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Video Camera for Live Streaming

まえおき

インターネットにおける個人の発信は、ホームページ作成から始まり、SNS (Myspace/Facebook/Mixi/Gree など) やブログへと続き、今はYouTubeを代表とする動画プラットフォームへと移行してきた。動画は今のところ "録画-編集-アップロード" が主流で、日本においてはテロップを多用した動画の人気が高い。テレビのバラエティ番組や漫画という文化が下地になっていることも影響していると思われる。
米国の動画は「俺の喋りを聞いてくれ」というスタンドアップコメディがベースとなっていると思われ、過度なテロップを見ることは少ない。代わりに Transcript (字幕) がしっかりしている。これは古くからテレビでも必ず Accessibility に配慮するべく(州によっては法律もあったような気がする)字幕が付いている番組となっていることが起因しているのだろう。
最近の Transcript は、音声認識技術の向上によりコンピューターで自動で行われることも多くなっている。英語はほぼ完璧にスペリングしてくれるが、残念ながら日本語の精度は、まだまだ全体的に高くない。ただ、日本語で字幕が自動につくようになっても、日本のテロップ文化は消滅しないだろう。文字を視覚的に見せることに長けているのが日本人だからだ。

さて、Live Streaming においては、凝ったテロップを臨機応変に付け加えていくことは簡単ではない。代わりに生放送ならではの臨場感を伝えたり、あるいはチャットなどを通じて視聴者との双方向のコミュニケーションを行うこととなる。放送形態はスタジオタイプとなる。つまりは、外部環境に依存しない、室内で動きが少ない方法を選択する。不意に入り込む意図しない人物や、その発言、騒音などは放送事故の原因になってしまう。
Live Streaming においてゲーム実況が人気なのは、放送する側としては内容を確定しやすいという理由が大きい。ゲーム画面は一定のクオリティを出し続けてくれる。プレイヤーの顔を映していなくても動画として成立するし、プレイヤーの顔を出したとしてもワイプサイズでメインにならないから、撮影される側の負担も少ない。代わりに個性的な話術が要求されるかもしれない。あるいはゲーム上での超絶技巧。

カメラの選択

まえおきが長くなったが、本稿においては Live Streaming におけるビデオカメラの選択について検討したい。

Smartphone
最近のスマホは性能が良い。もしスマホから配信でき、それで満足できるのであれば、それで良い。
スマホのみ配信の場合の幾つかのデメリットについては考えておいた方がよい。

 1. 音質までは良いとは限らない
 2. 意図した映像になるテクニックが必要
 3. 性能が良くなったとはいえ、辺縁の歪みは発生する
 4. 熱暴走に耐えられるか?
 5. テロップなどを柔軟に入れられない
 6. シーン切り替えができない
 7. 撮影中にスマホを使わなくても良いか(サブ機であればOKだろう)

PC In-Camera
PC の全面・背面に小さなカメラがついていることもある。カメラの性能的にはスマホより劣るかもしれないが、機材を追加しなくても良い。
デメリットは以下。

 1. PC の In-Mic は性能が悪い。ヘッドセットと併用が良いだろう
 2. PC の置き場所=撮影場所となることに注意
 3. 顔だけであれば十分なカメラ性能だろう

Web Camera
USB で接続する小さな Web Camera のこと。1000円台から4000円ぐらいで、マイクロフォンも一体となったそこそこ良いものを購入できる。設置場所も柔軟だ。画質の事を気にしなければ、たぶん一つだけデメリットがある。

 1. 熱暴走に弱い

経験上、4時間ぐらい使うと認識しなくなり、冷却が必要になります。機種にもよります。

ビデオカメラ(ホーム用)
いわゆるハンディカムなどと呼ばれる家庭用のビデオカメラ。これも安いものからセミプロレベルのものまで多く発売されている。4K 対応も安くなってきており、誰でも高画質で撮影できるようになった。使い方さえ熟知できれば、これで十分だろう。デメリットというか陥りがちなのが以下の1つ。

 1. Auto 設定が便利だが、マニュアル撮影がしにくい機種だと場合によっては使わないほうが良い

補足の説明をすると、ホームビデオは誰でも簡単に扱えるように Auto モードにおける機能が充実しており、故に、意図しないまま露出を上げてくれたり(明るく映るようにするため)するので、雰囲気のある映像を撮るために設定を変えたり、その操作に苦労したり、シャッタースピードの変化によりフリッカーが出たり、と急に困ってしまうことがある。

