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フロ庭通信!No.6

通しや衣装合わせの日取りも迫り、稽古場はどんどんヒートアップ。
衣裳揃ったっけ?とか小道具は?とか考えたり、手に汗握りながら稽古に見とれたり、そんなこんなで容赦無く時間が過ぎていきます!

さて、第6回はスズハラ役石原正一さん!

撮影:村上信六(三等フランソワーズ)

石原正一[いしはらしょういち]
京都市出身 平成元年より演劇界に身を置き幾多の物語を旅し続けている 漫画朗読やラジオパーソナリティも経験 石原正一ショーとして年末恒例顔見世プロデュース公演を製作したのも懐かしい記憶 


— 上演までおよそひと月。いかがでしょう。
ああ。とうとう、ひと月切りましたね。チラシの写真撮影がお盆だったから、あの時から、ね。下半期の終わりの芝居やと思ってたから。なんかあっちゅうまでしたね。でもここ、一週間くらいで、毎日顔合わせて、場を当たって行く稽古になって、やからやっと始まって来たなあって。やっぱこう、本稽古始まる前に、みっちーさん(ノグチ先生役・向田倫子さん)に体操教えてもらったり、親睦も深まって。この人こういう人やなみたいな人となりもわかって、座組みのチーム感もいい感じ。なかなか、いい状態で一ヶ月前に来てるんじゃないかなと。

— 正一さんは、自分で公演をプロデュースしたりもしてたそうで。
そうなんですよ。もう、なのちゃんとか知らない世代ですよね。たぶんなのちゃんがお芝居志したときには、僕はもうだいぶゆっくりしだした頃なんで(笑い)この5、6年で。色々やってきましたんでね。今回の会場のアイホールも。思い入れのある劇場なんで。
— (稽古)初めの時言ってはりましたよね。「自分はアイホールの男だ」って。
僕が初めて、小劇場演劇を見たのが、伊丹のアイホールのこけら落としで。1988年の、まだ昭和ですよ。ギリ。昭和63年のクリスマスに、伊丹のアイホールで、劇団そとばこまちの生瀬勝久さんが、槍魔栗三助という芸名で、座長に就任された初公演を、最前の、ど真ん中で、体育すわりで見て。2時間、演劇を浴びて、演劇の虜になってしまって。あれが、18で、それで今まで。醒めやらなかったですね(笑い)で、19で(劇団)そとばこまちのオーディション受けて入って、アイホールで公演されるたびに、いい役ほしい!言うて頑張ったりして。劇団やめてからも、アイホールでやるお芝居に、ちょいちょい出さしてもらったり。思い入れのある劇場。もちろん、見に行くこともいっぱいありましたしね。

— そんな正一さんですけど、みんなの名前をいち早く覚えてはったり。いい座組みの真ん中に正一さんがいるような感じがしてます。
そら、まあ。できるだけ、名前は早く覚えないと。やっぱり、一つのみんなでゴールに向かうわけですから。メンバーのこともわかってないと、ね。
髙橋さんとも、去年『落選の神様』出してもらったり、2年前も大竹野正典さん脚本でも高橋さん演出の3人芝居に出してもらったり。ていうご縁もあって、今やってるんですけど。高橋さんと、お芝居を作る空間も、すごい、居心地がよくて。うん。

このお芝居も、再演じゃないですか。僕、初演も観てて。もう18年前?で、やっぱ、観た記憶、あったし、クリスマスごろの話だったなあって。あんときはあんときの、物語の中のキャスティングで。けどちょうど18年経って、今回のみんなと、声合わせて、僕らは僕らの、スズハラであったり、看護学生の皆さん、になっていくんだろうなって。もう、ゼロから、組み上げて行く感じで。

