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インコのいるマンション大規模修繕工事 #1 始まるまでが長かった。

自分のマンションにも、とうとうその時がやってきた。
本来であればもう少し早く検討され実施されるはずだったが、ステークホルダー間の信頼関係とかそもそも住民たちのマンション管理への関心の低さとか、住民の大半が穏やかで使用における傷みが少なかったとか、まあ要するに今年こそやるぞ!と言い出す人がいなくて、当初予定より数年遅れで実施の運びとなった。
十数年に一度のことであり、せっかくなのでインコ飼いの体験を記録しておこうと思う。

そもそも、私は大規模修繕どころか、マンション管理、はてはご近所づきあいに至るまで全く関心がなかった。何しろ昔は仕事や人生の都合で10年で10回引っ越したことがある。ご近所どころかチャンネルの1を押したらNHKなのかフジテレビなのかぐらいはわかっても、それ以外のチャンネルはさっぱり、そもそもテレビのアンテナ設定すらせずに生活していた時期もあったので、ご近所などお付き合いどころか顔を見ることなくやってきて去っていく方がむしろ普通だった。

ところがさすがに定住っぽい仕事になると、家賃を払うのがもったいないという理由でマンションを買い、買った以上はせめて自分の資産がどんな感じかは理解しておこうと、うっかりマンションの総会に顔を出したら総会に出てくる人数すらびっくりするほど少なくて、結果的に管理組合の主要メンバーに納まってずいぶんになる。これまでに自分が出した唯一にして最大の成果は、ADSL配線だった宅内回線を在宅勤務の他住民と結託して光配線へ変更したことぐらい。名実ともに光回線になり、大規模修繕を迎える年齢になったマンションの資産価値を上げられる数少ない機会を得た。

ところで大規模修繕工事とは、一言で言うとエクステリアの更新である。
雨風に晒され傷んだタイル、塗装、床、目地や防水など、家の外部分を一斉にきれいにする工事だ。
なぜ外側の工事だけ大規模でやるのか、一言で言うと足場を組むからである。壁タイルは傷んだところだけ交換するが、傷みを確認するにも足場がいる。足場を組むには1階住居の庭など足元の荷物が片づけられねばならず、覆いによる生活環境の悪化に耐え忍ばねばならない。とにかく足場にかかる時間・費用・住民の負担が大きいので、まとめてやってしまおうというのが大規模修繕工事である。

私は大規模修繕工事に全く関心がなかったが、工事の規模には危機感があった。工事費用は住民がコツコツ積み立ててきた修繕金で賄われる。けっこうな金額だ。それがうちみたいな理事メンバーにも困るほど関心のないマンションで実施となると、待っているのは相見積もりなし、管理会社の工事部一択による業者万歳ぼったくり工事に決まっている。何しろ相手はこっちの予算上限を承知しているのだ。上限いっぱい目指してくるし実際来た。雑な見積もりで数百万変わってくる。冗談じゃない。自分の金となると途端にちゃんとやってもらわねばとなるのが人情だ。
そして金の話に噛むのは、早ければ早い方がイニシアティブが取れるのも経験上理解していた。

そしてもう一つ、関心があったのはインコたちの安全だ。
大規模修繕には必ず塗装が発生する。めったな事故はないと思われるが、事前に十分な情報を確認して工事期間中も安心して暮らしたい。あと万が一何かあったら(鳥の命に代えられるものはないけれど)十分な説明をしてくれる会社である必要があった。

かくして、工事に全然興味のなかった私は、それまで年に一度担当が代わり前任者が次々と退社していき、数年前の何かの修繕費用がずっと未払いになったまま放置されるような信頼関係がなかった管理会社に、おかしな案件は都度きちんと確認を求め始めた。併せて他の住民と話して、管理会社以外の大規模修繕工事の相見積もりや管理会社変更の選択肢も集めはじめ、結果的に管理会社および工事部と住民の信頼関係はそれなりに構築され、見積も手を挙げてくれた技術のある複数の住民によって適切に精査され、一番のご意見番的な住民から「もういい加減に早くやりたい」という押しもあって、めでたく工事の契約書にハンコがどつかれた。

早速だが、実はここまでにコントロール可能なインコの安全と健康を保つ判断が一つ確実に入っている。
それは実施時期だ。
大規模修繕工事は、複数のマンションの工事を効率よく進めるために、通常春もしくは秋と期間を区切って行われる。春は早ければ4月上旬、秋なら9月上旬開始となる。
うちのマンションの住民は今回春開始を選んだ。私も迷ったが、工程表まで見せてもらって一番怖い塗装の時期に空気を遮断するために窓を閉め切っても、逆に換気のために開け放っても、エアコンが付けられなくても、インコに影響が少ないと考えたのは春の方だった。

時期をコントロールできたのは、工事の検討に紆余曲折あったので、もう絶対希望に合わせますと受注先のエライ人が確約してくれたのと、自分が早期から検討メンバーに入っていて様々な情報を入手検討できる立場にあったからだった。

結果的にさしたることはないのだろうけれど、安心して鳥と暮らしながら工事を迎えるために、通常1年ぐらい前から始まる工事関連の集まりには顔を出しておいた方が良いと思う。意見を言ったり質問する機会もあるので工事に納得もいくだろうし安心にもつながる。
工事が始まる時には文字通り全て決定済みなのである。


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