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課題曲秘話 『ワイパーはまだ直さない』

『回転扉』に続いて同じ日に2曲目のレコーディング。

きっと疲れているだろうな…。

「純平さん、このままいけますか?」 と聞くと、

「これもハモっちゃおうかな?」

レコーディングに乗ってきた彼は周囲の心配をよそに全くのマイペース。

そして、また問いかけたり、いろいろと独り言を言ったり、ステージさながらの面白いトークでスタジオのみんなを笑わせる。生まれながらの芸人の血、雰囲気作りの天才だ。

ハモらなくとも彼の声は倍音が豊かなので、もともとハモリメロが入っているのかと錯覚するような声質にはいつもながら舌を巻く。そしてまた聞いてきた。

「ゆうすけさん、ここのメロどう思う?」

「うーーん」 今度は少し悩んだふり…。ちょっと間をおいて、

「純平さん、今のテイクでばっちりだと思いますよ」

「ほんと?じゃあこれでいいか…」  とまた純平スマイル「ニッ!」

「この歌、応募者が歌いこなすことができるかなあ?このボサノバのリズムって結構難しいよね」

スタジオのスタッフの一人がちょっと心配になってつぶやいた。

それでも、純平さんは手加減することなくイメージの通り歌い上げた。そしてカッコいーハモ入れ。

「カラオケにはこのハモ・メロそのまま入れるのかな・・・?」

私は私で違う心配をしながらも心地良いサウンドに一緒に酔いしれた。

作詞の五木寛之先生もびっくりだったろうなというメロディと、小気味良い矢田部さんのボサノバアレンジがあいまってノリがいい楽曲、体も自然と動き出す。

昼間のステージを終えた後のレコーディング、しかも2曲目、それにもかかわらず、ますますドライブがかかってくる純平さんの姿に驚かされるばかり。

数テイクハモった後のトラック再生を聴きながらの和音チェックでは打って変わって真剣な眼差し。

「おかしい、ちょっとやり直しだ!」 と鋭いこだわり。

さすがシンガーソングライター・ディレクターだ!

でも、よくわかりましたよ。

純平さんは歌がとても好きなんだということが。

ワイパーはまだ直さない

作詞:五木寛之/作曲:小田純平/編曲:矢田部 正/歌唱:小田純平


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