一眼レフカメラ
日本が誇る一眼レフカメラ群は本当に性能が良い。私は Canon 派だが、Nikon, Panasonic, Sony, Olympus など、日本製の一眼レフは映像も綺麗だし、フォーカスもばっちりである。注意しなければならないのは、クリーン HDMI 出力してくれるか(最近の機種はほぼ大丈夫)ということと、動画録画は最長時間(関税対策のため連続撮影は30分ほど)が決まっているので注意しなければならない、ということの2つである。加えて、HDMI 出力された信号を PC に取り込むための HDMIキャプチャを用意しなければならない。USB では映像のやり取りはできない。 デメリットは1つ。

 1. 電池だけでは持たないので、別途、ACアダプタが必要

ビデオカメラ(業務用)
業務用でもお金を出せば誰でも購入できる。余裕がある人は業務用を買うこともあるだろう。でも、ホームカメラのフラッグシップモデルを買った方が良いかもしれない。なぜ、業務用が必要となるかというと、ホームビデオよりも、もっと高画質を撮りたい(簡単に言うと業務用はセンサーが大きいので綺麗な映像が取れる)、映画館でも耐えうる 6K の映像を撮ってみたい、本格的なコンデンサマイクを外付けで使いたい、などだろう。人ぞれぞれ、やりたいことや目的があるから、欲しければ買えばいい。HDMI 出力ではなく、SDI 端子だけのこともあるから注意しなければならないが、SDI-HDMI 変換もできる。全てお金で解決できる。

 1. コストパフォーマンスを忘れがち。ビデオカメラ沼に落ちるな。

シネマカメラ
更にフォーカスの推移やボケの具合も追及したいという方にはシネマカメラという選択もある。これもお金さえ出せば誰でも購入可能だ。シネマカメラ用のシネマレンズは50万円以上するものが多いが、海外の YouTuber で使っているのを見たことがある。こうなるとカメラ自体の性能というより、レンズを楽しむための筐体という考え方になるのかもしれない。

 1. まずは DSLR (一眼レフ) 用のレンズと互換がある方が良い。でなければ、シネマカメラ本体よりレンズの方が高額になる。

NG のことが多いアクションカム
Go Pro に代表されるアクションカムだが、撮影と同時に HDMI 出力が可能かどうかを確かめてから購入しよう。Go Pro もどきの安いアクションカメラは、同時出力できないものが多い。撮影と出力を同時にこなすには、それなりの性能とパワーが必要であり、超小型カメラでは難しいことが多いからである。

 1. HDMI 出力端子の有無、同時出力の可否を確認せよ

Live Streaming において、何にこだわるか、あるいはこだわらないか

こだわるポイントがあるのか無いのか。
・画質
・音質
・配信画面上のテロップ
・シーン切り替えの有無
・同時録画するかどうか

それぞれのポイントで追い求めれば、どこまでも上がある。もちろん、それには相応のお金が必要となる。もちろん、機材を使いこなすテクニックも必要だ。だったら、いっそのこと撮影・配信をプロに依頼することも考えた方が良い。環境の整ったスタジオで専門のカメラマンやエンジニアが全て対応くれ、演者はコンテンツの内容だけに注力すればよい。
いやいや、自分で配信したいという意欲がある方は、まずは

「一眼レフカメラ + 外部マイク + HDMI キャプチャー + 配信ソフト」

という組み合わせをおススメしたい。一眼レフカメラは標準セット (50mmレンズ) であっても、結構、良い感じの映像が撮れる。特にスマホなどでは表現できない Depth を作り出せる。Depth は日本語だと遠近感ということになるが、つまりは手前にピントがあって、後ろにいくにしたがってボケていくという F値の勉強をするときにでてくるアレである。一眼レフカメラを動画撮影にも使いたいのであれば、短尺ならカメラ本体のみで、長尺であれば Blackmagic Video Assist などの外部録画装置の併用が必要である。
これら、もろもろ、PC + 20万円ほどで良い映像の配信(録画)が可能だ。個人の趣味だとしても、そんなに悪くない投資だろう。

私は Web Cameraから始まり一眼レフを経て、今は中古のシネマカメラを使っている。
単に使ってみたいという好奇心と、加えて、Single Shooter (ワンオペ) ではスチール撮影が同時にできないのでビデオの静止画でも写真レベルになっていると助かる、という2つの理由でこうなってしまった。最近は音声の追求のためフィールドレコーダーも導入してしまった。
相応の消費をしているが、門外の方には機材の相場価格も知らないだろうし、それぞれの機器を使いこなすための努力は分からないだろう。買うだけでクリアできるレベルはアマ初段クラスであり、アマ三段ぐらいのレベルになるには使いこなせなければならない。プロダクションは苦労が絶えないのである。

差別化が難しい動画コンテンツにおいて、これからは Streaming (生放送) がもっと増えていくことだろう。安価で使える機材も増えてきており参入も難しくなくなった。テレビ/テレビ局でしかできないと思われていたことが、個人の趣味レベルでもできてしまう時代。もっともっと楽しもう。

(@totheworld)

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