RISKY(リスキー) ~anotherstory~
「彼女と会ったら、海外出向の話をしよう
待っていて欲しいと。
なんなら、一緒に行ったっていい」
冬枯れの街を、ひなたの元へと急ぐ亨。
待ち合わせ場所についた途端、ビルの明かりが消え、再び一斉に灯る。
雪が舞う中、向こうから季節外れの格好をして歩いてくる女性。
「えっ…」
見覚えのあるワンピース、それは亨がかつて婚約者のかなたにプレゼントしたものだった。
「ひな…た…」
微笑むひなたの影にかなたが重なる。
全てを悟る亨。それでも、
「海外出向の話があって行こうと思っている」
「全部知ってるわ。失態も引き抜きも出向も。でもまさか海外出向を選ぶなんてね」
「まさか全部君が…」
その時亨の携帯がなる
「出たら」
「もしもし。えっ…」
「どうしたの?部長さんなんじゃない?大変な事になったわね」
狙い通りとほくそ笑むひなた。しかし、それにしては亨の様子がおかしすぎる。
「い………!!」
目を見開いてひなた、いや、ひなたのいる方を見つめる亨。その時
「お待たせ、亨。着替えてきたわよ」
「お姉ちゃん…」
光の道から現れたのはかなた。
それも、ひなたと同じ、かつて亨がプレゼントしたワンピースを着て。
「ひなた、紹介するね!私の婚約者の亨」
「…」
「亨、長い間ごめんね。さあ、一緒に会いに行こう」
「どこへ…?」
「私たちの赤ちゃんのいる所よ」
隠れて様子を見守っていた洸太も堪らず飛び出してくる。
「かな姉、どういう事だよ!」
「誰があなた達に復讐して欲しいなんて頼んだ?勝手な事しないで」
険のある目つきで突き刺すように言い放つかなた。
「自分達の罪は自分の手で償うわ」
そう言って手を振り上げるかなた。その手にはキラリと光るナイフ。
「亨さん!!」
「かなた…ごめん…幸せにしてあげられなくて…ひなたも…一緒に、みんなで幸せになりたかった…」
舞い散る雪の中に、ゆっくり崩れ落ちる亨。
薄れゆくひなたの顔。
かわりに浮かぶのはかなたの優しい笑顔。
その暖かい手に引かれて、2人で輝く海の中へ…優しい「生」の中へ…
「あぁ、あったかい…」