— スズハラについて
スズハラは、役どころ的に看護に携わる方の人間じゃなくて。その施設の、社会の中の、出入りする、業者っていう。ちょっと一歩引いた関係であるっていう登場人物で、そこがまあ、おいしいっちゃおいしいし、目立つっちゃ目立つ。けど、その分ね、看護学校の皆さんの、邪魔にならんように、かつ、まあやっぱ、サーカスでいう、クラウン、じゃないですか。ちょっと道化。だから、そういうポジションは、僕は演劇やってる間、多いし、たぶん、やらんでええ言われてもやって行くし。どんどん稽古で出してってるけど。演出があかんって言われるまでは、やるっていうのを、僕は、ずっとやって来たし、そういう先輩をずっと観て来てるし、そうやって教えられたんで。そういう稽古のアプローチを、稽古場でね、若い人たちに見てってもらえたら。こいつ何しよんねんって。え?こんなんいいの?みたいな。まあ、外さん限りは(笑い)外すときもある、けどそのさじ加減は、稽古でね、確かめていってるわけなんで。そうなんです。そういう時代で育って来た、っていうのは、みんなに引き継げたら。いいかなと、思います。

僕基本、あんまどんなお芝居でも、こいつがこういう成り立ちでみたいな、よくあるじゃないですか。自分に与えられた役の人生ノート書きなさいみたいな。僕そういうの、は、やらないんですけど。僕は正直、めんどくさいなと、思う側なんですよ。要は、物語の中で、出てくる登場人物が、どう奴らで、どういうお話かって、いうのを、お客さんは受け身としてみるわけじゃないですか。まあ、読書にしても映画にしてもだと思うんですけど。お客さんがその登場人物の裏側を考えて行くのは、楽しいと思うんですけど。
僕は、たぶん……やってる側は、どういうやつっていうのを、考えるっていうよりは、そいつがその場におるときに、いろんな選択肢の中でどれを選ぶかかなって。基本、戯曲に描かれてる、お話にブレはないけれど、登場人物のやり方ひとつで話って変わってくると思うんで。悲しい話にもなるし、お祭りみたいにわっと、熱くなることもできるだろうし、まあそれがもちろん演出の方向になって行くんだろうけど。やって行く中でも、こういうアプローチだったらどうだろうとか、例えば毎回叫んで相手に投げていたものを、叫ばずに投げたら相手はどう受け止めてくれるだろうか、とか。逆もまた然り。そういうのは常に考えながら。セリフをキャッチボールする、交わすっていうのが、対話として受け止め合うっていうのが、演劇の、セリフの楽しい吐き方だと思うし、僕はそういう先輩を見て来たんで。うん。だから相手が変えて来たなって思ったら、もしくは相手がどんどん深まって来て、結果変わったら、やっぱそれは受け止めて行かんとあかんと思うし。そういう選択肢のどれをチョイスしていって、ベストを目指すかってところで考えるんで。

とはいいながら、スズハラって茶髪なんかなー、とか。僕今白髪なんで、黒なんかなーとか。タバコやめたんかなーとか、吸ってるときどんくらい吸ってたんかなーとか。で、配送業者なんで、どんなクルマなんかなーとか。は、考えますよ。
結果、舞台上に嘘がないというか、舞台上で行われることが全てじゃないですか。お芝居って。まあ、なんのスポーツでもですけど、結果が全てなんで。その上で、立ってる人たちのドラマを感じながら見るのが、より熱くなるんだろうけど。そのドラマをね。僕たちのちょっとした一言とか、ちょっとしたネタ振りで、積み上げていって、それが重なったときに、どうドラマが展開するかっていうのは、やっぱり見もの、演劇の醍醐味だと思う。ま、そのあたりは、高橋さんがしっかり、描かれてると思うんで。あとは、その素敵なパズルを、どうみんなで組み立てていくか、ですね。

