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ある日突然、愛してやまないローリーがガチ噛みしてきた #2 当座の対処と衝撃の原因判明。

ガン見のゴシキが怖い

ゴシキのご飯は、いつもは昼にフードを追加するために朝は少なめに給餌していたのだが、この日は最悪の場合、終日ケージを開けなくても済むよう、朝の一回で一日量のフードを補充した。
昼に他のインコたちはニンジン・キュウリ・リンゴなどの副食を追加していてゴシキも食べないなりに仲間外れにしないよう、お愛想程度に入れていたが、この日はさすがにスルー。
ゴシキは、時折ご飯を食べる以外は、私が仕事をしている間も、他のインコに副食をあげている間も、こちらが見る限りずっと一番手前の止まり木からひたすら飼い主を凝視していた。見たら目が合う。ガン見の域である。ずーーっと見てる。めっちゃ怖い。こっち見てないで飯を食え飯。

解決の糸口が全く見えない状態で、唯一の救いはこの日を乗り切れば週末で丸2日間対応ができることだ。時間があるだけではない、噛まれてもその顔をWeb会議で晒すことがないという理由である。

折れた心に響く先人の知恵と経験

とりあえず初期段階で一番つらかったのは、痛みを付与されると人間のメンタルとはこうも弱るものかという気持ちだった。
きっと悪気があるわけではない、昨日まであんなにお利口さんにしていた頭の良いカワイイ子なのだ、憎くもない。
それでも立て続けに痛みを与えられるのは、本当につらかった。

ぐちゃぐちゃになった思考回路の中で脳裏に思い浮かぶのは、私がスミインコを迎える前の情報収集で出会ったバイブル、カタヤマトモコさんの著書「ヘンなインコ」シリーズ。昼休みの合間に本棚を置いている部屋から引っ張り出してきた。
登場鳥物のアニキこと「トリーロさん」も謎のガチ噛み癖があり、飼い主のカタヤマさんは、長袖革手袋マスク靴下にゴーグルと完全装備でアニキの過激な放鳥タイムを何年も維持し続けた、飼い主の鑑みたいな方だ。
書籍の中では、アニキたちとの愛に満ち溢れた交流と共に文字通り血と汗と涙にまみれた噛みつき対策の体験がつづられている。
内容は覚えているから情報を取る目的で見直す必要はなかったけれど、つい読み返してしまった。その日の私の心の支えだった。

なお、カタヤマさんが考案された「カタヤマ式住居」は我が家でも複数ケージで採用しており、こちらの素晴らしさはまた別の機会に改めて語りたい。


必須アイテム革手袋!

で。
夕方、仕事を終えてまずアカエリをもう一度出してみようとトライした。もちろん今度は素手ではない。複合素材の荷運びなど軽作業に使う手袋を着用した。無論、この程度ではローリーの嘴が貫通するのは想定済みだが、多少でも軽減されればという雑な考えである。アウトドアの焚き火用革手袋もあるのだが、手先が不自由になるし旅の途中で片方なくしてしまって左手分しかないのだ。

残念ながらさして役に立たなかったやつ

そういえば、スミインコの時もコムラサキインコの時も革手袋買おうかな~選ばなきゃ安いよな~と検討したものの、結局買わなかったことを漠然と思い出した。彼らも痛かったが、何しろ噛むのが一瞬なのだ。一瞬のために手先が不自由になるデメリットの方が大きく感じたのと、愛鳥の対応に革手袋、これは果たしてインコ側にとってはどうなのだろうと漠然とした疑問を持ったことも合わせて思い返していた。この罪悪感的な心証については、後日また改めて触れることにする。

さて、万が一にも先ほどは何か悪いものに取り憑かれていただけで、ケロッとした顔で出てきてくれればと思ったのだが、まったくそんなことはなく、やはり一瞬と刹那の間ぐらいで飛び掛かってきた。速い。コムラサキもスミも速かったが、ゴシキの柔軟かつムキムキ筋肉から予想していた通り速い。
改めて襲い掛かられてわかる。やはりこれは革手袋でなくてはならない。片方でもないよりまし!あのがっつり硬く分厚い革でなければ!そのまま部屋から逃げ出して取りに行く飼い主であった。

ソッコーで動員された焚き火手袋(左)と後日購入した作業用革手袋(右)

ガチ噛みで表現される思いの丈

腹くくってしっかり遊ぼうと思ったが、明らかに相手も空腹だし飼い主もだし、ご飯もたくさん残ってるじゃん、と帰宅してもらおうとしたら、ケージ入り口で薄い方の黒手袋だった右手人差し指の第3関節をガチ噛み。
もう今日はこのまま帰ってもらおうごめんねと思い、体をケージの中に入れて嘴を外そうとしたら外れない。嘴の両端を抑えたら普通外れるのだけど外れない。大抵それで一度外してもう一度噛みつこうとしたりするものなのに、ゴシキは絶対絶対外さない勢いで噛みつき続けていた。時間にしておそらく30秒超噛まれっぱなし。さすがにこれは初めての経験。

