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緑の妖精

アブサンという、ちょっとマイナーなお酒があります。その昔製造販売を禁止されたこともある少々イワク付きの強いお酒で、成分に中毒性があると言われていましたが、今ではガイドラインに沿っていれば問題ないとされ普通に売られるようになりました。

ハーブを浸漬するため緑色になっていることがあり、そのためか「緑の妖精」という異名を持っています。爆発するような特徴的な香りがあり、愛好者は愛してやまないのですが、その高いアルコール度数もあいまって、正直敷居が低いお酒ではありません。

この素晴らしいお酒の啓蒙を、狛江の地に!と、お店を開いた当初は息巻いていました。珍しいものも海外から数本取り寄せ、場合によってはフライト(複数の違ったお酒を少量ずつお試し頂くプログラム)などを提供しても面白いかな?と考えていましたが、まぁ当然なかなかオーダーは入りませんでした。

バーで提供する際はもっぱら多いのはアブサンコーク。コーラに少しアブサンを浮かべますが、独特の香りとコーラの甘みがよく合います。飲み方をご存知な方は水や甘みを足したりして楽しみます。加水すると精油分が白濁して来て、その様は光にかざすととても幻想的で美しいものです。

また、実はアブサンはコーヒーやミルク系の飲み物と相性がよく、ミルクコーヒーに少し浮かべたりすると砂糖を入れてないのに甘みを感じたりします。これはアニスが使われていることから来ていますが、クッキーにほんの少し垂らして香りをつけたりしても美味しいです。

スリムで気に入っていたのはアブサンチャイ。たっぷりのスパイスと茶葉でバッチリ甘めに決まったチャイに、アブサンを垂らします。色々な香りが体の中で幻想的に爆発する、記憶に残る一杯です。

個人的にはストレートを舐めるようにゆっくり楽しむのが一番好きなのですが、ゴッホや太宰も愛したお酒ですので、過度に魅入られ過ぎない程度のほどほどにしておこうと思います。

もしどこかで、この妖精と出会う機会があれば、ぜひ。

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