— 公演の見どころは?
ずばり、このキャストの皆さんの、共演だと思うんですよ。やっぱり、それぞれの組み合わせっていうのは、ここでしかきっとないものが多いだろうし。10代、20代、30代、40代、50代、結構、すごいグラデーションの俳優が揃ってますから。高橋さんの劇作の中で生かされてるっていうのはあるんですけど、僕はやはり、やっぱり演劇というかライブというか、台の上で生で行われる芝居では、そこに立ってる人間を見たいので。アーティストというか、スターというか。その人が見たくて、見に行くんで。あの人いいな、って思いたいし、思ってもらえるために立ちたいから。そういう人たちが、このオーディションを勝ち抜いて、高橋さんの旗のもとに、自分の見せ場を輝かせて、この演劇界を灯そうぜ、みたいなとこじゃないですか。だからやっぱり、そういうキャストの意気込みが一番、出てほしいなあとは思いますね。やっぱこんだけいたら、ライバル心はある意味あると思うんですよ。あいつがこんなんかまして来たから、俺もこんなん頑張ろうぜみたいな。私もこの一言に魂込めて、印象付けて、お客さんの心に残ればっていうのは、たぶんあると思うんですよ。そういう、この役者を通して、出た言葉とか、体の動きとか、そういうものが、ものすごくいっぱい印象に残って、やっぱ関西の芝居面白いなあとか、関西の役者いいやつ多いなって、思わせたい。ていうのが、いちばん。こういう、キャスティングに外部の人が多い作品だと、なおさら思いますね。

今年の夏以降、コロナがちょっと落ち着いて来たぞってなってきて、祇園祭だ、天神祭だって、世間もええ加減お祭り戻していこうぜって空気の中で。演劇もやっと、お待たせしましたっていうのがあって。いっぱい(他の芝居を)見してもらって、やっぱ出したいな、世に出たいなって。演劇に身を置く人たちの心意気を、かますというか。そういうのを受け止めて来たこの数ヶ月の観劇だったと思うんで。だから、今回は、よし、今度は僕らの番やと。みなさんお待たせしましたっていうところを、おもいっきり、ぶつけたい。ですね。
お芝居の話でいくと、コロナ渦を受けて、地球上が侵されて、病気との戦いで、過ごして来たって一方で、18年前の医療に携わる人間たちの苦悩だったり、希望だったり、ていうところをもっかいフィードバックさせて、コロナ渦の医療従事者様って、ほんとに頭の下がる献身的なお仕事をされてるんで。そういうところをリンクさせて。やはり、ね、ああ生かされてる、というか。
僕も足怪我して、病院行ったりしてるんで、リハビリの先生たちとか、患者さんたちもいっぱい見て来たんで、なりたいと思って病気になるわけじゃないし、もちろん直す側の先生だったり、看護師さんたちは、まあ、本当にお忙しくて、で、それでも笑顔浮かべてきちっと対応していただいてる。ほんとにすごいお仕事を、毎日何気なく、されてて。そういうみなさんの裏側を、お話の中で見せたい。高橋さんは取材をされてて、ルポルタージュのところもあるんで。医療従事者の皆さんの大変さっていうのも、お客さんに改めて伝えられる機会になるだろうし。今回、僕が足を見ていただいた外科の先生も、見に行きますよって。お忙しい中、来てくれはるんで。だから、そういう医療従事者の方が、僕らの芝居を見て、看護の力になろうと思わはったときのことを思い出したりとかね。そんないい機会にもなるかなあと思いますね。

— 作品への意気込み
こんなコロナ渦でね。第八波とか言ってるけど…いつどうなるかわからんけど…あと数年はこんな感じで、エンターテイメント、芸術を、作って行かないといけないでしょうから。なんとかね。お客さんの前にきちっと、お届けしてね。やっぱり初演の記憶もうっすら残るくらいですし、これが初めてみるお芝居の観劇の人とかもいるかもしれないですから、そういう人には、きっと、演劇の凄さがぐっと残るはずなんで。そういうものに、作りたいなあと思います。
あと……僕らがやって来たお芝居の作り方を、なんか少しでも、若いキャストの皆さんに残ってくれたら、ええなと思います

正一さんありがとうございました!

文:足達菜野
撮影:山下真実

『フローレンスの庭』
2022/12/16(金)~18(日)
* 16(金):19:00-
* 17(土):13:00- / 18:00-
* 18(日):13:00- / 17 : 00-←new!
※受付は開演の60分前、開場は開演の30分前
会場:アイホール
 特設ページ↓ ご予約はこちらから!
https://kokuuryodan.jimdosite.com

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