金色の蝶

課題曲レコーディング秘話 『金色の蝶』

「金色の蝶が飛んだ!」まさにその思いで、鳥肌が立った。

2016年1月26日、13曲の課題曲のレコーディングは原宿のシャングリラスタジオで、この作品を皮切りに始まった。

人の「死」という重いテーマの作品であり、田勢さん(田勢康弘代表)が、「最初はびっくりした、難しくて、不思議な歌だ。誰が歌えるの?」と心配していたことが頭によぎった。

曲の最後の「天(そら)へ飛んでいきます」というフレーズがうまく歌えるのか?いや、花木さち子さんなら絶対に大丈夫!という期待と緊張の空間だった。

高音部がE(ミ)まで、女声としてとても高く、加えて13度という広い音域を駆けのぼっていくというとてつもないメロディを最初のテイクで彼女は無難にこなした。でも、さすがの彼女も少し緊張気味か…。

「花木さん、いーですね!オッケーだけど…、でも、もっともっとパワー出るでしょう。いつものステージのつもりで、楽譜も気にしないでいいから、遠慮しないでのびのび好きに歌ってください。金色の蝶になったつもりで!」

このアーティストは、何度も歌って編集するというタイプではないと思っていたので、2回目がとっても重要。

「わかりました。じゃあ、飛んでみます!」

こんな冗談で、彼女がガラス越しにニコッと笑った。いつものチャーミングなさち子スマイルだった。

そして、2テイク目。

金色の蝶が本当に飛んだ!一瞬本当に鳥肌が立った。

欲張って3テイク目も録った。

でも… 2テイク目の、彼女がガラス越しにニコッと笑った後の歌が最高だった。

後日談であるが、彼女出演のトークで「死はみんなに平等に人生の最後に1回おとずれる、だから全員が歌う資格がある。死ぬことをちゃんと考えないと生きていけない」との思いで歌ったという思いを知った。きっとあの2回目のテイクの時の彼女は、自分が蝶となって舞い、のびやかに天に昇って行ったのであろう。


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