか 真実と見分けがつかなくなってしまった 身勝手な原罪意識がもたげ 相槌を打つことさえ 打算に過ぎないのではと躊躇わせる 白銀の摩天楼 焦がれた思春期の残像 齧り倒した喪失の初春の名残 狂おしい濃度で畳み掛けるすべては 走馬灯のようにもったいぶった加速度で あらゆる神経を瓦解させ 深海へと不埒に寄せては返していく 五感が不感症を患って久

透明な黄金色の額縁

ニット帽の幼女 白髪交じりの老女 スクロールする駐車場で 台本でもあるかのように立ち止まる 言語なき会話 紡がれる身振り手振りの無重力 窓越しに観察する月曜日のわたし 縁取る午前の陽光 遮り始めた厚い灰色の雲 促されるようにして 幼女の母はマフラー片手にやって来る 水たまりもないアスファルトにも関わらず 陽光はプリズムと見紛うばかりの細やかさで 透明な黄金色の額縁そのものとなり その三人を静かに縁取っていく 世界は わたしが想うほど 素晴らしいものではないのだと 世界

シャッターだけが降り注いでいた

ひまわりを背に 端正な顔立ちがしっとりと崩れてゆく シャッターの音が シャッターの音だけが あたり一面に 静かに 降り注いでゆく 火曜の午後 思いつくまま講義をすっぽかし キミを連れてやって来た 壮大なひまわり畑 夏はまだまだこれからと 自分で自分に言い聞かせたくて 雑誌カメラマンを真似て その儚さを 永遠にしようと想った 振り切るように 思い出すように ふいに走り出すなめらかな被写体 その姿を追ううちに 撮ることが どんどんカタルシスに どこに行くかさえ聞かず 黙っ

執筆欲

書きたいことはない と思う時でも 書いた方がいい事は 書かなければならない事は いくらでも溢れてるもので 書きたいことがない時も 書いた方がいい事は そこら辺で待ってくれてて 書きたいことがない時も 書かなければならない事は そこら中で舞ってくれてて 書いた方がいい事を書いているうちに 書かなければならない事を書いていれば どこからか書きたいことが どこまでも書きたいことが 溢れてくるもので 暴れてくるもので 結局は 書きたいに 返りまして 結局は 書きたいへ お帰り

点あふれ 天ありふれ あまねく愛と哀

大・長・多は 開放と回帰を実現する。 意図としても 印象としても 両極ではあるが 構造や物語が強くなるか 多様や分散が濃くなる。 視線の獲得か 刺激の喪失かの差しか底にはなく 点もあふれ 天もありふれ あまねく愛は朝のように洗われる。 小・短・少は 凝縮と放射を実現する。 意図としても 印象としても 両極ではあるが 断定や画一が強くなるか 推量や曖昧が濃くなる。 単純な闘争か 短絡な逃走の差しか底にはなく 点もあふれ 天もありふれ あまねく哀は雨のように愛される。

野心のエロス 欲心のタナトス 腐心のエートス ~ エロスパンデミックダンス / タナトスギミックコスモス / エートスサイケデリックカオス ~

エロスパンデミックダンス パンデミックダンスエロス ダンスエロスパンデミック 罪悪までも  消化しきれる 芸術進行 誰も彼も 消したくなる 白昼であっても 白昼であっても 点火できる想像力あふれる 溢れ出す言葉 星座のように 繋げばたちまちポエトリー いくらでも 心は気ままに 描ける欠ける駆ける それでも いつまでも 体は気紛れに賭けれず いまでも 1つに生れぬこと 痛切に分かち合う初動の熱 艶めいたぬくもりに晒され いまだに 1つも成れぬこと 切実に分かち合う初

帰れない帰りたい

「帰りたい。  もう一度帰りたい」 顔を合わせるたび 口に出る台詞 帰れない 当分、帰れない 下手すれば 一生、帰れない わかっているから なんとなくでもわかっているから 口にせずにはいられない 「帰りたい」とくり返さずにはいられない 幼くても 周りの大人やら テレビのニュースやら 学校での噂やらなんやらから 敏感に 嗅ぎ取っているのだろう どれだけ除いても どれだけ洗っても あの頃の風景は帰ってこないと あの頃の世界にはもう帰れないと 自然と 口癖になったのではな

土曜日の虹

梅雨を経て 伸びに伸びきった芝生 さすがにそろそろ刈らなければと 精を出した 真夏手前の土曜日 芝刈り機を 買うほどでもないスペースに身を屈め 剪定バサミで チョキチョキ、こつこつと芝を整えていく とことん綺麗にしても すぐにボウボウと元通りになる季節 あまり神経質になりすぎず 大まかに芝の高さを揃えていく 休憩を挟まず 一時間くらいかかって まあまあの見栄えが完成 汗や風とともに 散髪に行った後のような爽快感が流れる 剪定バサミを片づけ ほうきで刈った芝を集め 可燃

小金色の大海

笑顔とセットで カンパ~イ くたびれた喉に 小金色の大海が沁み渡る 都会のど真ん中 無味乾燥なオフィスを抜け出し しわくちゃな今日にお疲れ様 まっしろな明日に景気づけ、景気づけ もくもくと 煙までおいしいバーベキュー キラキラと 照明までおいしい色んな屋台 くたびれ加減は様々でも ほろ酔いがすべてを受け止め 屋上からの夜景が主役たちを引き立てる 何もかも 忘れるわけにはいかない 何もかも 忘れられるほど甘くはない 上司、部下、同僚 肩書きまで  キレイさっぱり 脱

北東の水族館

「キレイ」 そう指差す先にあるものを 同じように キレイと思えなくなって久しい 自分で精一杯 半径1メートルの事さえボンヤリ そんな時にも 作為のない共感で 「ほんとキレイだね」と 相槌を打っていた自分がちょっと懐かしい 帰りの地下鉄で 僕らの前に座っていた五十過ぎの男性 両手に荷物をもったおばあさんが来るなり さっと立ち上がって 無言の右手で席に座るよう促し 隣の車両へ歩いていった あんな風に 器用に スマートに これから僕は キミのために 誰かのために 何かを 真っ

パラノイア・セッション

ずっと 近づけば近づくほど 絡まって 離れれば離れるほど 解けてゆく そう、信じていた それが突然、真逆へと雪崩れこむ 近づけば近づくほど 解けて 離れれば離れるほど 絡まってゆく 深い窓を見つめながら ネオンの背中を撫で 懐かしい あたらしい 自分と出逢い 細い夜を越えながら 涅槃の吐息を重ね 知らなかった 知っていた あなたと出逢う 幸せとは何かと 考えられる幸せに包まれたまま この時の代償を 今日も世界のどこかで 誰かが 何かが 被っていること 忘れそうになる