見出し画像

新規就農を目指す方へ―失敗しない就農のために

割引あり


新規就農とはどのような職業選択か


 「農業に就く」。
 言葉にすると僅かな文字数ですが、一口に農業といってもその中には多種多様な業態が含まれます。
 お米を育てる稲作はもちろんのこと、野菜を育てることも牛や豚を育て ることもすべて農業に含まれています。
 そうした意味において農業は実に多様性に富んだ世界ではありますが、職業としては一つ共通していることがあります。
 それは就農者が事業主であることです。
 事業主と言われてもピンとこないかもしれませんが、簡単に言えば小さな会社の社長さんのよ うな存在です。カフェでアルバイトをしたり正社員で働いたりといったことを農業で例えれば、ア ルバイトで農作業を手伝ったり農業法人に勤めたりといったことに当てはまります。
 「新規就農をする」ということは例えるなら「自分でカフェを開く」ということと同義というわけです。

新規就農すること自体は難しくない

 就農人口の減少は重大な社会問題であるため、国や地方自治体は門戸を開いて新規就農のハー ドルを下げるようと努力を続けています。
 先程カフェを開くことに例えましたが、実際はカフェを開くよりもずっと簡単に新規就農を行うことができます
 なぜかというと国や地方自治体など、行政の支援が非常に手厚いからです。極 端な話、農業やりたいですと手を上げて役所へ行き、勧められるままに書類を書いてハンコを捺していけば誰でも就農できてしまいます
 就農計画が整えば必要な資金は無利子無担保で借りられてし まいますし、借り入れに際して保証人を立てる必要もない状況です。農業経験も必要ありませ ん。
 全く無い場合は支援する機関を勧められ2年間の研修を補助金付きで受講できてしまいます。

本当に大変なのは就農した後

 新規就農が誰でも比較的簡単にできてしまう一方で、農業経営は他業種と比較して簡単であるということは一切ありません
 会社で言うところの、人事・経理・総務・法務・R&D・営業・システム管理などといった諸業務をすべて自分で行わなければならない場面にしばしば遭遇します。
 そんなの嘘だと思う方もおられるかもしませんが、そんなことはありません。
 自分や家族の労働時間の管理は人事ですし、 必要な資材の予算管理や税務申告は経理になります。
 農作業以外の役所や農協への対応、地域交 流などは総務に該当しますし、農薬の管理や農地に係る法律の勉強や補助事業への申請などは法務でしょう。
 さらに技術向上のための自己研鑽を積むことやその年の気候条件に対応することなどはR&Dの管轄ですし、自分で売り先を探して契約を取ったり個人に販売したりしようとすれば営業となります。
 自身で販売サイトを立ち上げたり業務改善のために仕組みを整えていけばシステ ム管理業務も生じてきます。
 年間を通してどのような作物をどれだけ作って売上がいくらで経費がいくらでと就農計画を立て て新規就農に至ったわけですが、その計画の数字(生産量や販売金額)は生産技術のみならず諸業務をすべて順調にこなせた上で成立しているものであることは少なくありません。
 難しいことのように書きましたが、経験していけば徐々に身につくものなのでそこまで心配する必要はありません。
 ただ多くの人が習得に5~10年程度の年数をかけていることを踏まえると 新規就農者としての期間(5年)の間に目標に到達するにはそれなりの努力が必要となります。

 

事前にしっかりとした準備をお勧めします


 新規就農の開始は準備型の時点から 新規就農においては一旦スタートしてしまえばあとは自動的に色々なことが進んでいってしまいます。
そのスタートの段階は補助事業を受給した段階と捉えておいてください。
 すなわち自分自身が就農する新規就農者になった段階ではなく、準備型の支援を受けた段階から始まるということです。
 準備型の支援を受ける条件に新規就農者になることが入っていますので、準備型を始めたら新規就農しないという選択肢はほぼありません。やめた場合は給付された補助金の返還を求められてしまいます。

 現状の新規就農支援制度の特徴


 新規就農支援の制度は頻繁に仕様が変更になります。
 自治体や成功事例の報告をうけて農水省 がより良い形での支援を目指しているため、毎年のように細かな仕様が変わりますし、数年に一回くらい大きな制度変更が行われてきました。
 現時点では新規就農者のスタートアップ支援が充実しており、新規就農の開始に際して多くの融資や助成を受けることが出来るようになっています。
 より有利なスタートのために、新規就農に関する支援や制度の情報にアンテナを張っておくことがとても大切になります。

 

実際はタイトなタイムスケジュール


 基本的に行政機関とのやり取りは時間がかかります
 担当窓口は各自治体の農政課にあることがほとんどですが、国の事業ですので、市区町村から県、県から農水省と書類がわたって帰ってくるのに半年ほどは時間を要します。
 それに加えて、多くの方が融資を受けることになる政策金融公庫も審査の申請から3ヶ月以上の時間を必要とします。
 借り入れの申請は新規就農の認可が降り てからになるので比較的スムーズに申請が進んでも、申請から借り入れまで9ヶ月ほどの時間を必要とします。 
 書類の不備や修正があれば更に伸びて1年近く係ることも十分に考えられます。
 新規就農者は準備型の2年が終了するまでにそれらの書類や融資決定を終わらせて、農機具や施設設備を揃える必要がありますので、余裕を持つならば準備型の1年目が終わる前に自分自身が書類を揃えて提出する必要が出てきます。
 書類の作成期間を3ヶ月程度とすると、1年目の研修期間が9ヶ月ほど過ぎた段階で実際の就農計画の作成を始める必要が出てきます。

 

助成制度をしっかりと活用できるように


 現状の制度においては、研修を開始してから半年~1年程度で就農開始からの経営計画で必要な機械・施設等の設備投資を明確にしておくことが理想となります。
 そうしないと、実際の就農計画の作成に間に合わなくなってしまいます。
 しかしながら、全く事前の準備がなければこの研修期間の間にそこまで具体的な計画を作成することは非常に困難であると言えます。
 新規就農に際しての初期投資は金額的に少なくありません。
 新規就農を希望される方にとって、可能な限り現行制度を活用することで自身の経営が非常に有利になることは間違いありませ ん。
 ただし、助成があるとはいえ実際に借り入れは発生しますので、不必要なものに対しての投資は少なく抑えるほうが望ましいことも確かです。
 準備型制度の利用が就農のスタートであると捉えましょう。
 その前の段階でも相談可能な機関は多く存在しています。
 しっかりと事前の準備と下調べをし、可能ならば相談できる人を沢山見つけてから納得の行く形で就農に臨んで頂きたいと思います。



以下雑記

 私自身、十分に準備をしてきたつもりでしたが、実際の就農には様々なハードルがありました。
 もちろん「実際にやってみないとわからないもの」というのもたくさんありますが、「事前に知っていれば失敗せずに済んだもの」も数多くありました。
 農業に従事したいと考える人がなるべく失敗しないように、また、自信を持って踏み出して欲しいという願いを込めて筆を執りました。


 ここから先の有料部分には、簡単なお礼が書いてあるだけです。ご購入いただければ今後の記事更新の励みになると思います。気に入っていただけたら是非よろしくお願いします。

ここから先は

236字

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?