インコが噛むのは、何か意思を伝えるためだ。嫌だ止めて嬉しい大好き色々あるのだけど、たまにタヒねばいいのにみたいなのもコムラサキに喉笛ガブられて感じたこともあるが、とにかく人間を食べるためではなく、何かの気持ちの表れだ。
ダラダラ血を流しながら何とか剥がしつつも、すっごいすっごい嫌なの、一人にしないで飼い主と一緒にいたいのという意思がそこにあるように感じた。

大丈夫だよ、ここはあなたのおうちだよ。美味しいご飯があってゆっくり寝られるところで、飼い主とはいつでも遊べるんだよと伝えなおさなくてはならない。

そして、この飼い主が感じた切なさは、後日思いっ切りハズレだったことが判明する。

そして衝撃の原因判明

今回のゴシキの豹変に際して取った対策や、ゴシキその他の鳥たちの変化などの詳細は今後述べていくとして、先回りして「結局なんだったの」という疑問については、2日後の日曜日、突如原因が判明した。

インコ飼い、特に中型インコ、さらにローリーを飼育している飼い主の方は薄々お気づきではと思う。

左手にアウトドア手袋、右手に追加購入した作業用革手袋をはめて飛び掛かってくるゴシキをわちゃわちゃしていたら、時折「ポヨ!ポヨヨ!」など声をあげていることに気が付いた。
ゴシキは温かい水溶きネクターが大好きで、空腹のときに温かい水溶きを食べるとほぼ必ず「ポイヨ!」と喜びのコメントが出る。「ポヨ」は「ポイヨ」の早口で「ポヨヨ」はさらにエスカレーションしてるということだ。
しかもガブリングの恐怖に慄きつつ、そっと耳をそばだてると息が荒い。めちゃめちゃ荒い。(*´Д`)ハァハァ言ってる。何だその全力で走って来たワンコみたいな息遣い。

革手袋に噛みついて楽しい嬉しい、つまり飼い主が憎くてやってるわけではなく、飼い主が好きなのか革手袋が好きなのかはともかく、スキンシップしながら興奮している。
あっと思ってよく見ると、もっそもっそ噛み噛みポヨポヨと共に尾羽ががっちり内側に向いている。つまり交尾をするときのオスの態勢だ(メスはしゃちほこになる)。

これかーー!

目が変だしワキワキだし下半身内巻きだし

鳥友さんたちから頂いたアドバイスと自分なりの推察をまとめると、

数か月前に我が家のメンバーになったゴシキ、不慣れな場所かつ先達がわらわらいたことで、遠慮していた・様子をうかがっていた

ここはどこ、ご飯いっぱいもらえた、何かオラオラさんたちがいる

飼い主やさしい、ご飯おいしい、いいのかな、ここにいていいのかな?
あの赤いお姉さん会うたび殴りかかってくる

ここ楽しい!飼い主だいすきぃぃぃぃ!もう止められないこの気持ちぃぃぃ!(爆発)

ということらしい。
ヤリたかっただけかよ。
返せあの時の切なさ。
うちに来た時に推定生後6か月以下と先生の見立てを頂いてたので飼い主油断しちゃったよ。初めて会った時はまだ嘴黒かったのに。早熟だな君。

つまり気持ちのぶつけ方がわからなくて、全力で飼い主に飛び掛かってしまったゴシキ。
普段でも感情瞬間湯沸かし器でがぶっちゃうローリー。それがもう気持ちが高まって辛抱たまらんとなったまま発散できず、気持ちのぶつけ方がわからず、噛む以外思いつかなくて気持ちを止められないまま噛みつき続けたゴシキ。
女子に噛みつきながら迫っても逆効果なんちゃうの?どうなのローリー女子よ。

ありえへんわ

間違いの分岐点は最初だった

私が理解していなかったのは、出会ったばかりのインコは、頭のいい子ほどちゃんと相手や環境の様子をうかがっているということだ。先住のパワーバランスや人間の自分に対する取り扱いなどをずっと見ていたのだ。迎えて2~3日で「この子はとてもいい子、うちに馴染むだろう、先住と仲良くなれるだろう」というのは、正直浅はかだった。コロッと騙された系飼い主である。

もっとも個体の頭の良さがあれば、好き嫌いの変化はともかく、うまくやっていくことができそうかは、初見でもある程度予想してよいのかもしれない。
そういう意味では、ゴシキは最初から抜群に利発でそれゆえ猫かぶりであったけれど、爆発した後の認識の変化もスムーズに進んだように思う。

あっという間に「革手袋には飛び掛かっていい」と認識したゴシキは、水回りやケージ周辺など特定条件を除いて革手袋をしていない飼い主の生の手には飛び掛からなくなった。うちの子あったまイイ(コロッと騙されている)。

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