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僕には友達がいた、それは擦り切れるくらい前に

 本当に大事な友達はひとりでいい。
 ひとりでいいけど、多分失っているのは全部悪いから。怖いから音楽が聴けない。正体をなくすくらい酔わないと聴けない。怖いから、自分が失ったものを知ることも、たぶんあの人が結婚していることを知ることも。
 シュレディンガーの猫、ってすぐに言っちゃう いや、可哀想すぎるけど。そうしたらずっと何を見たって思い出す人のことを 偶然駅で会いたくなくなった瞬間がない人のことを ピアノの鍵盤みたいに弾いて。

 大音量で聴くとあんまり良くないな音楽って 私だけに囁いているわけじゃないから、? 炎上したnoteに有識者みたいな口聞くやつが友達じゃなくてよかった よかったなあーだって、今はいなくたって昔はいたし、気にしないスキルなんてあったらもっと真っ当に生きている 繊細ぶったやつが嫌いって呟きたかったな あー、

 それで石風呂さんの曲に目を瞑れなくなって、ティーンエイジャー益々遠くなって 眩しくて思わず画面を閉じた そういうのを吐くだけでダサい的な同窓会の知らせすら受け取れない 『いじめられていたわけでもないのにね?』 それって最低だよって誰でもいいから言ってほしかった ちゃんと恨めるから別れるとかっていいよな 同じ熱量を正しくないのに感じているからきっと捕まるかもしれない
ずっとそう思ってたけど燃料が切れて使い回しの音楽みたいになって、それで春が来て 他人の嘘を聞いても息苦しくなくなった  忘れてしまうのもさみしいです本当は

 高校生のとき歌が下手だって友達が言った 今ならなんか分かるかも べつにお世辞じゃなかったよ、みんなに可愛いって言ったこと 

 夜中はどうでもいい会話が蘇って(人間あるある)昔ほど嫌いじゃなくなっちゃったのは残念だけど、忘れたわけじゃないから別にいいかな、いいよね。だって
 成人式の日に書いたメモは携帯ぶっ壊れたから読めないけど、覚えてるよ 例えばその質感を忘れてしまって二度と書き起こせなくなってしまったとしても、この先きっと二人で乗った観覧車のことを忘れたとしても、その記憶がたとえばもしも嘘だったとしても、彼女がベビーカーを引く 身汚く金を借りに来る(だれでもいい相手として) 同じように 狂いなく 過去の私と同様に彼女の目を見ることができる きっとそれだけで価値があると思う 私はそう信じている

 CMの度に顔が浮かぶなんて心情は陳腐な恋愛ドラマみたい/加害はひとつもされていないから君との過去に悪い人はいない/顔が似ているというだけで好きになれない女優がいる(演技がすごくうまいけど、自分で似てるって言ってたから)/安静に検索をしないで安寧な生活を得る/引き換えのカーディガンは白/加速度的に嫌いになりたくて日記を書く/贅沢な友達がいた。僕には忘れてしまうくらい前に。


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