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課題曲秘話 『スター』

歌はドラマ

「晩年の大物スター歌手の楽屋をのぞいた時の印象で書いた」と作詞の清志郎さん

「エディット・ピアフが歌うとしたらという思いで作曲した」と作曲の若草 恵さん

大物女性歌手に老いが忍び寄り、声の衰えが隠せないという悲壮感漂うこのドラマ仕立ての作品をどのようにまとめ上げるか・・・ 期待と不安が入り混じったレコーディングであった。

西村さん(編曲家の西村真吾さん)のアレンジは、美しく軽やかなサウンド。アコーディオン、ピアノ、ストリングスとアコースティック楽器を引き立てて、歌を優しくサポートする演出であった。詞に引っ張られて曲全体が暗く重くなってしまうかも知れないという私の心配は杞憂に終わった。

「ケイ(ケイ潤子)さん、いつものように歌っていいからね」という若草 恵さんとの気心の知れたディレクトでレコーディングは始まった。しかし、始めのうちは彼女も少し緊張気味で歌が固い。この詞が持つ独特の雰囲気のせいなのであろうか・・・。

「フランス映画の世界の酒場のワンシーンを思い浮かべながら歌ってみましょう」

「そうですね」

このような会話を何度かやり取りして緊張を解していくと、出だしの「もういいじゃない」の彼女の声にも説得力が増してきた。そして、彼女の力が抜けていくにつれてスタジオの雰囲気にも変化が現れた。目を閉じてじっと聴いていると、まるでフランス映画の酒場のワンシーンのような情景が浮かんできた。

トップスターの凋落する人気と忍び寄る老いとの戦い、悲哀のこもったこのドラマ仕立ての作品を彼女が見事に表現してくれた。

2016年3月7日 タイクーンミュージックスタジオ

スター

作詞:清志郎/作曲:若草 恵/編曲:西村真吾/歌唱:ケイ潤子


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